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ポスト・コロナのフードデリバリー市場のゆくえ。生き残りの鍵は、データドリブンなマーケティング戦略

コロナ禍において、急成長を遂げたフードデリバリー市場。その反面、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きつつある昨今、今後の成長性を気にかける人は少なくありません。

そこで今回は、「データ分析のブレイン」としてキッチンベースのエンジニアリングを担い、6/20放送のMBS /TBS「100%!アピールちゃん」ではゴーストキッチン企画のサポートも行った、ビジネスアナリストの佐久間竜にインタビュー。デリバリー市場の現状はどうなっているのか? 業界全体が抱える課題とは? 各店舗が生き残るために、何が必要なのか? きっとあなたの疑問も解決されるはずです。ぜひ最後までご覧ください。

「100%!アピールちゃん」に関する過去記事はこちら
https://kitchenbase.jp/magazine/100appeal/
https://kitchenbase.jp/magazine/100appeal-2nd/

成長が鈍化したのではなく、正常な成長率に戻ったと考えるべき


──フードデリバリー市場の現状について教えてください。

コロナ禍の落ち着きとともに、過熱気味だったデリバリー市場もようやく平常運転に戻ってきたというのが率直な印象です。

具体的な数字を見ていくと、2019年には4000億円規模だった国内のデリバリー市場は、2021年には約2倍の8000億円まで一気に膨らみました。2022年内に1兆円の大台を突破する見込みですが、そこからは市場の拡大スピードが減速するというのが、大方の予測です。

とはいえ、決して市場がシュリンクしているわけではありません。「成長が鈍化した」というよりも、「コロナ禍以前の正常な成長率に戻った」という表現が、適切だと思います。デリバリー市場は、今後も堅調な成長を続けていくでしょう。実際、アメリカではコロナ禍のピークの市場規模を超えているというデータもあります。

──たしかに、自分自身のことを考えてみても、このままコロナ禍が収まったとして、フードデリバリーは今後も利用していくと思います。

同じように考えている人が多いのではないでしょうか。2年以上に及んだコロナ禍の時期を経て、フードデリバリーは自炊や外食と並ぶ「食の選択肢の一つ」としてライフスタイルに根付いたのだと感じています。

フードデリバリーというビジネスモデルには、独自の強みがある

──フードデリバリーというビジネスモデルの収益構造についても、改めて教えてください。継続的に営業していくには、どの程度の利益率が求められるのでしょう。

利益率10%という数字が、ひとつの目標になるはずです。この数字の根拠を、もう少し具体的に説明してみましょう。まずは一般的に食材費が、売上高の25〜30%かかります。さらに人件費や家賃光熱費・販促費などが25%。そしてデリバリーの場合は、プラットフォームへの手数料が30〜40%かかります。これを販売金額1,200円の商品に当てはめたのが、下記の図表です。

この範囲内で経費を抑えられれば、10%の利益率を確保できます。ただ、これはあくまでも目標値なので、実際には営業利益率8%前後を出せれば成功と言えます。

──営業利益率8〜10%という数字は、実店舗の収益と比較すると、どうなのでしょう?

実店舗でも、一般的に利益率は8%前後だと言われています。ただし、実店舗の場合、8%の利益率で初期費用を回収しようとすると、数年間はかかってしまう。オーナーさんにとってみれば、大きなリスクだと言わざるを得ません。初期費用を回収する前に閉店となれば、負債だけが残ってしまうわけですからね。

──だから飲食店の開業というと、一世一代の大勝負というイメージがありますよね。

そうですね。けれど、キッチンベースでデリバリー特化の店舗を開業するのであれば、初期費用を最大で十分の一以下にまで抑えることができます。最もコストがかかる内装工事が不要になりますからね。すると利益率が8%程度だったとしても、一年以内に初期費用を回収できる可能性が充分にある。そういったリスクヘッジの観点から、キッチンベースへの入居を決める方も多いですね。

営業利益率10%以上を目指すなら「1キッチン多ブランド」が鉄則

──10%の利益率を達成するために、キッチンベースの直営店ではどのような工夫をしているのでしょうか。

最も有効なのは、一つのキッチンでジャンルの異なる複数のブランドを展開することです。フードデリバリーのプラットフォームにおいては、ブランド数を増やすことが、そのまま露出量の倍増につながります。実店舗でたとえるなら、家賃はそのままで、店舗数を増やせるようなものですから、これをやらない手はありません。実際に弊社の直営店では、一つのキッチンで3〜5ブランドの調理をこなしています。

──異なるジャンルの料理を一つのキッチンで調理するとなると、スタッフの方の負担は大丈夫でしょうか?

