マガジンのカバー画像

エルシネ6

16
山科清春の雑文集です。
運営しているクリエイター

#書評

「荒野の坊っちゃん」感想

金原塩之介『荒野の坊ちゃん』(蒼英社文庫)

 いやー、面白かったですね。

 この小説は、タイトルからもわかるとおり、夏目漱石の『坊ちゃん』のパロディでなんですが、黒沢映画でも「荒野」とつけばウエスタンになってしまうように、これも夏目漱石文体の西部劇なんですね。

 漱石文体でのパロディ小説としては『贋作《坊っちゃん》殺人事件』とかが面白かったのだけれど、西部劇というのは思いつかなかったな

もっとみる

『エムエスエクス』感想

 ブンボル長島『エムエスエクス』(すぱる4月号)読了。

 妙に感激。

 ネット上では難解だ、難解だという書き込みを見るが、まあ、難解ではないと思います。

 それは、僕とブンボル氏が同世代で、なおかつ彼と同じように80年代に一世を風靡した(?)「MSX」という家庭用コンピュータのユーザーだったからでしょうが、ちっとも難解ではなかったです。

 作中で描かれるMSXユーザーの卑屈なまでの

もっとみる

『蝦夷手の研究』感想文

澤井幸太郎『幻の拳法其の壱・蝦夷手の研究』

(楼村社・昭和6年)

 うーん、まあまあ面白かったです。

 これは、昭和初期に少年向けに書かれた本なのですが、まあ、なんというか、人を食った仕掛けのある本でして、表向きは澤井幸一郎という拳法家(柔術家)が大正の終わり頃、「蝦夷手」(えぞて)という幻の拳法をもとめて、東北、北海道から樺太、さらには沿海州(現在の中国黒竜江省あたり)まで遍歴すると

もっとみる

『幻影飛行機械』感想

 ちょっと調子が悪くて、雲の上を歩いているようにふわふわしているのですが、ついつい読みかけの本を手にとってしまいました。

 

 そして……泣きながら(嘘)一気に読みました。

目方大作『幻影飛行機械』(ハカヤワ文庫JA)

 えー、詳細を書くような気力体力はないのですが、まあ、一言で言えば「スーパーヒコーキ野郎大戦」であります。

 あるいは「ドキッ!ヒコーキ野郎だらけの幻魔大戦」と

もっとみる