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好奇心旺盛な素人を大切にしたい

講師という職業をしていると、教えている中でいろいろな質問を受けます。
自分の専門分野を教えているので大抵のことは答えられますが、中には自分が知らないことを質問されてすぐに答えられないこともあります。

時折、今まで全く気にしたこともなかったことを質問されて、ハッとさせられることもあります。
そういう質問をする人の特徴は、好奇心旺盛で真面目に頑張っていて、それでいてその分野において素人、つまり知識がほとんどない人である場合が多いです。
私の場合はIT技術を教えていますが、ハッとさせられる質問をする人はITの知識がほとんどなく、しかし好奇心が強い真面目な人が多いです。

最近も質問されてハッとさせれることがありました。
コンピュータのハードウェアについての講義をしていた時。
CPUの説明で、IntelのCPUには「Core i3」「Core i5」「Core i7」などの種類があり、、、という話をしました。
そこで「なんで数字が奇数しかないんですか?」という質問を受けました。

今までそんなことは考えたことがなかったし、気にしたこともありませんでした。
なのでその場で答えることができませんでした。
(あとで調べてみましたが結局答えはわかりませんでした。誰か教えて。。)
その質問をした子は他にもいくつか質問をくれたのですが、私が今まで気にしたこともなかった内容ばかりだったので、内心少し焦りつつも、すごい貴重な人材だな、と思って少し感動しました。

コンサルタントという職業は、結果を出すためにクライアントの業務をあえて知りすぎないようにしている、と昔何かの本で読みました。
知識が増えるとバイアスがかかり、大胆な発想が出なくなってしまうのだそうです。
なので、クライアントが思いつかないような戦略や発想を生むために、あえて知識を増やさないようにしているのだとか。

その考えはよく理解できます。
私は今までIT分野に関わってきたので、IT関連の知識はそれなりに豊富だと思います。
でも、だからこそ、新しい知識を学ぶ時、あるいは新しく何かを開発する時、「これはこういうもんだ」と細かいことに疑問を抱かずに受け入れていることが多くあるでしょう。
逆に、ITの知識に乏しい人の方が、知識がある人なら当たり前にスルーしてしまうようなことにも疑問を抱くことができるのでしょう。

とは言っても、素人が全員些細なことに疑問を抱けるわけではありません。
素人の中でもこのようなハッとさせられる質問ができる人は非常にまれで、ある種のセンスがある人だけです。
このような人たちにどうやって育てていくかはすごく悩みます。
好奇心が強い分、自分が知っていることをたくさん教えたくなりますが、知識が増えることでその人が持っている独自の着眼点が失われるのではないかという懸念も感じてしまいます。

こういう人は就職した後にも企業で大きく活躍していくような気がします。
特にビジネスの変革期である昨今、多くの人が気にせずスルーしてしまうことに疑問を持って質問を投げかける人はすごく大きな力があるような気がします。
私がもし企業の人事で採用担当だとしてら、こういう人材の人が欲しいと感じました。

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この記事を書いていてふと思ったことがあります。
それは、このテーマについては小学生の先生はすごく大変なのかもしれないということ。

小学生というは、大人に比べると好奇心旺盛で、それでいて圧倒的に知識が少ない。
言わば「好奇心旺盛な素人」のプロです。
(素人のプロとはおかしな表現ですが)
そんなプロ集団に対していろんな教科を教えていれば、先生が今まで気にもしていなかったことを質問されることはたくさんありそうです。
先生が答えられない質問をたくさんする生徒はすごく未来有望な生徒だと思うのですが、それは先生からすれば扱いに困る生徒でもあるでしょう。

大人の常識を押し付ければ、それは生徒の才能を潰すことになるでしょう。
かと言って何も答えられないことが続けば先生の立場も微妙になってくる。
教育の分野は考えれば考えるほど難しく、答えがない世界だと痛感します。

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