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【連載】独裁者の統治する海辺の町にて

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過疎の漁師町がある政治結社組織に統治された。否応なく組織に組み込まれた中橋康雄は少女凛子と組んで親友の神学者登坂士郎を殺害する。組織の統治支配の恐怖のなかで康雄と凛子はどうなるの…
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2023年3月の記事一覧

独裁者の統治する海辺の町にて(12)

独裁者の統治する海辺の町にて(12)

「見せてみろ」
平良主席は執務室に入ってくると大きなエグゼクティブ机に豊満な尻を乗せ足を組んだ。
おれは、携帯を渡した。
「6月の東京行きの時に会ってるな」
湯上がりの麝香(じゃこう)の匂いでおれは目まいがしそうになった。
「安倉次席秘書とは意外でした」
「まあな で 九鬼には伝えたか」
「伝えるわけがありません」
安倉は九鬼直属の秘書官だ。そして、アサシン養成所の教官でもあり、なおかつ、九鬼の愛

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独裁者の統治する海辺の町にて(11)

独裁者の統治する海辺の町にて(11)

太田清吾は反町長派のリーダー的存在だった。といってもその派閥は3人だけだ。そいつらも太田が殺されると、競って町長派になった。
「いやらしいおじさんだったわ」
太田は自邸の寝室のベッドで裸のまま仰向けで死んでいた。絨毯にはワイングラスが横たわり、こいつも血を流していた。
「聞く?」凛子はあどけない仕草で誘った。おれは無視して、先を急いだ。
「それから門倉か?」
「だーれ、それ」
「津守岳(つもりだけ

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