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「ただいま」といえる場所は、人生にいくつあってもいい

「おかえり」「ただいま」

各地で、仕事の目的地よりちょっと足を伸ばして寄るまちがあります。そこにある居酒屋で、マスターや常連が笑顔で私に向かって「おっ、おかえり」と言いながら、中ジョッキを掲げます。そしたら、私は「ただいま」と言うんです。そこには、なんとも、くすぐったいような、幸せがあります。

おっ、おかえり〜

私は仕事が全国で、こういう場所がいくつかあります。地域によって違って、商店街、居酒屋、本屋、肉屋、新聞店や洋品店などカタチはさまざまですが、「わざわざ何度も、人に会いに行く」という点は共通しています。

すぐそのまちに移住しようとか、転職・起業しようとかまではいかないのです(将来的にはするかもですが)。生まれ故郷や居住地ではないけれども、「ただいま」と言える場所。それは、第2、第3のふるさとと言えそうです。

それと同じように、「おかえり」と言える人がいるというのも、幸せなことです。私は北海道だと札幌市での仕事が多いのですが、コミュニティといえば隣町・江別市にあるゲストハウスです。

私は最初はただのゲストだったのですが、今は経営メンバーの一人を務めており、県外の者ながら「おかえり」と言ってしまいます。それもまた清々しく、気持ちのよいやりとりです。

旅人と住民、多世代交流の拠点/シェアスペース&ゲストハウス「ゲニウス・ロキが旅をした」

行き先も、帰る場所も見失いやすい時代

いま、将来の行き先が見えづらい時代とよく言われます。気候変動、感染症、AIの進展、そして、戦争。不安を感じて当たり前だと思います。

ただ、行き先もそうなんですが、実は、どこが『帰れる場所』なのかも、わからなくなくなりやすい時代になっている気もするんです。

つい私もなんですけど、毎日スマホとパソコンの中に頭が忙しく出かけてしまって、自分の心や身体に帰ってこないことがあります。目先のことを少しでも早く・多く進めようとすることばかりで。

そのうちに、肝心の『家』つまり、自分がほんとうは大切にしたかった価値観、身体、家庭、コミュニティ、自然や地球、そして、こころのケアがおろそかになったり、むしろ壊してしまうこともあったりします。

別に意識高そうなことを言いたいわけじゃないんです。ただ、それらは、たしかに私たちの人生や生活、その幸せや健やかさを支えている基盤ですよね。

自分のライフスタイルや仕事、まちに言いようのないモヤモヤを感じながらも、それを口にできない。まして、そこから抜けていくような一歩を踏み出すのは難しい。そんな声も聞こえてきます。

そんな中で孤独や不安をひとりで抱えるのではなく、等身大で「おかえり」と「ただいま」と言い合える人間関係、安心して本音を聞き合えるつながり、つまり、「帰ってこれる場所や関係」は、私たちのしあわせや健やかさ、ウェルビーイングのための基盤として、とても大切、というか必要だと感じるのは私だけでしょうか。

でも、「帰ってこれる関係」づくりは簡単じゃない

「ただいま」といえる場所をつくる、「おかえり」と言える人と出会う。そうしたいと思った時に、どうしたらいいでしょうか。

実は、そんなに簡単ではありません。少なくとも私の経験上では、それは一朝一夕でできるものではなく、お金も、時間もかかります

互いの存在を認め、ケアしあえるつながりは、人のことをよく見る、人の話をよく聞く、そういう人と人として関わりを重ねて、ゆっくりと育まれていくものです。

私にとっての「帰ってこれる関係」を思い浮かべると、やはり少なくとも2-3年はかけて育ってきたな、という感じがします。
「ただいま」も「おかえり」とは、利用のしあいではなく互いのしあわせを願う仲間としての関係の中で、つい口をついて出てきてしまうものだと、私は思っています。

たしかに旅館の場合、はじめて行ったところでも「おかえりなさいませ」と言ってもらえるかもしれません。ただ、その人たちと、人生の大切な話を互いに聞き合ったり、学び合える友人になれるかというと、どうか。もちろん一概には言えませんけど、お客さまとして、お金でつながっちゃうとちょっと遠回り感がありますよね。

「そういう人との関わり、できるならしたいけど…毎日忙しくて余裕がない中で、難しいな」そんな声も聞こえてきそうです。

それでも「なにかとっかかりさえあれば、やってみたいかも」。もしあなたがそんなふうに思われたようでしたら、ここから次も読んでください。紹介したいまち・取り組みがあります。

