タカシクエスト 木村ヒゲ丸物語
「木村ヒゲ丸VSヨドバシ野郎」
ドリブルで上がる。
シュート。
キーパー弾いた。
木村ヒゲ、シュート!
ゴール!!
木村ヒゲ寿!!
ヒゲが日本を初のワールドカップに導いた。
「兄ちゃんやったな、ワールドカップだ」
「おう、ヒゲ丸も頑張れよ」
俺の名前は、木村ヒゲ丸。
兄貴は有名なサッカー選手だ。
しかし、俺はサッカーが下手だ。
そして、兄貴が上手ければ弟も上手いという先入観から、度々同僚に草サッカーに誘われて醜態を晒すのがお決まりのパターンだ。
俺は、こんな日常に嫌気が差し、仕事を辞めて路上生活を送るようになった。
路上生活を送っているからといって働いていない訳ではない。
朝から晩まで空き缶や段ボールを集めて小銭を稼いだり、自分の体を流れる液体をヤバい人に売ったりしている。
正直、仕事的にはこっちの方がきつい。
でも、煩わしい人間関係に悩むこともない。
だから、こちらの生活の方が充実した毎日を送れた。
ある日、公園でいつものように空き缶を集めていると、スーツを着た男が話し掛けてきた。
「君、臭いねー。凄いよ、尊敬しちゃう。それで、どう、テレビに出てみない?」
俺は、スーツの男の言葉の意味が分からなかった。
「まあ、これを飲みながら話そう」
男は、焼酎のボトルを片手にしていた。
そして、紙コップに焼酎を注ぎ、俺の前に置いた。
その後、俺と男は焼酎を飲みながら、語り合った。
なんでも男は、テレビ局の関係者で、今度放送される「テレビピョンピョン全国臭い人選手権」のメンバーとして俺をスカウトしたのだ。
俺は、自分では気付かなかったが、相当な異臭を放っていたみたいだ。
テレビ局の男は、君なら優勝できると断言していた。
俺は、男の言葉を聞いて闘士に満ち溢れた。
兄貴は、サッカーで日本一になった。
だから俺は、臭い人で日本一になってやると決意した。
そして俺は、「テレビピョンピョン全国臭い人選手権」に出場した。
「テレビピョンピョン全国臭い人選手権」
決勝に残ったのは、次の2名。
船橋市○○○から来たヨドバシ野郎。
対するは、上野公園で長年ホームレスをしている木村ヒゲ丸。
決勝のルールはこちら。
一時間新宿の街を歩き、臭さで通行人が驚愕した人数を争う。
決勝戦スタート。
木村ヒゲ丸が異臭を放ちながら新宿の街を歩いた。
アナウンサー「おーと、臭いぞー。通行人が一斉に顔をしかめる。1人、2人…」
木村ヒゲ丸「へへっ、優勝はいただきじゃねーか」
アナウンサー「木村ヒゲ丸さん、記録は5860人」
続いて、ヨドバシ野郎の挑戦。
ヨドバシ野郎「俺、臭くねーよ」
アナウンサー「おっと、通行人がヨドバシ野郎の臭さに耐えられず失神だ。ドミノ倒しのように倒れていく。これはすごい記録が出るぞ」
アナウンサー「終了~。記録は、1億2千万人。何と、日本人全員が、ヨドバシ野郎を臭いと思った。優勝は、ヨドバシ野郎さーん」
ヨドバシ野郎「俺、臭くねーよ」
田中○剛「優勝したヨドバシ野郎さんにスタジオに来て頂きましたー」
観客「キャー。オエッ。ゲロゲロゲー」
田中○剛「いやー、臭いねー」
松本○子「なんでこんなに臭いのー?」
ヨドバシ野郎「俺、臭くねーよ」
田中○剛「それじゃあヨドバシ野郎さん、優勝したお気持ちをカメラの前でお伝え下さい」
ヨドバシ野郎「俺、臭くねーよ」
こうしてヨドバシ野郎は、精神病院に強制入院が決まった。
俺が優勝すると思ったのに…。
ヒゲ丸は、まさかの敗北に肩を落とした。
そして、世の中そううまく行くわけではないことを痛感した。
思えば、サッカー選手として頂点を極めた兄貴も挫折していた。
兄貴は、40歳の時、南極で開催されたワールドカップで、メンバー落ちした。
当時、監督を務めていたイジリー山田は、ワールドカップ直前に代表から外れる3名を発表した。
市山、北村、ヒゲ木村ヒゲ。
この瞬間、日本中が凍り付いた。
ヒゲは、年齢的な衰えが著しく、直前の試合でのパフォーマンスには微妙なものがあった。
しかし、過去の実績から、代表に選ばれるのは当然だと考えられていた。
だが、イジリー山田の口から、無惨な結果が発表された。
イジリー山田も苦渋の決断だったのだろう。
ストレスが原因か、舌をペロペロさせている。
その後、兄貴は、ショックのあまり姿を消した。
しかし、20年後、兄貴は突然メディアの前に姿を現した。
そして、今まで山で修行をしていたことを明かした。
何でも年齢的な衰えをメンタルでカバーしようと、毎日滝に打たれたり、熊と戦っていたそうだ。
兄貴は、20年前とは別人のようにたくましくなっていた。
そして、火星で開催されるワールドカップのメンバーが、イビチャ・タカシ監督から発表された。
オラに力(お金)を分けてくれ~。