デリバリーに特化した店舗であれば、そこまで負担は大きくならないはずです。ポイントは、メニュー開発の時点からデリバリーを前提として調理や盛り付けのオペレーションを組むこと。これを徹底した結果、弊社の直営店では、どんなメニューも注文から5分以内で準備できるようになりました。このあたりのノウハウは、各入居者とも随時共有しています。

──そのほかに、営業利益率を高めるためのポイントはありますか?

デジタルマーケティングも重要です。弊社では、各種プラットフォームのデータを集約化した上で、ブランドごとの顧客特性を分析し、メニュー構成や価格表を細かくブラッシュアップしています。「そのブランドは誰に人気なのか」を理解し、そこに最適化していくことは、顧客の囲い込みにもつながります。フードデリバリーは本質的にリピータービジネスですからね。中長期的にはこういった地道なマーケティング施策が非常に効いてきます。

──リピーターを獲得するためには、顧客とのコミュニケーションも重要だと思うのですが、そのあたりはいかがですか?
サンキューカードは、シンプルですが効果的です。お客さまへの感謝の気持ちやメニューのこだわりを記したカードが一枚入っているだけで、印象はグッとよくなります。コミュニケーションのチャネルとしては、アンケートフォームも欠かせません。私たちもお客さまの声をメニューやオペレーションに反映させるために活用しています。

競争が激化する市場で生き残るために、キッチンベースにできること

──フードデリバリー業界が抱える課題についても教えてください。

最大の課題は、競争の激化です。最初にここ数年でデリバリー市場が急拡大したとお伝えしましたが、新規参入業者の増加ペースはそれ以上でした。今後も、各地域で激しいシェアの奪い合いが予想されています。

配達員の人員確保も、大きな課題です。特にそれが顕著になるのが、悪天候のときですね。雨の日こそデリバリーを頼みたいのに、「近くに配達員がいません」と表示されてしまう。そんな経験をしたことがある人は多いはずです。

プラットフォームと配達員が結んでいる契約を考えると、致し方ない面もあるのですが、せっかくの需要を取りこぼしたままにしておくのは、あまりにももったいない。これからは天候に左右されずに安定的に商品をデリバリーする仕組みの構築が求められるようになるはずです。弊社でも、配達パートナーとの提携も視野に入れながら、解決方法を模索しています。

──そうした課題を踏まえて、キッチンベースは今後どのように事業を展開していくのでしょう?
まずは独自のプラットフォームの立ち上げを検討しています。現在も、入居店舗が一覧できるページ(https://restaurant.kitchenbase.jp/)はあるのですが、ここから直接注文ができるようになるイメージですね。キッチンベースを一つのフードコートのように見立て、そのなかをユーザーに回遊してもらうことで、各店舗のリピーター獲得に貢献できればと考えています。

食を通じて、人と人とが出会う場所をつくりたい

──キッチンベースの拠点については、いかがでしょうか? 

今後も新たな拠点を増やしていく予定です。競争が激化しているとはいえ、フードデリバリーはまだまだ「空白地帯」が少なくありません。実店舗の場合と同じく駅前などに出店が集中してしまい、本当にデリバリーを必要としている住宅地がむしろ手薄になっているのが現状です。私たちはデータを活用することで、こうした需給ギャップが発生しているエリアを絞り込み、狙い撃ちで拠点を展開しています。

その一つが、環七通り沿いにオープン予定の「キッチンベース馬込」です。車や人の往来が多いエリアなので、テイクアウトにも力を入れていきたいですね。

──テイクアウトが増えれば、顧客とのコミュニケーションのきっかけにもなりそうですね。

そうですね。ただ単に料理をつくる場所ではなく、お客さまも訪れるあたたかみのある場所になればと考えています。店舗とお客さまだけではなく、入居者同士のコミュニケーションも、さらに積極的に促していきたい。食を通じて、人と人とがつながる場所としてキッチンベースを育てていくことが、私たちの役割だと考えています。

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デリバリーキッチンとは、オンラインで注文を受けるデリバリー専用のキッチンです。KitchenBASEでは1つの空間を区画で分けて複数の店舗でキッチンをシェアするため、デリバリーキッチンと呼んでいます。

KitchenBASEでは飲食店開業のハードルをグッと下げ、デリバリーという分野からテナントオーナーの挑戦を手助けするサービスを提供しています。
テナントオーナーが同じキッチンのメンバーともコミュニケーションをとりながら、より良い環境で楽しく自分の料理づくりに打ち込めるようにサポートしていきます。

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