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【短編小説】人間ドックの日

 しょっぱなに血を抜かれてからの、身長、体重、それから腹ン中を見られたり、冷たいジェルを塗りたくられてぐりぐり機械で押されたり。
 まぁ、検査ってーのはこんなもんだ。
 と言えるほど回数をこなしてる訳じゃないけど、二回目ともなれば一回目よりも余裕が出てくる。
「それではこちらのお薬を飲んでいただいて、後は検査結果が出次第、順番にお呼びいたしますので、待合室にてお待ちください」
 にこやかに笑って下剤の入ったコップを差し出す看護師さんの言葉に頷く。あんまり飲みたいものじゃないけど、飲んで真っ白なカタマリを出さないと詰まって大変だって聞くしなぁ。ふぅと一息ついてから、透明な液体をぐっと飲み干した。
 笑顔を崩さず待っている看護師さんの指示にしたがってゴミ箱へ紙コップを捨ててから、最初に来た時に案内された待合室に戻る。
 正直、面倒だ。
 仕事を休めるのはいいんだけど、でもどうせ休んだ分のしわ寄せが明日以降に来るから心から歓迎は出来ない。バリウムは後々まで腹の不調が来るし、何より飲んだ時のげっぷを耐えるのがキツかった。来年は胃カメラにしよう。
 はぁと溜息をついてから待合室をぐるっと見渡すと、俺以外にも何人か待ってる。今日同じように人間ドックを受けにきた人達だ。老若男女、といってもまぁ30代だろう女性から50代くらいの男性までってとこだな。一人は朝イチの採血の時にふらふらになったらしくて看護師さんに寝かされてた。大変そうだな。
 ぱっと見はみんな別に健康そうだし、普通に見える。もしかしたらどこかが悪いのかもしれないし、俺みたいに悪いとこがあるかどうかを調べに来てるのかもしれない。
 早期発見早期治療と謳われているが、無いのならそれに越したことは無い。
 じりじりと検査結果を待つ間、流されてるテレビを見たり、置かれてる雑誌を読んだり、スマホをいじったりして時間をつぶすけど、実際はかなり上の空だ。
 だって考えても見ろよ。
 何か見つかったら、と思うと気が気じゃない。
 血圧は…普通だって言われたな。体重も平均値の範囲内のはず。血液検査はわかんないけど、食生活は一応自炊とかスーパーの惣菜とか、野菜は食べるようにしてる。胃のレントゲンはまぁ、食べる時に痛いとか無いし、大丈夫ってことにしとけ。睡眠時間はかなり削ってる自覚しかないから、どうなんだろな。
 あとは…もうわっかんね。気にしすぎるとそれもストレスになって良くないって聞くし。
 ブンっと頭を一回降って、何も考えないようにする。そうだ朝飯抜きだったし、昼に何食うか考える方がよっぽどいいわ。肉か、魚か、ラーメンか、頑張ったんだしちょっと奮発してご褒美ランチにしてもいいだろう。
 まてよ、もしかして何かひっかかったりしたら、食事制限とかかかったりするかな。あああ、だめだ結果が気になってしょうがない。
 うだうだと頭の中を支配する「もしも」。両手で頭を抱えそうになった頃、待合室の入口に看護師さんがやってきた。
「それでは検査結果が出ましたので、順番に先生とお話していただきます。1番の方どうぞ」
 やっと結果が聞ける。俺は5番だから、まだ少し先か。
 まぁもう、なるようになれ。っつーか現状を聞くしかないんだよな。
 でかい病気とかありませんように。いや小さいのでもあったらヤだけど。
 笑顔で帰ってく1番のおっさんを見送って、ぐっと拳を握って覚悟を決めた。


 本日は「人間ドックの日」だそうです。日本記念日協会様より。
 大事な事かなぁと思います。私も去年受けてきまして、ドキドキしつつ結果を聞いてきました(オールクリアで健康体でした良かった良かった)。作中に書いた通り、何もなければそれでいいですし、もしも何かあったとしても、早期発見早期治療できればとても良いですよね。
 バリウムを飲んだり、血液検査のために採血したり、そのほかにも採尿やら検便やら前日の食事は夜何時以降はダメです等々あって大変ですが、日々の健康のためにも、みなさん受けに行ってはいかがでしょう?

小説を書く力になります、ありがとうございます!トイ達を気に入ってくださると嬉しいです✨