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【月報2021年11月】元公僕が地域おこし始めてみた件

11月は、【ぼうさいこくたい】【誰にどうなってほしくて何を伝えるか】【大槌学園】【秋景色】の内容でお送りします。

1.ぼうさいこくたいと伝承活動

 11月6.7日と釜石のTETTOでぼうさいこくたいが開かれました。
 うちの大学院の先生方や防災関係の知り合いがたくさん釜石を訪れました。
 また、当日は防災に興味のある学生達の展示の手伝いをしました。

 地元の人はあまり見かけませんでしたが、コロナ禍で人が集まれるイベントがなんとか開催できてよかったのではないかと思います。

 そこで感じたことがあります。

 結局広義の【防災】ってなに?
と感じました。

 人によっては、お前何を言ってんねんって思うかも知れません。

 何が言いたいかと言うと、ぼうさいこくたいの展示やセッションでも、教育、避難、啓発、備蓄、情報伝達、衛生関係、報道、救助、復興、サバイバル、自然現象、ハード整備などなど沢山あり、人によってイメージする【防災】の範囲が広すぎる気がします。

 例えば以前、役所の危機管理部門にいたから、自分にとっての【防災】は、組織内や組織間の調整でした。
 これも多分、一般的なイメージとは異なるかと思います。

 まあ、そんな中でよく聞かれるのが、防災に取組まなければならない、その一方で、防災なんてやってる場合じゃないてな感じで、重要だけど実現できないことが多いようにも感じでいました。

 それを実現するためのゆとりや余裕を作ることがまず最初に必要なのではないかと思いました。

 被災地で学ぶ、防災学習などを実施する、参加するにもお金や心、時間のゆとりがあるからこそできることだと思うので、大切なのは仕事でもプライベートでも、心や物、お金、時間などのゆとりがあることが何より大切ではないかと思いました。

釜石では久しぶりの大勢の人

 ぼうさいこくたいのために、東海、四国、九州から来られた都道府県の危機管理の担当の方々に大槌を案内してお話をする機会をいただきました。

 自分自身は大槌で震災を経験した訳ではありませんので、聞いた話や、客観的事実、伝わらない思い、外で知ったことと来て知ったことのギャップ、それらを自分を通してお話をさせていただきました。

 また、自分の伝えたいことだけでも、相手が求めていることだけでもなく、相手のその先の人を見据えてお話ししました。

 なので、一般的に震災語り部と呼ばれているものではないのかも知れません。

 今まで神戸や熊本など様々な被災地の方々から聞いた話、いや、今まで積もり積もった返し切れないものを、次の誰かに託すことができたのではないかと思います。

 南海トラフ巨大地震の被害に遭う地域の方ばかりだったので、何か被災地から学ぶものはと思って来られたのかも知れません。

 しかし、こうしたら良いという答えを伝授するのではなく、そう思われているのかも知れないがこんな場合もあり得ると言ったことを返すことになったので、新たな問いを投げかけることになったのかも知れません。

 それでも、お伝えしたことを持ち帰って活かすための入り口であり、何か自分の中の新たな引き出しを開けるための鍵になればと思っています。

 また自分自身が直接の経験者ではないからこそ、気軽に質問ができ、気軽に知らないことは知りませんと答えることができたのではないかと思います。

 話を終えた後、良かったと感想をいただきました。その一言でその日の3時間分の苦労は報われたのかも知れません。

 しかし、目指すのはその場での評価ではなく、その先、聞きに来てくれた人の先にある人たちのより良い暮らしのためにつながることが大切で、それは簡単には成果として評価できないことだと思っています。

 だからこそ、過去に学ぶだけではなく、事実を知るだけではなく、さまざまな目的、相手、手段に合わせて、聞き手と対話し、行動に続けるための努力は怠らないでいようと思います。

 ということで、今後は表現力をつけることにも力を入れていこうと思っています。

 そしてこのきっかけが、聞いて終わりではなく、何かの始まりになることを期待しています。

 また、今自分が通っているの大学の院生や学部生、ほかの大学の学生さんや行政関係者にもいつか来ていただければと思っています。

最後は定番の蓬莱島

2.大槌まるごと復活まつり

 11月13日に開催された「おおつちまるごと復活まつり」に地域おこし協力隊のブースで出店を行いました。

 当日は、ジビエチームは大槌鹿の串カツ、観光チームは、静岡の焼きそばと、桃畑サーモン入りシュウマイなどの販売を行いました。

 これらの店で購入いただいた方には、鹿革キーホルダー作りの体験か、大槌の写真のハガキのプレゼントかどちらかを選んでいただきました。

 出店の品物もキーホルダー作り体験も人気で途中で売り切れ続出でした。

 また、自分は大槌で撮った写真を展示し、そのうちの5種類の写真のハガキを、他の地域おこし協力隊の店で購入した人に選んでお渡ししていました。

 配布したハガキは「蓬莱島」「大ケ口の桜」「新山高原のツツジ」「吉里吉里花火」「花道パークのゴール」の5種類でしたが、やはり「蓬莱島」のハガキが一番人気でした。
 また、ハガキにはしなかったのですが吉里吉里弁天神社のハガキが有ればよかったと言った声も結構いただきました。

