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2021年7月

355.夢野久作ドグラマグラ幻戯 (東雅夫・編/学研M文庫)

伝説のドグラマグラ解説書「ドグラマグラ幻戯」もまた奇書なのだ

瓶詰め地獄など短編/小説草稿/映画版脚本はまだ序の口。謎人物・狩々博士による文体模写混じりのエモ解説、呉一郎のモデル?による精神医学奇書「磯辺偶渉」までカオス渦巻く850頁

古書市場でも人気の一冊。東雅夫最良の仕事なのだ〜


356.赤い納屋の殺人 (※モイス・ホール・ミュージアム所蔵)

たまにはガチの!人皮装丁本「赤い納屋の殺人」はご存じなのだ?

身重のマリアを疎んだコーダーは彼女を騙し納屋で殺害。その後別の女と暮らしてた所を逮捕される

コーダーの絞首刑は多くの見物客を集め、皮は公判記録の表紙にされ、デスマスクと共に博物館入りしたのだ。人とマスのそういうとこ……


357.植物忌 (星野智幸/朝日新聞出版)

「植物忌」面白かったのだ!

想像力で繁殖変体可能になった人類、身体から草花を生やす新ファッション・スキンプランツ、植物転換手術、反乱植物鎮圧戦、崩壊する言語…

奇想天外な着想がみずみずしい言葉で調理される様は、まるで文学meets奇想SF!コロナ禍に呼応する箇所も。いま刺さる本なのだ〜

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358.ナペルス枢機卿 (グスタフ・マイリンク/国書刊行会)

「ナペルス枢機卿」は薄くて良い本グランプリに推したいのだ

"時間-蛭"と呼ばれる超現実レポート、トリカブトを巡る宗教的呪縛、月を巡る奇妙な議論…

僅か100頁/3本の短編集ながら目眩がするほどの魔術的幻視!昏い厭世を通低音に、神秘の濃霧がたち込めるのだ。
タロット状の装丁も最高なのだ〜!

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359.堕天使拷問刑 (飛鳥部勝則/早川書房)

幻のミステリ「堕天使拷問刑」を復刊してなのだ……

憑物に纏わる儀式が息づく田舎町の首なし殺人。背後に蠢く悪魔、創世記戦争、逆さのバベル、変態和尚、人喰いカニ女、そして天使

異形の筆致が冴えるリアリティレベル不明の伝奇ホラーは、本格トリックを経てラスト一行で極上の青春小説へ!大傑作!

クールにロシュフコーを引用する主人公(中学一年生)、急に挿入されるおすすめモダンホラー小説リストなど歪つ過ぎるのだが、異常な作品世界を固める結界のように作用してるのだ…

諸星、ひぐらし、ANOTHER、レイジングループに並ぶカタルシス。飛鳥部先生復活の今こそ復刊を……(末端価格18000円)


360.回螺 (安倍吉俊/ワニマガジン社)

若き安倍吉俊が描いた伝説の同人誌群が「回螺」に纏められているのだ

自転が止まりつつある死の世界を舞台に、血と意識と人形と食人を巡るダークSF

全コマ絵画の如き完成度でありながらどこか自動生成的な物語は、作画による思考実験のよう!旧き街や自己複製…灰羽やlainに連なる因子も注目なのだ〜

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361.地図集 (董啓章/河出書房新社)

中国SFが人気だが、香港ボルヘス「地図集」も至宝なのだ

地図は小説である──古地図から浮かび上がるのは虚実ないまぜの架空都市香港。砂糖工場、思い出の貯蔵、過去へ遡る列車、奇妙なゲーム理論

考古学のセピア色に遊び心をたっぷり溶かした大陸幻想濃霧は唯一無二の迷子感覚!併録作も佳いのだ〜


362.abさんご (黒田夏子/文藝春秋)

芥川賞の季節は最高齢75歳の受賞作「abさんご」を読むのだ

横書き&過剰な平仮名、人称名詞が曖昧な異形の文体に目を奪われるが──呪文のような物語から去来するのは、心の片隅に置き忘れてしまったものたちの、胸を締めつける色や匂い

磨りガラス越しに見る夢の世界。日本語のちから再発見なのだ〜

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363.魚社会 (panpaya/楽園コミックス)

みんな大好きpanpanya最新刊「魚社会」が入荷してるのだ!

ガロ系を思わせる郷愁の街並みに、ぽっかり空いた穴のような少女……唯一無二の世界が、日常エッセイから幻想風景までをぼんやりと包む──

今回は著者が追い求めた幻の菓子パン「カステラ風蒸しケーキ」の話が多くて美味しそうなのだ〜(^^)

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