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7/5 傷心のヌードルスープ 【ノンキャウ→ムアンラー】
北ラオスの桃源郷ノンキャウ(Nong Kiaw)の次は、温泉地ムアンラー(Muang La)へ。
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ノンキャウに1泊しかできなかったのを惜しみつつ、ムアンラーのあるウドムサイ(Oudomxai)行きバスに乗る。
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ミニバスは定刻通り午前10時に出発。
10分ほど前には運転手も含めた全員が車内で待機し、スマホの時計が10時になった瞬間に発車するという謎のパンクチュアルさを発揮した。
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順調にバスは進み、午後12時半にウドムサイのバスターミナルに到着。
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ここでもまた、市内から5km離れたところで降ろされる。
ラオスは人口が少ないので、市内でも土地は余っているように見えるし、交通渋滞は全くない。
バスの本数も少ないためバスターミナルが混雑することもない。
それなのになぜ辺鄙なところにバスターミナルを作るのか本当に謎だ。
どのようなメリットがあるのかさっぱり分からない。
何もない幹線道路を歩いて市内まで行く。
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ウドムサイには鉄道が通っている。
中国との国境ボーテンから首都ヴィエンチャンを結ぶ鉄道で、その名も「中国ラオス鉄道」。
中国の一帯一路構想の一部として2021年12月に開業し、中国国内の鉄道とも直通運転を行なっている。
また、ヴィエンチャン以南はバンコクへも延伸する計画があるらしい。
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ウドムサイは中国と国境を接する県で、中華系の住人も多い。
そのため、ラオ語と漢字で二重表記されている看板が多く、アルファベットはあまり見かけない。
「ニーハオ」と挨拶してから話している人も見かけたので、もしかしたら中国語も普通に通じる地域なのかもしれない。
ぼくは中国に行ったことがないのでなんとも言えないが、中国を知っている人からすると中国っぽい雰囲気が漂っているのだろうか。
1時間ちょっと歩いて観光案内所に到着。
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温泉地のムアンラーまではここから約25km。
スクーターか自転車か少し迷って、自転車をレンタルすることにする。
今日はムアンラーに泊まる予定で多少は時間が余っているし、汗をかいた後の温泉はさぞ気持ち良いことだろう。
最初は快適だったのだが、スタートしてから15分ほどで重大な見落としがあったことに気付いた。
25kmという距離しか考慮していなかったが、ここは高地だったのだ。
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当然、道路は平坦ではない。
上り坂では自転車を押して歩き、下り坂ではサドルにまたがって疾走する。
幸いなことに上り坂と下り坂の割合が同じくらいだったので上手いことバランスが取れているが、太ももはパンパンだし滝のように汗が滴り落ちる。
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道中、一面のトウモロコシ畑やのどかな田園風景、高床の倉庫が並んだ集落などを通り過ぎる。
息を呑むような絶景という感じではないが、心が落ち着くような風景が広がる。
心身ともに余裕がなくてカメラを構えられなかったので、明日帰る時に写真に収めたいと思う。
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アップダウンが激しかったのは最初の10km弱で、後半は平坦か緩やかな坂道だった。
最初はどうなることかと思ったが、何とか2時間ほどでムアンラーに到着。
さて、事前に調査していた温泉が併設されたゲストハウスに向かうと、付近で土木工事をしている。
ゲストハウスも人の気配が全くなく、嫌な予感がする。
自転車から降りて周囲の様子を伺っていると、おじさんがやって来てぼくに話しかけた。
どうやらゲストハウスの主人らしく、「泊まるか?」と聞いているようだ。
彼はラオ語の次に中国語らしき言葉でぼくに話しかけてきたが、ぼくが中国人ではないことを知ると、英語が話せる青年を呼んだ。
廃墟のようだったゲストハウスに泊まることができたわけだが、温泉に入りたいと青年に伝えると「温泉はもうない」と答える。
なんてこった。
ぼくの聞き間違えかと思って、もう一回尋ねてみたがやっぱり「ない」と言う。
ムアンラーにはこのゲストハウス以外にも、無料で入れる公衆浴場があるという情報をゲットしていたのでそちらの方に赴いてみる。
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しかし、温泉へ行くために作られているはずの橋の袂の階段がない。
なんてこった。
一気に不穏な空気が漂い始めた。
何とか獣道のようなものを見つけて、温泉があるはずの方に向かう。
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そこでぼくが見つけたものは……
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浴槽の残骸だった。
温泉を管理しているはずのコテージも完全な廃墟となっている。
もうこの温泉は管理する人がいなくなって打ち捨てられてしまったようだ。
あまりにもひどすぎる展開だ。
温泉に浸かるためだけにわざわざウドムサイに寄り道して、汗だくで2時間も自転車を漕いできたというのに。
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温泉施設はなくなってしまっているわけだが、もしかしたら脇を流れる川に源泉が垂れ流されているかもしれないと思って川に足を浸してみたが、ただの川だった。
もしこの川が澄んでいたら、鬱憤を晴らすために泳ぎでもしたのだろうが、こんな泥水だと到底入る気にならない。
本当にショックだ。
しばらく呆然と佇んでいたが、ないものはしょうがないので集落を散策することにした。
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小さな集落には不釣り合いなほど立派な寺院があったが、それ以外は何もない。
寺院に少年僧がたくさんいたので、明日の朝は托鉢が見られるかもしれないと思ったが、そのためだけに早起きする気にはならない。
散策は早々に終わり、集落の数少ない食堂でヌードルスープを食べた。
プラスティック椅子に座ったら、ぼくが何も言わないうちにヌードルスープを作り始めていたので、ヌードルスープしかメニューにないようだった。
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ヌードルスープは安定の美味しさだった。
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日没後、まだお腹が満たされていなかったので外に出てみたが、食堂はほとんど開いていなかった。
また同じヌードルスープを食べる気にもならなかったので、チョコレート菓子を買って大人しくゲストハウスに帰った。
とても残念な1日だった。
ところで、温泉が放擲されてしまった理由だが、どうも例の流行病が原因のようだ。
と言うのも、Googleマップに今は存在しない食堂やゲストハウスの名前がいくつか表示されるのだが、それらのレビューを見ると全て3年前で途切れている。
ムアンラーは中国国境と60kmほどしか離れていない場所で、流行病による国境封鎖以降、おそらくこの観光地は壊滅してしまい今に至るのだろう。
このまま何もない集落になってしまうのか、温泉観光地としての地位を取り戻すのかは分からないが、結局はぼくが訪れたタイミングが最悪だったようだ。
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