共同ケアマネジメント。通常のケアマネジメントとの違い。
今回は、ケアマネジャーと計画作成責任者が共同で行う「共同ケアマネジメント」と、通常のケアマネジメントの違いをご紹介します。
これは、平成27年度 厚生労働省 老人保険健康増進事業「地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する調査研究事業」の報告書における、地域包括ケア研究会が出している「地域包括ケアシステムと地域マネジメントの概要版」の7ページの抜粋である。
「地域包括ケアシステムと地域マネジメントの概要版」
https://www.murc.jp/uploads/2016/05/koukai_160518_c1_03.pdf
月額定額制のサブスク型介護サービス(定期巡回・随時対応サービス)では、ケアマネジャーとサービス提供事業所の計画作成責任者が、共同でケアマネジメントを行う。
共同ケアマネジメントが、通常のケアマネジメントとどう違うのかというと、
通常ケアマネジメントは以下の流れで行われている。
※平成28年4月22日 社会保障信義 第57回介護保険部会
参考資料3「ケアマネジメントのあり方」のP.3
第57回 介護保険部会 資料https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000122339.html
まず初めに、アセスメント段階にて、
・利用者の置かれてい状況の把握
・生活上の支障・要望などに関する情報の把握
・心身機能低下の背景・要因の分析
・解決すべき生活課題(ニーズ)と可能性を把握
が、行われる。
このアセスメントにどれだけの時間を割くことができるか?
そこに、通常のケアマネジメントと、共同ケアマネジメントとの違いがある。
おそらくは、通常のケアマネジメントにおいて、新規の利用者に対するアセスメントに割ける時間は2〜3時間くらいではないだろうか。
共同ケアマネジメントにおいては、168時間〜336時間。だいたい2週間〜4週間である。
実際に、24時間の中の色んな時間に利用者宅を訪問して、利用者の生活している様子を見せてもらいながら、サービス提供をしながら、
・利用者の置かれてい状況の把握
→ 全ての曜日の違う時間に訪問をして把握
・生活上の支障・要望などに関する情報の把握
→ 全ての曜日の違う時間の生活に寄り添って把握
・心身機能低下の背景・要因の分析
→ 全ての曜日の違う時間に訪問をして分析
・解決すべき生活課題(ニーズ)と可能性を把握
→ 全ての曜日の違う時間に訪問をして把握
→ 実際に利用者に色んなことにチャレンジしてもらいながら可能性を把握
安心してチャレンジしてもらうためには、いつギブアップしてもいい保険が必要である。
それが、随時対応(コール)である。
ギブアップをする時に、非常ボタンを押して助けを求めることができる。
本当に利用者にフィットしたケアプランや、サービス提供計画を作ろうとした場合、
サービス提供をしながら作っていくという方法が取れる。
ケアマネジャーがケアプランのアセスメントに必要な情報収集を、サービス提供事業所に委託をして、24時間様々な時間の、利用者の生活に寄り添いながら、実際に何ができるか、どこまでならできそうか、などを確認する。
その情報をもとに上記のように時間をかけながら、真に利用者にフィットした、ケアプラン、サービス提供計画を立てるのが、共同ケアマネジメントである。
定期巡回・随時対応サービスにおいては、時間の縛りが無い。というのも、サービス提供をしながらアセスメントを行える理由である。
定期巡回・随時対応サービスは、「屋根のない特養」と呼ばれたり、「地域全体が1つの施設で、道路が廊下、自宅が居室になる」などと表現される。
施設の中では、職員が居室を巡回してサービス提供が行われる。
9時、12時、18時に1時間ずつ居室にサービス提供します、といった形にはならない。
定期巡回も同じく、訪問時間(サービス開始時間)をあらかじめ、かっちり決めたりしない。
サービス提供時間をかっちりと決めてしまうと、利用者や家族が、「サービスを待つ」という状態が発生する。
訪問介護でも、定期巡回でも、食事の準備をサポートするために訪問している利用者宅への訪問が遅くなった際、
利用者から「来るのが遅いから先にご飯を準備して食べてたわよ」と言われることがある。
「お、自身で準備できるんだ。」
というアセスメントができる。
なるほど、「食事の準備をサポートする」と計画を立てたから、これまでは、自身で準備をせずに待っていたわけである。
自身で準備して食べていた食事をみてみると、スーパーで買ったグラタンを冷蔵庫から出して、冷たいまま食べている。
電子レンジが、車椅子に乗ったままでは届かない。
そこで、電子レンジの位置を低くする。冷蔵庫の中を車椅子に乗った状態で取り出せるように整頓する。
車椅子での動線を確保する。
どうやら家の中の配置や動線を整えることで、「食事の準備」は自身でできそうということになる。
もしかしたら、調子の悪い時には、準備ができないかもしれないから、そんな時には、随時コールを押してもらう。
配置や動線を整理した後も、自身で食事の準備ができているか、確認のために訪問するということも可能だ。
利用者や家族に、訪問を待ってもらう形で、生活の流れを止めるのではなく、
利用者や家族が生活している流れに寄り添う形で登場して並走して、帰るのである。
訪問介護のように「今日はよろしくお願いします。」で始まらない。「今日はありがとうございました。」でも終わらない。
「また来ました。」と言って生活にお邪魔して、「また後で来るので、何かあったら呼んで下さい。」と言って、次のお宅に向かうのである。
だから、開始時間を決めないように、同様、滞在時間(何分間のサービス提供をするか)を、あらかじめ決めることもない。
その日その時の利用者の状態に応じて柔軟に。
利用者が、できないことだけを、サポートする。
サポートをしながら、本当にできること。
できないこと。調子が良い時にはできること。調子が悪いとできないこと。
配置や動線を工夫をしたらできるかもしれないことを見極める。
また、電子レンジの話だが、100円ショップの便利ツールを活用することも提案する。
電子レンジで目玉焼き
電子レンジでパスタ
電子レンジで温野菜
電子レンジでインスタントラーメン
電子レンジで焼き魚
電子レンジで、ごはん炊き
そもそも、電子レンジで調理をしなくても、スーパー、コンビニで温めるだけの美味しいお弁当もたくさん売っている。
利用者ができそうなこと、できそうな工夫をどんどん提案して、利用者が介護保険サービスに頼らなくても生活できるように!
訪問介護だと、こんな提案をすればするほど、事業所の売上が下がってしまいますが、定期巡回では下がりません。
むしろ、1人の利用者が介護保険サービスに頼らずに生活できる工夫が見つかれば、その時間で他の利用者を支えることだって。
介護人材不足だって解消できます。
そんなアセスメントをしながら、その模様をケアマネジャーと共有し、共同で作っていくのが、定期巡回・随時対応サービスにおける、共同ケアマネジメントです。
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