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TOKINOHA Ceramic Studioとは

2021年4月22日に京都・清水焼団地にオープンしたTOKINOHA Ceramic Studio。ここではどんな経緯でこのスタジオの構想が生まれたのか、そして具体的に何ができる場所なのかをお伝えできればと思います。

経緯

2011年から「トキノハ」という名前は器のブランド名でもあり、清水焼団地にある店舗の名称でもありました。改装前の店舗は、見た目にこそこだわりがありましたが、機能としては単なる店舗でした。せっかく店舗の裏に工房があり、店舗に並んでいる器を日々作っているのにも関わらず、訪れるお客様はそのことを感じることができない。いわゆるショールーム的な店舗でした。

そもそも、清水焼が作っているところを何気なく目にすることができる場所はほとんどありません。見せてもらえますか?と言わないと見れない場所。それはそれで一つの価値でいいけれど、もっと気軽に覗き見ることができる場所があるといいのになぁ。そうずっと思っていました。

また、それとは別に、作り手は今後お客様に直接器を売るべき。全てじゃなく一部でもいいから、直接売る機会を増やすべき。との考えを僕は持っています。昨年末、「ソーホー」というオンライン空間で作り手と買い手を直接繋げるマーケットプレイス事業を始めましたがその事業を始めたきっかけも考えの根っこは同じでした。TOKINOHAの器の販売経路としてもっと直売を強くしていくためにはどうすればいいかをずっと考えていました。

考えた結果、今後、単に購入をするだけならECで十分。店舗は単に購入するだけの場所ではいけない。ブランドの世界観を感じることができ、ここに来ないとできない特別な体験ができる場を作らなければいけないと強く思うようになりました。

そして最後に、新しい空間では、職人が気持ちよく働く環境を作ることがとても大切だと考えていました。陶芸の工房のイメージは夏に暑く冬に寒い。狭くて暗くてごちゃごちゃしているなどネガティブなイメージがあります。それがいいんだ!職人とはそんなものだ!という方もいますが、その考え方では、職人の世界に憧れる若い人は増えません。スッキリと美しい工房を作り、そこで生き生きと働いている職人の姿を見て、若い人が職人の世界に憧れてもらいたいなと思いました。

そんなことで、「工房が見れる」「世界観を感じられる」「ここでしかできない体験」「職人の環境改善」そんなキーワードを元に、inflorescenceの廣田さんとソフト面のコンセプトを練りつつ、hezerafの櫻井さんと設計のコンセプトについて議論をし始めました。それが確か2019年の春頃だったと思います。そこから2年。途中でコロナの蔓延があり、計画を進めるべきかやめるべきかで思い悩んだ時期もありましが、いくつかの幸運な出来事にも恵まれ、なんとか想いを持続し、2021年4月22日に無事にオープンすることができました。

では、TOKINOHA Ceramic Studioにはざっとどんな機能があるのかをご説明します。

WORKSPACE

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TOKINOHA Ceramic Studioには、WORKSPACE(工房)があります。TOKINOHA、そして素—siroの器は全てここで生み出されています。改装前の工房から一番の変化は、工房の中心にあった窯場を別棟に移動したということです。それまでは、工房の中心にあったため、窯場はもちろんのこと、窯場の熱がその他の空間にも影響を与え、夏場の工房は快適とは程遠い空間でした。

できれば窯場も涼しくしたかったのですが、どれだけ空調を入れても、窯そのものが200度以上の時にそこに体を入れて器を取り出す時点で、もはや窯場が涼しいも何もありません。それはもう諦めるしかないとの決断になりました。せめて窯場だけ別棟に移して、その他の空間を快適にすることが大切だとの考え方で、別棟に窯場を移築することに決めました。

また、それまでは工房の場所が1Fと2Fに分かれていて、作った器を毎日何度も上げ下ろしするのもなかなか大変な作業でしたし、せっかく作った器を落としたりするリスクもありました。そんなことで、工房のスペースはなるべく移動距離が少なくなるようレイアウトされています。飛躍的に作業効率が上がった快適な工房になりました。

