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「ごめんなさい」の単語を覚えてこなかった上に調べてみたら発音が難しかった

12月25日昼から夜

モンパルナス駅でTGVを待つ。発着するホームは直前まで発表されない。寿司を売ってる売店を見つける。店員さんに挨拶されたので買う。プラスチックの醤油皿まで付いてくる。四等分したどら焼きをパック並べて赤いソースをつけたDURAYAKIなるデザートがある。ネタとして買おうかと思ったが止める。オリジナルの手掴みでかぶりついた方が食べやすいのでは? 寿司を食べている間も気になる。

本当に直前まで発表されない。慌てて係員に尋ねて案内された電車は、事前にネットで予約した電車とは違うと、席が見つからなくて助けを求めたバー車両のバーテンとそこに居合わせた乗客に告げられる。
「同じ電車ではありませんが、ナントには行きます」
と、乗客の女性が翻訳アプリで教えてくれる。私の翻訳アプリは、オフラインでも使える設定にし忘れていたので、フランス語で「ごめんなさい」が言えなかった。それどころか動揺したせいで英語でも言えなかった。ホテルでWi-Fi繋いだら真っ先に調べよう。電車が走っている間、忘れないように反芻した。

ナント駅着。すっかり夜。ホテルまで徒歩で20分ほど。紙に印刷した地図を見ながら、石畳が凸凹の裏通りに入る。祭日だから小売店は閉まっていて静かすぎる。飲食店はまだ無い。ホテルかアパートのみ。辺りに人は歩いているが、すれ違うのは街灯も点いていない道で一人か、犬をつれている人。スーツケースのキャスターが壊れないか心配。だが怖いところは速く通り過ぎるに限る。

閉店しているデパートを通過。ショーウィンドウで蜂の縫いぐるみ達が動いている。この辺は道も広くなり、多少明るい。通りを見上げれば、建物と建物を渡した電飾が光っている。遠くから音楽が聞こえる。おそらく遠くに広場がある。

デパートの入り口にたむろしている人達が立ち上がり、こちらに向かってくるような気がして早足になる。キャスターが軋む。地図の皺を伸ばしながら目印の店名などを探す。
「May I help you?」
振り替えると眼鏡をかけた女性と年配の男性。何処に行くの? と訊かれたので地図を示す。

その二人がホテルまで案内してくれた。私は無事にホテルに着くまで疑っていた。さっき起こした錯覚による動揺が続いていたからだ。彼女は翻訳アプリを使って、自分の名前と、自分がナントの学生であることを教えてくれた。そんなに怖がっているように見えたのかな。一緒にいるのは父親かな。と、二人に恐る恐る付いていきながら思った。

ホテルに着いてから「ごめんなさい」というフランス語を調べた。翻訳アプリで訳したやつは発音が難しかった。フランス語の単語帳も見てみたが、Pardonしか載ってない。これは「失礼、すみません」という意味で、道を避けたりぶつかったりした時に使うのは知っているが、謝罪の意味で使えるかどうか、よく分からなかった。Excusez-moiは「ごめんなさい、すみません」だが、英語でいうExcusemeなのだろうから違うしな。

「ありがとう」と言うだけではどうしても後ろめたくなってしまう。そんな自分の機敏に違和感を持つ。
「ごめんなさい」と言えないことを、ひたすら不便に思った日だった。

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