雷が海に落ちたね
この夏に左右社が刊行したアンソロジー『海のうた』を読んでいて気になった歌。
「雷が海に落ちたね」って変なセリフだ。
大気の不安定な海を眺めているときに雷がゴロゴロ、ピカッ!となったとしたら「雷が海に落ちたね」なんて言わないと思う。「うわっ雷!」とか「やばっ」って言うんじゃないかな。
この人たち(「わたしたち」と言っているので。)はどうしてこんなセリフを言うんだろう。
そんな荒々しい気象条件でなんで髪の毛が丁寧に「巻き上がる」のだろう。
「上」を三回も使ってなんだかアゲ↑↑↑な感じがするのも不思議だし。
わたしの解釈はこうだ。
この「わたしたち」は宇宙からやってきたスパイである。愚かな人間どもからこの美しく哀れな地球を救い出すという使命を持ってやってきた。
日本の担当の「わたしたち」は日本人がエコバッグとマイボトルと音楽で地球を救えると思っていることに絶望し、SAKANAKUN07201430に連絡。作戦決行の合図は、そう、「雷が海に落ちたら」。
かくしてその時は来た。
灰色にうねる海に、ひとすじの鋭い雷がまっすぐに落ちてきた。
空と海のあいだで大きな鍵がきらりと回されたようにも見えた。
「わたしたち」は見つめ合った。
かみなりがうみにおちたね
それは言葉ではなく、目と目の会話であり、滅びの合図なのだった。
雷の波動が海から大地に伝染してくる。
強い風がたたきつける。
「わたしたち」の長い髪は、風の動きとは全く別に、まるで生き物のようにくるくると巻きながら上昇する。星へ帰るのだ。
「わたしたち」の身体はすこしだけ浮いて、消えた。
そのもっと後に日本が消える。
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7/20(土)14:30~Eテレで『さかなのこ』が放送されるそうです。海がたくさん出てくる映画です。みんなで見ましょう。
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