SHOP

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元々のSHOP空間は、せっかく裏で器を作っている工房があるのに、その気配を感じれない単なるSHOPでした。今回の改装では、SHOP空間から工房を丸見えにしたので、職人の気配を存分に感じることができます。オープンして1ヶ月ほど経ちましたが、興味深く作業の様子をじっと眺められ、「こんなにじっくり作業の様子を見たのは初めて」「ずっと見ていられる」など大変好評いただいています。

職人の作る様子を見ながら完成した器を改めて見て、なるほど、あんな風にして形を作っているのか。今まで見ていた器と見え方が変わる。などと言って改めて完成品の器をじっくり観察する方もたくさんおられます。背景を知ってもらうのは大切だとすでに手応えを感じています。

MEMBER'S GALLERY

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TOKINOHA Ceramic Studioでは、1FのSHOPとは別に新たに2Fにも器をディスプレイしている空間をご用意しました。ここは、料理人さん向けにオーダーメイドで器を作るブランド「素—siro」用のショールームなのですが、単なるショールームではなく「器のフィッテングルーム」というコンセプトで、照明もレストランで使用されることが多いライティング、そしてテーブルの上を様々な素材に着せ替えできるようにしていますので、料理人さんは自分のレストランの環境と近い状態で器を選ぶことができます。

当初は料理人さんだけのための空間にするという考え方だったのですが、オーダーで器を作る楽しみを一般の方にもぜひ感じてもらいたいということでオーダーメイドの間口を一般の方にも開放することにしました。ただ、全ての方にオーダーの楽しさを体感してもらいたい反面、そうしてしまうと接客や制作にコストがかかり過ぎてしまうということで、メンバーズ制度を導入することにしました。

メンバーズ会員の仕組みを簡単に説明しますと、まず、入会金が11,000円。そして月会費が毎月1,100円かかります。(2021年5月現在)

【メンバーズ特典】
・毎年11,000円分の金券をプレゼント(TOKINOHA Ceramic Studio、HOTOKIで使用可能)
・年間10個まで欠けた器の金継ぎが無料(TOKINOHAの器に限る)
・オーダーメイドで器を製作することができる
・アウトレット品を購入することができる
・イベントの先行予約

入会金をのぞくと、年間13,200円の会費がかかるのですが、それに対して11,000円分の金券をお渡しするので、実質2,200円で上記の特典が得られます。現状、オープンしてから1ヶ月くらいですがすでに10名以上の方がメンバーズになっていただいております。

皆さんオーダーで器を作るという体験を今までにしたことがないとのことで、本当に楽しそうにどんな器にしようか考えておられるのが印象的です。現状ではメンバーズ会員の数に制限は設けていませんが、当初の予定よりも早いペースでメンバーズが増えていますのでもしかするとどこかでメンバーズの募集を一旦ストップする可能性もございます。ご興味ある方はぜひお早めにお知らせいただければ幸いです。

1DAY LESSON

TOKINOHA Ceramic Studioでは実際に器を作る体験を2つご用意しています。1つは電動ロクロ体験。40分間でお茶碗くらいの大きさのものを3つくらい作ることができます。出来上がったものの中で気に入ったものはいくつでも焼くことができます。(別途焼成費かかります)。選べる釉薬もTOKINOHAで人気の4色の釉薬をご用意しています。明るい空間の中で土に触れ気持ちの良い時間を過ごしていただけます。

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2つ目の体験が、楽焼体験です。こちらで用意した「小皿」「植木鉢」「お猪口」の3種類の素地から、好きなものを選んでいただき、それに楽焼用の釉薬を筆で塗ってもらいます。釉薬も4色の中から好きな色を1つ選んでいただけます。

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塗り終わった器を、あらかじめ900度に熱してある窯の中に入れます。窯に入れるのはこちらのスタッフが行いますが、10分後に窯から器を取り出すのはお客様に自ら体験していただきます。真っ赤になった器を窯から専用の火バサミで取り出します。そしてそれを丸めた新聞紙の上に置くと、新聞紙が一気に燃えます。さらに上から新聞紙を被せ火が大きくなったところで上から金属のバケツを被せて燻しながら冷ましていきます。

