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【112】かつてまんまと詐欺に遭った話

ご訪問頂き誠にありがとうございます。

マインドフルネスの学習中ではありますが、本日は私がかつてまんまと詐欺に遭ってしまった語るも恥ずかしいお話です。


事件発生は平日午後の昼下がり


あれはまだ大学生だった頃、学業にバイトに勤しんでいた頃のことです。
その日の講義が全て終わり、当時一人暮らししていた自宅でくつろいでいた時のことです。

ピンポーンとチャイムの音が鳴ります。
インターホン越しに腰の低そうな茶髪の若者が立っていました。

「何ですか?」

と尋ねると若者が

「ちょっと色々とこの辺り周らせてもらってましてちょっとお話よろしいでしょうか」

というので、私は「はぁ(また押し売りか)」とだけ答える。
若者が見せたいものがあるというので、仕方なく玄関越しに話を聴く私。

「最新の完全抗菌羽毛布団なんですが……」
「いらないです」

即答しました。この時点で既に「はいはい、押し売りでしょ」と頭ではわかっていたからです。
それでも、誰であろうと礼節が大事だと思っていた私は、この若者の話を一通り聞いてやって丁重にお帰り頂こうとしたのでした。

これがそもそもの間違いでした。

「少しだけでもお話を」
「いや、いいです」

こんなやり取りをしている中で、私の耳に一つのキーワードが引っかかってしまったのです。

「この羽毛布団でアトピーがよくなったという実績があるんです」
「アトピーが治る??」
「そうなんです。ちょっと資料があるので見ませんか?」

ドアを開けてしまうアホな私。若者はホッとしたように

「では失礼します」

と部屋の中へ入ってきました。それっぽい新聞記事や資料をペラペラとめくりながら、いかに皮膚病に効くかを説明していきます。私はこの効果についてこの時点で疑いを持たなかったのです。

「すごいですね!アトピーが治るなんて夢みたいです」
「ですよね。今なら不要な布団も全て引き取りますよ」

この羽毛布団があればアトピーにも効いて、年代物の布団を引き取ってもらって新調できる。そう思ってしまいました。
まずは実物を見てみたいなと思ってしまったのです。

「じゃあ、実際のものがあるんで持ってきますよ」

ヤバい男が入ってくる



若者は一旦外へ出ると再び戻ってきましたが、その後ろから明らかに様子のおかしい人物が一緒に入ってきました。
大柄でガタイが良く、黒いスーツにシルバーのネクタイをしている。金髪で目つきが気質のそれではない様子。
30代前半くらいか。首から金のネックレスをぶら下げていて、明らかにやばそうな人物です。


「私、こいつの上司です。布団買ってくれるというんで持ってきました」

羽毛布団を広げて一通り説明する強面の上司(?)。

「それでおいくらなんですか?」

と尋ねると

「80万です」

とさらっと言う。

「あ、学生の身分なのでそんなに高いもの買えません。すみません」

というと上司(?)の表情が一変。

「あぁ?それじゃあれですか。おたくは散々こっちに説明させておいて、はい無理ですっていうんか。こっちの部下も一生懸命説明させてもらって時間も使って、それをおたくは無駄にするっていうんですかね!ひやかしか!ふざけんなよ!」

勝手に説明しておいて何だと思いましたが、1Rにヤバそうな男二人を上がらせてしまって退路はなし。
下手なことをすれば今にも胸倉掴まれそうな勢い。

「い、いや、ほしいのはやまやまですけど、私お金ないんですよ。もっと安いと思ったら想像以上にお高かったんで」
「はぁ?高級羽毛布団の相場くらい知らんのか。知ってて話聞いとったんじゃないんか!」

