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万物へのあこがれ

「この世の全てが〇〇に見える」に憧れている。
数学者はすべての現象を数式で表せると初めて耳にしたときは、分数の割り算すら不確かな私にとって、食べたことのない極上のお砂糖が目の前に置かれたような不思議でとてつもなく甘美な魅力を感じた。

漫画でもそういった発言をしているキャラクターに惹かれる。
ある作品では魔術研究が大好きな主人公は世界が術式に見えると言い、また別の漫画の劇中小説では、人間が砂糖に見える設定があったと記憶している。

この手における頂点はレオナルド・ダ・ヴィンチだろう。緻密に描かれた解剖図集から、人体を物理と数学で表しているのが見て取れる。もはや何がどう凄いかを口にすることすらおこがましい。

あらゆる専門家は、万物を自分の分野で表現できるか否かを常に考えていると思う。編み物作家なら頭の中で針を持ち世界を編んだり、ギタリストなら道端に転がる石すらコードに見えているだろうか。医者は、美容師は、小説家は……。
愛知の田舎で引きこもっているわたしがほんの数分空想しただけでも、同じ物を視認したとて見えている世界は全く違うことがわかる。

図書館の帰り道、そんな妄想をぼんやり拡げていた。建物の円柱に沿って正しく並べられたレンガと不規則を計算された石垣が目に留まる。頭の中で鉛筆の濃度と持ち方の候補が挙がる。

凡庸なわたしは今日も机に向かい、白と黒に夢を見ている。

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