群馬県・富岡市

まずは、まちの紹介から。群馬県西部にある、富岡市(とみおかし)。ゆっくりとした暮らしや自然を感じられる、人口5万人の田舎町です。

妙義山を抱える豊かな自然、のどかな暮らし
わたしは夕焼けの時間の景色が推し。表紙にある「岡重精肉店」

富岡市で今起きていること

いま、このまちには、何度も富岡に通う若者・大人、クリエーターが増えています。そして、こう言うんです。「ただいま」「おかえり」。その中には、市外のみならず、県外の人もいます。その輪には、いわゆる地域のおじさん・おばさん、店主もいますし、移住者や地元大学生もいます。

そのつながりはまだ大きくはありませんが、その中で、これまでになかった動きが始まっています。

たとえば、地域のおじさんが日課にしている散歩に隣町の若者が集まったり、洋品店の店じまいを手伝ったり。新聞屋さんでスパイスカレー作りワークショップをしたり、役所の前の広場でヨガまちあるきをしたり。

拡張家族的な関わり

それに、都市では「写真愛好家」の人が、富岡では「作家」として、カフェの中で作品展示会をやったり。

まちなかのスペースでBBQ
市外の2人が富岡のカフェにて共同で個展

そのことについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ

こうした出会いとつながり、活動の母体となっているのが「パートナーズカレッジ富岡」です。それが今年2023年も、11月にはじまります。

パートナーズカレッジ富岡

沖縄から富岡に関わる方が作ってくれたチラシ

コンセプトは、ひととまちの「しあわせ」を考える、一ヶ月間のオンラインのプチ大学

しあわせは、すこやかと言い換えてもいいかもしれません。より健康なライフスタイルやキャリア、まちの未来をつくりたいと思う人たちが、地域を超えて出会うオンライン連続講座です。

もう少し詳しくいうと、この講座には大きく二つの柱があります。

何を学ぶのか①「ていねいな発展」

みんながハッピーになれるまちの仕組み、ひとの暮らしをデザインしていくための考え方を学ぶ

あなたはこういう経験ってありますか。

違和感があるのにうまく言えない

大切なのはお金だけじゃなくて、…いやお金はもちろん大事だけど、豊かさ、しあわせ、にっこり」。

そういうのってうまく言葉にしづらいじゃないですか。なんかふわっとしていて。だから、つい口をつぐんて、抱えてしまう。だからといって、私たちは、大切に思っていることを、今ある言葉で語れる範囲のおさめてしまっていいでしょうか。

本当は大切なその思いを堂々と言葉にするための新しい言葉があったらなら、いいと思いませんか。


ああ、そういうことを言いたかったんですね!


その言葉を使って、自分の思いにも、立場や考えが異なるひとのニーズにも耳を澄ませ、お互いが満たされる形をさぐって、デザインしていきます。

それが「ていねいな発展」と呼ばれる考え方です。これまでの経験では、小学生から、90歳の方まで一緒に学べて、理解できた内容です。しかも、やってて楽しい。

もう少し知りたい方はこちらご覧ください。ブータンのGNH(国民総幸福量)や、先進的な企業が持続可能な次世代の商品サービスを開発するために使われています。 国際会議などでもよく言及される世界共通の枠組みのひとつですが、あまり日本では知られていません。

何を学ぶのか②「対話」の技法

このカレッジでは、「対話」も大切にしています。

「結局それって何」とか、「でなんなの」とかすぐ言わずに、自分や相手の中にあるものをじっくり聞き合うことで、新しいアイデアを生み出していくための技法です。そして、異なる立場や考え方の人とわかりうための話し合い方です。

今すぐ公の場で叫んでも聞かれなそうなモヤモヤや願いは、対話の場だから、話しやすいことと思います。ぜひほんとうのことを話しはじめる練習を一緒にしませんか。ここならできる。最初からうまくなくて大丈夫。そんなスキルにも入門してもらえます。

オンライン開催&参加無料…なぜ?