上司と名乗る男の凄みが増してくる。私は思わず。

「ですから、学生でお金ないんですからしょうがないじゃないですか」

と言うと、男は

「じゃあ、いくらなら出せるんだ!」

と顔を近づけてくる。タバコだか何だかとにかく臭い。

適当に言って追い返し、その間に警察を呼ぼうと思い、

「とりあえず、10万なら……」

と言うと男は「まぁ特別にいいですよ。10万までまけちゃいますよ。ただすぐに払ってくださいね」と笑顔で言う。
当然だが目は笑っていない。

すると若者が笑顔で

「布団どれですか、引取処分しますよ」

「これです」と年代ものの布団を渡す。

「とりあえずそんな現金ないんでおろしてこないと」と伝えると

「じゃあ、おろしにいきましょう」

となった。これで一旦追い返してチャンスを作ろう。そう思ってふっと肩を撫で下ろします。

「じゃあ、現金用意してきます」

と言って一旦外へ出て自転車にまたがった瞬間です。
荷台に茶髪の若者が乗ってきたのです。

「はい?」
「いや、俺もついていきますよ」
「いや、いいです」

とやっていたら、上司の男がまたすごんでくる。

「こいつも連れてって下さいよ。こっちも時間ないんでそこでもらいますって!」

若者は上司に引き取り処分用の布団を渡すと、荷台に乗って「じゃあ、行きましょう」と笑顔を見せてくる。

結局、ニケツでコンビニまでついてきて、こちらが現金を下ろすのを外で待っています。
監視カメラを気にしているのか、店内には入ってこない。

その時私の脳はパニックなどで萎縮してしまっていたのか正常な判断ができていなかったのでしょう。今思えば、ここで警察を呼ぶべきでした。

もしくはバイトで稼いだ10万でアトピーに効く布団が本当に手に入ると思っていたのか。

10万をその若者に渡すと、「ありがとうございました。後日布団をお送りしますんで」と言って去って行きました。
ここで領収書も何もない時点でアウトですが、世間知らずの当時の私には気付く由もありません。

その日はそれでことなきを得ましたが、当然その後布団が送られてくることはありませんでした。

さらに自宅から少し離れたゴミ回収場に「回収できません」のシールの貼られた「引き取り処分」されたはずの布団が捨ててありました。

高い勉強料


警察に被害届を出しましたが、「勉強料だね」などと言われて半笑いされる始末。
「いや、あんたらの仕事でしょうが!」と言ったところで「騙される方が悪い」という状況なのはよくわかっています。

本当に情けないやら悔しいやらその時は本当にしばらく立ち直れなかったのを覚えています。

ところてん式に記憶がなくなっていく私が、何十年も前のことをこれだけ詳細に覚えているのですから、どれほどショックだったかがわかりますね……

今思えば、警察を呼ぶタイミングはいくらでもあったと思います。しかし、どこかで本当にアトピーが治る布団が手に入ると信じていたのでしょう。

本当に高い勉強料になったと当時は悔しくて悔しくてたまりませんでした。何よりこんな手に引っかかった自分が腹立たしかったのです。

しかし、今では10万で得たものは多かったと思います。

🔸 やはり訪問販売は即断ることが吉と悟る

🔸 信用ならない輩もいるのだと悟る

🔸 礼節は相手を見てから尽くすべし

🔸 不用意に家に上げてしまったことが大失敗。相手が相手だっただけに怪我しなかっただけマシだった。

そして得たものはこれだけではありません。



詐欺被害と引き換えに得た最大のもの



そもそも何で「アトピーに効く布団」が欲しかったのかというと、当時お付き合いしていた彼女がアトピーで悩んでいたからでした。

自身も幼少期にアトピー苦しんだ経験があるので、他人事ではなかったのです。

 結局騙されたものの、その彼女から絶対の信頼を獲得し、さらにその親御さんからもお礼を言われました。詐欺に遭ったものの、この優しさに救われたのです。
 
 学業の合間にバイトでコツコツ貯めたお金でしたので、当時の私にとっては今以上に10万円は大金でした。

しかし、その信頼が結婚後も続いているので、10万で得たものはそれ以上に大きかったわけです。

このようにショックな出来事の多くは、後から思い返してみると、あの経験があったからこそ今があると思えることが多いのではないでしょうか。

ネガティブな出来事は、ショックと気づきを与えてくれるものかもしれません。

ただ嫌だ!と否定するだけはなく、ここに何かのメッセージが隠されているのかと、よく観察することも必要ですね。

そして、何年経っても心に刺さっている出来事というのは、自分が強くなった証かもしれません。


ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。
いつもご訪問頂き、またスキやフォロー頂けることに感謝致します。


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向日葵畑の向こう側


「創作大賞2023」ファンタジー小説部門応募作品です。全編約50000字程度の短編小説となっております。


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