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【とろ日記】すれちがい

母がコロナに罹患して、生活に看病が加わった。
幸い症状が軽く、母自身が元々健康だからかなり楽な方だと思う。

一方で、生活サイクルや考え方の違う大人同士が同居する難しさを改めて実感している。

母と私は仲が良いが、好き嫌いや感謝の念を抜き、いち大人同士として向かい合うと、実は全く合わない。
食事の傾向や物事の集中しやすい時間帯など、生活するにあたり重要な部分にズレがある。特に今の期間であれば看病を優先し相手ベースになるので、なんとなく自分の生活がギクシャクする。

違和感は、普段の生活でも散見されていた。
作業を始めるタイミングでスマホの操作質問が来たり、集中しているときに急に世間話の散弾銃を撃ち込まれるなど、相手に悪気が無いとわかっていても折悪く感じることがある。時折、傘かしげを自分だけやってずぶ濡れになったような気持ちになる。

ある知人は、親と一時同居していた際に食事のサイクルと内容が全く嚙み合わないため、自分の分は自分で作ってずらしていたと話していた。
そういう選択もしていいんだと思いそれとなく提案したがうやむやになり、私が黙って折れた。

人の別れも、こうした些細なすれちがいの積み重ねで起きているのだろう。

以前読んだ宇野千代のエッセイで、自分が別れたいと思っているときは相手もそう思っている、といった内容が書いてあった。恋愛ごとを主としていたが、人間関係全般でも言える気がする。

果たして母も同じような思いを抱いているかというと、生憎そんな素振りは微塵もない。相変わらず私は密やかに折れている。仮にそう思わせないようにしているとしたら、母は大女優か大悪女だと思う。

とはいえこのように吐露しても大切な親であることに一切変わりなく、適切な距離があれば相槌上手の楽しい人だ。色んな人に好かれ、お母さんとして父と二人三脚で育ててくれた。

看病期間もあと少しで一段落つくはずだ。
早く元気になって欲しい。

私は少しだけ、世間話のライフルを待っている。







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