今年、カレッジは、なんとオンライン開催&参加無料です。内容としては、私が普段大学や企業・NPOの現場で教えているもので、驚かれることがあります。

それでもなぜそうしたか。今年の8月、私たちはこの取り組みの報告会をしました。30人くらいかなと思ったところ、全国から100名ほど参加いただきました。それで私たちは、みなさんの声に勇気づけられました。ヨソの視点ならではの、気づきをいただきました。

私たちの取り組みは、目指す先に対してはまだまだ小さく、力もありません。地元の中では新しい動きで、「そんなことやってなになるの」という声が聞こえることもあります。しかし、北海道から沖縄まで、「同じ思いで奮闘しています」そんな声に私たちは、すごく励まされたんです。

だから、一歩踏み込んで決めました。そんな風に思いが重なる全国の仲間たち、そして、きっとあなたと出会い、つながりたい。だから、オンラインにしよう。そして、参加も無料にしよう。

背景にある地元の思い

ビールでにっこりおじさんは、取組の委員長・入山さん

「なぜ今富岡でこれをやるのか」ということも書いておこうと思います。

いま、富岡観光協会の企画マーケティング委員会は、地元市民や事業者のチームと富岡市と手を組んで、あたらしい地域や観光のカタチを探っています。

特に、2014年の富岡製糸場の世界遺産登録以降すすんできた、「たくさん人を呼ぶ観光や、地域に住む人が疲れてしまう地域づくり」から少しずつ脱却していく。そして、みんながニッコリしあわせに、より健やかに暮らしたり、働いていくための道を探ろうとしています。さらに詳しくはこちらに書いてありますのでぜひご覧下さい。

この新しい道のりを進むために、一緒に学ぶ全国の仲間が増えたらいいなあ!と思って、この取り組みを呼びかけています。

富岡のために参加しなくていい

もしこのカレッジにピンときたら、あなた自身のために参加してください。

「地域のため」「誰かのため」っていう魔法のことばで、人が利用されて、疲れてしまうことは、めずらしくありません。私たちは、そういうことに加担はしたくありません。あ、もちろん、「富岡のため」って言って、あなたがワクワクしちゃうならそれはぜひ大歓迎です。

最近友人の蟹江哲太郎くんが、がこのような言葉をポストしていました。

まちづくりでは、合意形成やイベントを行うことが主な要素になっていて、その地域に住む人たちのニーズや、地域を愛している人たちの思いが脇に置かれてしまっているように感じる時があります。「まちづくりのための人」ではなく、「人のためのまちづくり」が本質であって、その順番こそこだわるべきポイントなのではないか

ほんとにそうだなと思います。よく考えると当たり前のことなんだけど、どうしてか声にするのは勇気がいりますよね。さもなければまさに「疎外」された状態に陥ってしまって、困るわけです。

だから、まずはご自身のために
一緒にゆったり座学びませんか。
それで、一緒に、健やかになれないでしょうか。

そうやって、みんなが自分の幸せについて学んだ考える道のりを振り返ったときに、結果的につながって、仲間になれていたらラッキー嬉しい、くらいに思っています。

それがパートナーズカレッジ富岡2023です。

モヤモヤしたところから、ひとりでエイってかっこよく飛び出してもいいですけど、それに迷う時は、富岡に遊びに来てください。そのとっかかりをつかみにこのカレッジに参加しませんか。

お待ちしています。まずは募集説明会で!

ピンときた方、ぜひ力をあわせましょう。

今の暮らしやはたらきにモヤモヤしている人、身の回りのことがなんかへんだなと思っている人は、一人で声を上げないで(あげてもいいけれど)、まずはここで声を聞きあいましょう。

もしお読みのあなたがなにかにピンときつつ、「でもなー」と思う人がいれば、まずは60分の募集説明会があります。ぜひそちらにお越しください。

この取り組みの特徴や楽しみ方を気軽に知っていただけます。また、ここには書き切れない、地元チームの思いももしよかったら聴いてください。

カレッジは、11月8日からスタートしておよそ一ヶ月間集中、全4回の連続オンライン講座になります。

▶︎説明会やプログラムの詳細、申し込みなどは、こちら(観光協会HP)

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひあなたとお会いできますように。「おかえり!」の準備をして待っています。

地元市民を中心に、移住者や関係人口、多様な職種、世代からなる運営チームの私たちです!

◉DMO/富岡市の目的地化推進事業
主催 (一社)富岡市観光協会企画マーケティング委員会
協力 富岡市、WORKARTS合同会社、一般社団法人サステナビリティダイアログ

photo : Takao Saito

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