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1000文字SSシリーズ

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1000文字前後で書いたショートストーリーを集めました。
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#ショートストーリー

わざと空けたスペースは未来

「食器入れたダンボールってどこだっけ」
「あなた自分で食器!って大きくマジックで書いてたでしょ」
「そうだっけ」
「ほら、あれあれ」
「ああ」

引越しって、体力と気力をべらぼうに使う。夫婦ふたりだけでずうっと、小奇麗にまとまったコンパクトな2LDKの部屋に棲んでいた。例にもれず共働きです。子どもはまだ、いないけれど、いつかは欲しいと、おもっている。なので、それを見越して広い部屋に引っ越してきた、

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ひるさがり

通りすがりの外国人、しきりに道を訊ねてくるのだけれど、その言語が私には理解できません、ごめんね。バイリンガルだったらよかったのだけど。

ここに越してきてからもう三年半。社宅にも慣れて、子育ても板についてきて、ワンオペだってお手の物なんだけれど如何せん、外国人の相手だけは無理なの。言葉がね、わからないから。日本語しかわからないから。

「英会話って、どうなのかなあ」

昼下がり、またママ友たちと会

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一人になりたいヘッドフォン

「したんだ、整形」

 勉強するときにはいつも使っている近所のファストフード店の2階で、衝撃的な言葉を聞いてしまった。僕はいま大げさなかたちのヘッドフォンを両耳に装着しているけれど、実際、音楽を聴いていたりはしない。耳が圧迫される感覚が妙に落ち着いて、勉強に集中できるから着けている。今年の入試こそは失敗できないから気合の入れ方がちがう。

 ちょうど、解けない数学の問題に行き当たってしまい思考が途

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落ちる桃

「もーやだあ、あんまり変なこと言わないでよお」

 甲高く媚びるようないつもの声が聞こえてくる。七海の声だ。女子高生らしい桃色な声音、産毛がびっしり生え揃ったみずみずしい果実の表面を撫でる想像をわたしはいつもする。
 そのあとすぐに、原型がなくなるほどぐちゃり、両手でわしづかみにして台無しにさせる空想も欠かさずする。
 せっかくの甘くておいしい果実を2本の手で潰して棄てるの。そこまでしてももやもや

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 真夏なのに雪が降る夢をみた僕は、疲れてるんじゃないのと笑う恋人を横目に無視しながらいつもの濃いコーヒーを淹れる。苦い。とびっきり濃くて苦いやつをだ。そうすると一気に僕の目が覚める。頭の中にはまだあの不思議な真夏の雪の幻影がちらついていて離れてくれない、拭い去るには恋人よりも濃いコーヒーが要る。

 ねえ、とめげずに恋人が言う。
 今日どっか行くの? と不要な確認をしてくる。

 何処かへ行かない

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「はい、じゃんけん」

 チ・ヨ・コ・レ・イ・ト、と一音ずつ呟きながら栞が数段上に登っていく。その軽やかな後ろ姿を見るともなしに見ていると、彼女がまだ幼かった頃を想起する。遥か昔の思い出に浸るとき、一彦はどうしようもなく寂しくなる。

「はい、じゃんけん」

 こちらを振り返った彼女の笑顔は、まだ十分にあどけなさを残しているように思えた。まだ子供だ、そうだよ、まだ二十歳になったばかりなのに、と胸中で唱えながら、一彦は掛け

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