押上 - スカイツリー
遠くに見えるスカイツリーの展望台らしきところに向けて険しい視線を投げかける。
「望遠鏡をのぞいている子供と目を合わせて驚かせてやろう」
なんて年甲斐も無くアホなことを考える。そこまで見えるわけないのにねえ。
でもよく考えてみれば、それが絶対にありえないことだ、とは誰にも言い切れないのだ。
僕が錦糸町駅周辺からスカイツリーを睨んでいることと、スカイツリー展望台の中で僕と目を合わせている人がいないということ、その両方を同時に確認できる人間はこの世界に誰一人として存在しない。
それは「普通に考えてありえないことではあるのだけど、でも誰もそれを事実として確認することができない」こと。
ならばそこにささやかな夢を見てもいいだろう。
きっとあのスカイツリーの展望台の中では、視力8.0くらいの小さい子供が「ねえ!あそこでこっちを睨んでいる人がいるよ!」なんてお父さんお母さんに興奮気味に話しかけているんだ。
少なくとも、明確なエビデンスをもって、そのことを否定できる人はこの世界には存在しない。
僕は宝くじのシーズンになると「当たるといいなあ」ということをよくこぼす。すると「いくら買ったんですか?」と尋ねられる。僕は答える。「買っていない」と。
「それじゃ当たるはずないじゃないですか」
と言われる。
ところが可能性はゼロではない。たとえばその辺で誰かが落とした宝くじを偶然拾って、それが偶然当たるという可能性もあるのだ。
あ、もうこの話はいいですか。すみませんでした。