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のらねこ旅日記≪さよなら海外≫

  私と友人Aが海外に行かなくなったきっかけがあります。
それは、最後のモルディブ旅行の帰りでの出来事でした。
今までは、旅行代理店の現地駐在員さんが出国手続きなど、いろいろとやってくれていたのですが、9.11以降空港のセキュリティが厳しくなり、あんな小さなモルディブ空港でさえも、乗客以外は立ち入り禁止になりました。
  空港入り口で駐在員さんと別れて
「なんか、世知辛いよね」などと話ながら、私たちは出国手続きをして、荷物を預けました。
  当時モルディブへのルートは、スリランカ経由、マレーシア経由、シンガポール経由があって、私たちは毎日運行しているシンガポール経由を利用していました。
  成田に到着して、荷物を取った時、
Aのスーツケースがなんか妙なことになっていました。
スーツケースの取っ手に巻き付けてあるクレームタグがスーツケース内に挟まっていたのです。
つまりタグが付いてから誰かがスーツケースを開け、タグを挟んだまま閉じたようでした。
  荷物を受け取ると、Aはその場でスーツケースを確認し始めました。
彼女のスーツケースは、ダイヤルと鍵のダブルロックですが、ちゃんとバラバラに回しておいたはずのダイヤルの番号は、きっちりと合っていました。
鍵はかかっていたので開けてみると、中の荷物が少し乱れていました。
  衣類の下に入れておいた、免許証入りのパスケースが上に出ていて、その中に入れていた、現金2万円がなくなっていました。
  たぶんモルディブか乗り換えのシンガポールで盗られたのでしょう。
「免許証が無事でよかった~」とAが言いました。
その後私たちは場所を変えて、今度は何か変なものを入れられていないか、と入念にスーツケースの中身を調べました。
知らぬ間に運び屋にされてしまうケースもあるからです。
  幸い、2万円がなくなっただけで、他は大丈夫でしたが
「やっぱり、海外ってこわいね」と、
悲しい気分になりました。
  それ以降、A は
『長距離移動は面倒だし、色々とリスクがあるから』と海外旅行に興味を示さなくなりました。
  一方、私は『個人的に行きたい所は、1人で行こう』と、何度か計画をたてたのですが、何故かことごとくポシャりました。
  例えば、オーロラが見たくて、カナダのイエローナイフ旅行に申し込みましたが、出発日が近くなった頃、SARS(重症急性呼吸器症候群)が世界を騒がせることとなり、バンクーバーで感染者が出たと報道がありました。
バンクーバーは乗り換えで立ち寄るだけでしたが、周囲の反対と、病院勤務ということもあって、旅行をキャンセルしました。
  その後も長期休暇が取れないからと、選んだパリ弾丸ツアーが最少遂行人数が集まらず中止になったり、上海ツアーが反日デモの激化で中止になったり、台湾で大きな地震があったりしました。
  そのうち管理職になって仕事も更に忙しくなり、気がついたらパスポートの期限が切れていました。
『これもなにかの縁で、今は海外とは縁が切れているのかな』と思いました。
  昨年定年退職して、とりあえず自由になる時間が増えました。
  なので体力があるうちに、また海外に行きたいと思っています。
  特にオーロラは諦めていません。
後は、現在の円安がもうちょっとなんとかなって欲しいなと…。



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