いちばん大事
飲み屋で若い男女が大きな声で話していた。いや、声が大きいのは男の方だけか。
飲み屋で暴れて出禁になったとか、喧嘩でコテンパンにやられたとか、比較的ありがちな武勇伝を店中に響き渡る大声で得意げに話すサマが微笑ましいけど、どうも女には刺さっていない様子。
どうやらお互いに彼氏彼女がいるようだ。でも男の下心は隠し切れていない。
時折女の話の腰を折り、相手の話を遮ってアドバイスじみたことを上から目線で話して悦に入ってる。ああいうのを肉食系というのかな。鶏肉ならめっちゃ食べるけど、ちょっと僕が取り入れるのは難しいスタイルだな。
しかし下心を抱いている女性に対して余裕ある態度を演出するという手法はいつの時代も廃れることはないのだなあ、などとボンヤリ考えながらハイボールを飲む。
唐突に男が声高に主張する。
「後悔しない恋愛を全力でした方がいい。そうすれば大丈夫だ。それが一番大事なことだ。」
その具体性の欠片も無い大したことないアドバイスに、僕を含む中年の一人客たちはみな一様に無表情のままだった。
大事マンブラザーズが後年、「実際どれが一番大事だったんですか?」という問いに「どれも大事じゃなかった」と語るエピソード大好き。
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