B級映画、どう選ぶ?vol.2 これは”海のゼロ・グラビティ”だ!と声を大にしていいたい「ロスト・バケーション」について
B級映画の代表格はやっぱりワニとサメ、ということで、サメ物の傑作と思っている映画をご紹介します。刻々と潮が満ちて沈みゆく岩礁、回遊するサメ、浜まで200m、というシチュエーションスリラーです。
これは、海の"ゼロ・グラビティ"だ!
「たかがサメ映画でしょ」と侮るなかれ、これは宇宙空間からの生還を目指すSF映画の傑作、「ゼロ・グラビティ」にも比肩すると思うのです。この映画は、極限状況に置かれたことで生き延びる理由が明確になり、生きることに目覚める海のゼロ・グラビティだ!と声を大にして言いたい!
偶然は助けてくれない
時間とともに足場は海中に沈み、その分だけサメのテリトリーが広くなる。時間はわずか、道具は無し。この絶望的な状況を切り抜けるために必要なのは・・・観察!観察!とにかく観察!よく見て考えろ!智は力なり!残された武器は不屈の心と、まだ動くその身体だ!というムチのような言葉が聞こえてきそうなほどのド直球ぶり。そう、偶然は助けてくれないのです。
これは仕事とまったく同じ
よく観察、よく考え、決断する。限られた手札でいかに状況を切り抜けるか、好転させるか、これはもう仕事と同じです。シンプルで当たり前とも思えることがB級映画で徹底して行われることが新鮮でした。B級映画の登場人物はだいたいいいかげんで、都合のよいことを期待しがちですから。
なるほど、「エスター」の監督か
冒頭は色彩豊かなサーフィンシーンで始まり、岩礁に取り残されてからはトーンを抑えた青と黒の重密な映像に転換。この画面の温度変化によって同じ場所なのに全く違う印象を抱かせ、観客を退屈させません。
サメの造形も極上級だし、スリルの練り上げも上手だなぁ、と思ったら、本作は「エスター」の監督によるものでした。エスターもスリル満点で面白かったもんなぁ、とものすごく腑におちた"海のゼロ・グラビティ"ぜひどうぞ。
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