31歳「ええ塩梅」考
「ちょうどいよい」「適切である」という意味の日本語の言い換えは非常にバリエーションに富んでいるが、その中でも「良い塩梅(よい・あんばい)」という言葉がある。
関西弁では「ええ塩梅」。柔らかな響き。
この言葉が昔から好きで、自分の感性の真ん中にしっくりと収まる感覚がある。
「ちょうどいい」のすごくちょうどいい言い換えであると思う。
日々の仕事や生活をやりくりする中で、大小様々なうんざりに苛まれる日もあれば、まるでサイズの合わない服を着て終日過ごすような不快な日だってある。
大人の毎日はくたくただ。
そんな中でもできる限り心地よく、機嫌よく生きていくにはどうすればよいのか。
その答えの1つとして、自分だけの小さな「ええ塩梅」を少しでも多く見つける視点が肝要なのではないだろうかと最近思うようになった。
そして、「ええ塩梅」には個人差がある。
私にとってのええ塩梅は、誰かにとっては過剰だったり物足りなかったりするだろう。
お互いのええ塩梅を侵害せず尊重することは、他者と自分のええ塩梅な距離感を保つ大切な要素であるとも思う。
ええ塩梅is不可侵。
しかも、年齢やタイミングによって個人の中でのええ塩梅でさえ変化する。
ええ塩梅is無常。
だから、人生は、その瞬間瞬間の「ええ塩梅」を探求する旅であるとも言えそうだ。
ここでは、31年ほど使い古してきた頭と身体で感じる、些細でくだらない類の「ええ塩梅」の中間報告を書き留めておきたいと思う。
パンの種類の「ええ塩梅」
近所のパン屋でパンを買って海辺で食べる、という趣味があるのだけど、パン屋に行くと食べたいパンが分からなくなる現象が少なからず起こる。
惣菜系か甘い系か、それすらも分からない。
迷宮の末、苦し紛れの消去法を試み、えいや!と買ったパンは結果的にいつも美味しい。つまりパンは総じてうまいのだ。
だが、そんな時に高確率で辿り着くパンがあることが明らかになってきた。
それは、くるみパンである。
どちらかというと甘い系に分類される気もするが決して過剰でないし、お昼ご飯のメインにできなくもない。
どんな気分でも抵抗なく食べることができ、実にフラットな姿勢で佇んでいる。
私のパン界のええ塩梅(not 妥協の産物)は、どうやら現時点でくるみパンのようだ。
休日パン屋の「ええ塩梅」
またしてもパンの話だ。
世の中には数多のパン屋が存在する。
私はパンを食べる以上に、パン屋に行くことが好きであると言っても過言ではない。
旅先では必ずその土地のパン屋を訪ね、自宅でGoogleマップ全国妄想パン屋巡りなども開催している。
パン屋は店ごとの価格帯にわりと差がある。
たまの贅沢は一旦置き、ここでは週末のお楽しみとして通うパン屋のええ塩梅について考える。
私にとっての休日パン屋のええ塩梅の指標は、クロワッサンひとつ180円だ。
都会的な洗練された店でクロワッサン324円とか言われると、ちょっと身構えてしまう。
(旅先とかだとウキウキで買ってしまう)
スーパーで買う5個108円くらいのフニャフニャのクロワッサンもうまいが、仕事の疲れを癒す休日の贅沢としてはやや物足りない。
クロワッサン180円パン屋は、パンのラインナップや雰囲気的にもええ塩梅だ。
ちなみに、ええ塩梅パン屋では、塩パン1つ120円で買えたりする。
土曜の朝に海辺でコーヒーとともにカスが飛び散ることも気にせずバリバリィ!といただくクロワッサンは、バターの風味が五臓六腑に染み渡る。多幸感の極み。
*
もっと多岐にわたる「ええ塩梅」についてサクサク書くつもりが、パンだけで想定を上回る文字数を食ってしまった。
他部門の「ええ塩梅」については、また気が向いた時にちょっとずつ書けたらいいかなと思う。
焦らずとも「ええ塩梅」探求の旅はまだまだ続くのである。
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