 多くの方々に、大槌で撮った自分の写真を見ていただいたので、今後も大槌の町を写真で残して続けて行きたいと思いました。

 当日に展示した写真は下記のリンク先のページをご覧ください。

目立つ半纏と一緒に
奥になんかいっぱいいる
かつてない賑わい
初めて見た金澤神楽かっこよかった

3.大槌学園ふるさと科

 先日、大槌学園のふるさと科の授業に呼んでいただき、外から来た人が感じる大槌の魅力etcについて8年生(中2)と話し合ってきました。

 その中で、みんなにとって大槌の魅力って何?って逆に質問してみました。

 即答は出来ず、悩んでいました。

 聞けた答えが、荒巻鮭と郷土芸能でした。

 釜石と合わせて2年半住んでいますが、今まで荒巻鮭を食べていない自分にとって、家の庭先に荒巻鮭を吊るしているのは、実は飾りなんじゃないかって思っていました(笑)
 なんだかんだで今も食べられていることを知ることができてよかったです。

「きょーどげーのー」についてですが、今までほとんどこの単語を使ったこともなく、興味もほとんどありませんでした。
 良い悪いではなく、そう言ったものに関わることなく生きてきたので、観光地などでも敢えて見る必要はないと思っていたりもします。

 子どもたちの話を聞いて思ったのが、見る側ではなくやる側だと言うことでした。

 自分が直接参加する側だからこそ楽しいし、誇りに思えるということは、郷土芸能は見るものという固定観念による距離感からはなかなか気付かないことを教えてもらえました。

 一般的に言われる「郷土芸能」や「まつり」と大槌の人たちにとっての「郷土芸能」と や「まつり」って完全に同じものではないのではないかと思いました。

 また、子どもたちが、大槌の魅力について悩んでいる中、自分の地元の魅力について考えてみました。

 すると、正直自分の地元の魅力ってすぐに出てこないことに気付きました。
 たしかに、鉄道3本も通っていて、新幹線にもすぐ乗れて、美味しい飲み屋がたくさんあって、静かな住宅街で、たまに事件が起こって、京都でも有名なほど治安も悪くて、特にこれと言うものもなく、京都とはいえ、外部の人がイメージする京都とは違うところなのですごく言いにくいです(笑)。

 また、京都の魅力と言っても、祇園祭や清水寺とか八つ橋とか、観光ガイドのような魅力を話すのも、自分の言葉ではない気がします。
 まだ寺とかそこまで興味がないので一人では行かないですし(笑)。

 そんなこんなで久しぶりに開催されたまつりでの郷土芸能は若い世代の人たちが、自分たちの日頃の成果を披露できる貴重な場になったのではないかと思いました。

 そして、自分たちの郷土芸能があると言うことが少しうらやましくも感じました。

 子どもたちから大切なことを色々教わった一日でした。

ここでもおおちゃんがお出迎え

4.避難所設営訓練

 11月17日に大槌学園9学年が行う避難所運営訓練に地域住民として参加してきました。

 実際に避難者役の生徒が避難してくる中、避難所運営側の生徒達が、受付や案内、聞き取りなどを行いました。

 そもそも避難所運営が、100点満点になることなんてないので、失敗することもありましたが、その一方で自分達にできることを考えながら行動する生徒達もおり、貴重な実践的な体験になったのではないかと思いました。

自分も名簿記入の担当をしましたが、正直てんや わんやで結構疲れました。

 実際の災害時には脳内麻薬出まくりで疲れを感じないのかも知れませんが、訓練でそこまでのテンションになるのは難しいかも知れません。

 また、避難所運営はあくまで災害の時の対応のひとつに過ぎませんが、それを通して、考えて行動することを体験できる機会にすることができたら良いと思いました。

少しずつ変わる避難所のイメージ

5.宮城県伝承交流会

 11月21日に3.11メモリアルネットワーク主催の伝承交流会で、宮城県石巻市の大川小学校で、初めて語り部の人の話を聞きました。
 その方曰く、ここは悲劇の場所ではなく、未来を拓く場所とのことでした。

 そのとき思ったことを写真で表現せずにはいられませんでした。
 子どもたちが過ごした光景や笑い声や笑顔を想像しながらシャッターを切りました。

 そして津波の想定や、避難情報、備えなどの防災のテクニカルなことよりも、一番心に残りました。

 また、震災の出来事を誰かに伝えるとき当事者である伝える側と、聞く側の人はそもそもの経験や人生が異なるので、当然考え方にギャップがあります。
 その中で、ただ話を聴くだけでは、簡単にそのギャップを埋められないかもしれません。
 最初ここで話を聴いた時、悲しい出来事があった場所なのになぜ「未来を拓く場所」なのか?と思いました。
 そう疑問に思ったからこそ、当事者はどう思っているのか?と相手に心を寄せてみました。
 そして、現場に立ち、相手の行った校とをイメージし、それに向き合うことで、そういう人やそういう考えもあるのだと自分自身の一部にすることが出来ました。
 自分自身がそうできたことが、自分の「未来を拓く」ことに繋がるのではないかと思いました。

 そういう風に、最初は相手の言っていることが理解できなくても相手に心を寄せることで少しは理解できることもあり、そこが震災伝承やお互いの対話の入り口ではないのでしょうか?

