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【読書】「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには」

教育業界で働いていて教える立場にいる以上、自分自身が学び続けることが大事です。
その中で教育に関する本を読んで定期的に自分自身の教育のあり方をアップデートしていくことも必要になります。

最近読んですごく良かった教育に関する本が「「教える」ということ」。
数々の本を出版し、ライフネット生命の経営者として活躍、その後立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を勤めている出口治明さんの教育論についての本です。
出口さんがライフネット生命の経営者になったのは還暦になってから。
そしてAPUの学長になったのはその10年後なので、なんと70歳。
膨大な数の本を読み、多くの経験を積んだ出口さんの教育論は非常に説得力のあるものでした。

自分で考える力のある人を育てるにはどうすれば良いか。
型破りな生徒を育てるにはどうすれば良いか。
勉強を好きな子を育てるにはどうすれば良いか。
このように、教育という分野は明確な答えのない問いにあふれていますが、その中で多くのヒントを得ることができる本になっていると思います。

教育の分野というと学校で生徒に教える立場にいる人だと考えがちですが、自立していない子供がいる親は子育てをしますし、会社で部下や後輩がいる社会人も人を育てる立場にいます。
誰かを育てるという立場にあるなら教育に関わっていると言えるでしょう。

第1章では「国家」「政府」「選挙」「税金」「社会保障」「お金」「情報の真偽」という社会を生き抜くための7つの武器についてわかりやすく解説してくれています。
政治や社会保障の分野は私もあまり詳しくない部分が多いので、改めて勉強になったことが多くありました。
確かに、学生の時、社会に出る前に社会の仕組みや社会で通用する武器を教えておくことはすごく重要に感じます。

私はIT業界における教育をしていますが、大学生に対してIT業界の話をすると、IT業界で働いたことがない学生が待つIT業界のイメージと実際のIT業界の仕事内容はかなりギャップがあるように感じます。
学生自身が自分で調べる力をつけることも重要だとは思いますが、やはりリアルな経験が伴っていないと理解できることにも限界があります。
実際に社会に出て色々な経験をしてきた大人たちが、これから社会に出る学生に対して生きていく術を教えることは意外と重要なのかもしれません。
そのためにも、人を育てる立場にある人間は多くの経験と勉強を積み重ねていく必要があるのだと改めて認識しました。

他にも、科学的根拠に基づいた教育のあり方。
尖った人を生み出すための高等教育のあり方。
社会人の教育のあり方。
など、様々な視点から見た今の日本の教育の課題と、理想的な教育のあり方について書かれています。

各章の終わりでは3名の方との特別対談も載っています。
世界で活躍する人を育てる中学・高校教育のあり方、動物界の教育、言語教育のあり方、教育格差など、これまた様々な角度から見た教育のテーマで対談しています。

教育の現場に携わっている人は是非一読してみてください。

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以下はこの本を読んでの個人的な読書メモです。

・自分で考えることができる子供を育てる
→子供が何かおねだり、お願いをしてきたときに「なんで?」「どうして?」と理由を尋ねる習慣を作る。

・考える力の重要性
インターネットがなかった頃は調べ物をするにも図書館にいく必要があった。その時は知識も重宝されたが、ネットですぐに検索することができる現代においては、考える力の差が教養の差になる。

・好奇心のピーク
ある研究によると好奇心のピークは18〜19歳。
この時に学習習慣を身に付けておくと、大人になってからも学び続けるらしい。

・大人にできること
大人にできることは、広い世界を見えること、自分がロールモデルになること、知識の一部をわかりやすく教えること。
それくらいしかできない。

・好きこそものの上手なれ
興味がない人に対して教える方法はない。
逆に言えば、興味を持ったことを興味を持った時に教えるのが一番効果的。

・勉強する理由
選択肢が増える。生涯収入が増える。

・オンライン教育
教師に対する個人的な尊敬感情がモチベーションに関わっている。
教師に畏怖の念を懐く学生ほど、モチベーションが上がっていた。
オンラインでは畏怖の念を感じにくい。
オンライン学習が続きにくいのは、生徒同士の競い合い、励まし合い、議論する環境がないのが一つの要因。

・一生学び続ける人が高学歴な人。

・学びの理想
10年働いたら、その後数ヶ月〜1年ほど大学や大学院で学んで、また社会に戻ってくる。そういう社会環境を作ることが重要。

・人間は「人」「本」「旅(現場)」からしか学べない。

・本を読ませる仕組みを作る


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