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体験したその日に完成品を持って帰ることができるのが嬉しい体験ですが、それ以上に、普段体感することのできない窯の熱や炎を間近で感じられるのが魅力的な体験です。焼き上がりの雰囲気も、色の塗り方が上手いとか下手とかではなく、炎の力でどんな風になるのか分からないので焼き物の醍醐味を感じることができます。

1DAY LESSONの予約は下記から↓↓

SCHOOL

1日だけの体験ではなく、継続的に陶芸を学びたいという方向けに陶芸スクールもご用意しています。入門コースからスタートし、初級コース、中級コースと少しずつ自由に器が作ることができるような仕組みになっています。すでに数名の方が受講を開始されておりますので、ぜひご興味ある方はいつでもご連絡ください。

それとは別に陶芸のプロを目指している方に向けての「プロ育成コース」というカリキュラムもご用意しています。本気でプロを目指したい方に向けて、ロクロなどの技術はもちろんですが、陶芸の世界で生きていくための知識やノウハウなども含めて、何を学びたいかを個別に相談に乗りながらカリキュラムを作っていければと考えております。こちらも随時募集しておりますのでご興味ある方はご連絡ください。

FOODSTAND

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最後にFOODSTANDについて。TOKINOHA Ceramic Studioの店内には、カウンターがあります。自分たちで作った陶板が貼られたカウンターです。ここでは、陶芸をモチーフにしたドリンクやお菓子をご用意しています。具体的には「泥」や「釉薬」をモチーフにしたドリンクであったり、TOKINOHAの語源でもある「トキ色」をモチーフにしたお菓子などです。全てこのTOKINOHA Ceramic Studioのためのオリジナルで、飲み物のレシピはinflorescenceさんに、そしてお菓子はneutralさんに作ってもらっています。

ただ、少しややこしいのが、私たちはここをカフェとして運営したい訳ではないということです。あくまで、陶芸を感じる体験としてのドリンクやお菓子であり、ちょっとコーヒーを1杯。といったメニューはご用意しておりませんのでご理解ください。これらのメニューは器を10,000円以上購入いただいた方に対して、無料で提供しています。実店舗にわざわざ来ていただき購入していただくことに対して、ECでの購入では体験してもらえない価値を提供したいとの考えでもあります。

また、このFOODSTANDでは、6/19(土)20(日)の2日間、「釉薬を味わう」というイベントを開催します。このイベントでは、「釉薬」を中心にした工房ツアー、そしてお話を聞いていただきます。釉薬って聞いたことあるけどどんなもの?そんなことについて深く学んでいただける内容になっているかと思います。

釉薬について学んでいただいた後には、「釉薬を味わう」というタイトルの通り、もし釉薬を食べたらどんな味がするだろう?というコンセプトで、今回は黄色の釉薬の器に、その釉薬を味覚として表現したお菓子とドリンクを実際に召し上がっていただきます。お菓子とドリンクはそれぞれ、inflorescenceさんとneutralさんによるこの日のこの企画だけのためのものです。

かなり情報量が多くややこしい内容になってしまいましたが、簡単にまとめると、TOKINOHA Ceramic Studioは、「陶芸」という軸足の中でどれだけ幅を広げた活動ができるのか、というチャレンジを行っている場所です。そしてそれは全て、陶芸という仕事が未来に続く仕事になって欲しいとの想いからです。まだスタートしたばかりですが、これからこの場所で様々なジャンルの方と交わりながら陶芸というジャンルの魅力や可能性を世界に広く発信していければと思っています。

TOKINOHA Ceramic Studioの基本情報↓↓

OPEN | 10:00~18:00
CLOSE | Tuesday
TEL | 075-632-8722
ADRESS | 京都市山科区川田清水焼団地町8-1
instagram | @tokinoha_kyoto
Twitter | @tokinoha_kyoto

*今回の写真は全て中島光行さんの写真を使用させていただいています。



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