 今後、自分が誰かに震災や、そこから何かを伝える時は相手の良き未来を願って伝えられるようになりたいし、震災伝承に関わる人全ての未来がハッピーになれるようにしていきたいです。

暖かい気持ちになれる場所になれたら

6.県政懇談会

 11月24日に、岩手県知事と地域で働く住民が意見交換をする県政懇談会に出席してきました。

 釜石、大槌の若い世代(特に外部から来た人)がメインとなった5名の参加者のうちの1人としての参加でした。

 大槌に来てまだ日も浅いので、それらを代表して何かを言えたわけではありませんが、自分がこの地域に住んで肌感覚で感じたことをお話ししました。

 こういう堅苦しい場が苦手で今の仕事をしているのですが、なんとか自分が大槌で震災伝承などに携わる上で感じたことや地域にとって大切なことを話すことができたと思っています。

久しぶりのお堅い仕事

7.震災伝承ワーキンググループ

 11月27日におしゃっちにて、大槌町震災伝承プラットフォームの3回目のワーキンググループが開催されました。

 午前中に、震災語り部(仮称)の育成と震災教育・ 研修コンテンツの開発についてのワーキンググループがあり、午後は、震災伝承の場のあり方検討WG(役場跡地・民宿あかぶ跡地)のワーキンググループがありました。

 進行を務めた午前中のワーキンググループの内容ですが、前回は基本的に伝える側である参加者の皆さんに震災などの話を伝えられる側の立場に立って考えていただきました。

 その内容から見えてきたことが「語り手の思いは簡単には伝わらない」と「経験者からの命に関わる話は伝わりやすいが、負担が重いなどの問題もある」ということでした。

 そこから考えて頂いたことは「関わる人によって伝え方は異なり」、自分自身で相手をイメージしながらどうなって欲しいと願い、何を伝えたいのか?ということでした。

 まだ、出して頂いた意見の内容は整理できていませんが、参加者の皆様が自分なりのやり方を考える機会にして頂けたのではないかと思っています。

 かなり遠回りな進め方をしていますが、経験者だからこそ出ているだろう結論はあるのかも知れませんが、末永く経験していない人に繋げられるようにスローダウンしている部分とあります。

 一方で、進める側としての課題もたくさんあるわけです。

 例えば、参加者が固定されて少ないという点です。
 第何回となってしまい続き物のようになってしまっているので、どのタイミングからでも参加できるようにするために毎回長めの振り返りになってしまう可能性はあると思います。

 わかりにくい例えかも知れませんが、テレビゲームで言うとファイナルファンタジーやドラゴンクエストはナンバリングされていますが、どの作品からもプレイできますが、キングダムハーツは順番にやらないと意味がわからなくなるので、前者のようになれば良いと考えています。

 そして、そこから来てもらえるようにすること、それは主催側だけではなく、関わる人全員の震災伝承の一部でもあると考えています。

 これからも長く続けることになる取り組みでもあるので、一つのあり方にこだわらずできることをできる範囲で試み続けて行きたいです。

 東日本大震災は自分自身は経験していませんが、この10年以上の中で多くのことは出揃っており、その中から足りないパズルのかけらを探すイメージで、それを探すのが粗探しになるのではなく、新たな光の差す道筋となるように考えてもらえるように自分1人ではなく多くの方々と一緒に同じ歩幅で進めて行くのが自分の役割の一つではないかと考えています。

 また、大槌での伝承を考える場が自分にとっての他の災害などから学んだものを伝える場でもありますので、自分自身の中でも相手によって異なる伝え方の中で、誰にも何を伝えたいのかを考えながら取り組んでいます。
 なので、参加者全員に確実に伝わる話ができるとは限らないのはご了承ください。

8.多くの人に三陸での学びを提供

 月末には、沿岸被災三県で震災伝承などに関わる方や、人材育成に関わる方々に岩手県沿岸での震災からの学びを体験していただく過程で大槌にもおいでいただきました。

 詳細は割愛しますが、個人的にとても印象に残ったのは、被災地で聞く震災やそれに関する話を聞いて、人それぞれの学びはあるとは思うのですが、短いスケジュールで詰め込み過ぎると、聞き手が消化できず、精神的に疲労が溜まってしまうと言うことでした。
 だからこそ、話を聞いたあとは、何も考えない時間、身体を思いっきり動かす時間、思いっきり笑える時間、思っていることを吐き出す時間などが必要で、そのアフターフォローも含めての学びのコンテンツがあれば良いのにと思いました。

9.今月の大槌

 景色が秋に色づいてきたかと思えば気がつけば冬でした。

大槌から見た11月19日の月食
新山高原のススキと風車
新山高原に向かう道の紅葉
おしゃっちに架かるダブルレインボー

10.おわりに

 これから、仕事で写真撮影も同時に進めていきます。
 今しかないかけがえのない大槌の一瞬を残して行きたいと思います。

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