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自販機に、煙を巻かれて

私のコレクションというお題で家と人生を見まわした。
子どもの頃は色々集めていたが、大人になるとコレクションまで偏愛できるものが見当たらない。

と唸っていたら、唯一近い感覚のものがあった。

夏に販売されるボスの缶コーヒーだ。

水色の氷とアイスコーヒーの茶色が描かれたパッケージで、夏になるといつの間にか自販機に並んでいる。
コンビニでは売っていないので、夏の出先では毎回こっそり自販機に目を凝らしている。FIREもWONDAもジョージアもおいしいけれど、夏の缶コーヒーは断然ボス派だ。他の製品よりもすっきりしている。

思えば昔から缶コーヒーに縁がある。
コンビニで働いていた時は飲料担当で新商品は多めに発注して自分でも買ったりしていた。また、20代の頃に友人が私をイメージして書いた短編では缶コーヒーが出てきた。

今となっては季節限定商品も、在庫があればネット通販でいつでも買える。
便利な世の中であるにも関わらず、私は自販機のボタンを押す。
1缶だけ転がるガコン、という無機質な音、どんな人でも格好の付けようがない姿で缶を取り出すところや夜の自販機の明かり。全くみやびやかではない風情を吸いこむ。

くだんの缶コーヒーは、秋の匂いがするといつの間にか自販機のラインナップから消えている。

毎年煙に巻かれながら、来年も継続販売されますように、と祈願している。


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