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【エッセイ】95年生まれ、23歳でボカロに出会う

高校生の頃のある日、部活が始まる前に軽い柔軟体操をしていると、他の部員が皆で楽しそうに歌っていました。

「何の歌?」と、輪の中の同級生に聞いたら「ボカロ」と答えました。後日、部活の皆でカラオケに行ったときも、「ボカロ」を楽しそうに歌っていました。曲名はそれぞれ違うのに、それらすべてをボカロと呼んでいたことから、「ボカロ」はバンドの名前だと思いました。「ラット」や「バンプ」に並んで、「ボカロ」という具合なのだと。

今ではソーシャルネットワーキングゲームやアバターなど、プレイヤーではありませんが、それらが何かは知っているくらいになった私ですが、子供の頃はゲームと言えばいとこのおさがりのスーパーファミコン、パソコンではCD-RGを入れて英語教材をやるだけでした。同じことを何周も繰り返すことを面白がる、家にあるもので充分楽しめれば他のものに興味無しな子供でした。

そういうわけで同期生と話が噛み合うところが、著しく少なかったのです。しかし当時は、どうして噛み合わないのかすら分かりませんでした。同期生はみんな卒業し、私だけ大学院に進学するために科目等履修生として大学に残って、話の噛み合わない寂しさを感じることが無くなっても「どうして?」って気持ちを引きずりました。

みんな、インターネットで検索と連絡を取り合う以外に何をしているのだろう? 大学の勉強でインターネットを使ううちに、それら以外に何かをしているようだ、くらいならば想像していたのですが、何かをしているところには辿り着けていませんでした。

23歳になって、YouTubeに辿り着きました。きっかけはテレビドラマ『アンナチュラル』の主題歌で米津玄師さんの『Lemon』です。

ある日、『Lemon』を聴き終わって、お菓子の箱を開けてるうちに違う曲が始まりました。その曲を聴いた途端、聴いたことがないのに懐かしい感じがしたのです。『MAD HEAD LOVE』という曲でした。高校生の頃、同級生たちが「ボカロ」と呼んでいた曲の中のいくつかに、歌詞の語彙とか、聞き慣れない、いろんな音が重なっている曲の雰囲気が似ていたのです。

そこから調べていき、やっと、高校生の頃、同級生たちが夢中になっていたボカロが、ボーカロイドだということや、同級生たちの会話の端々に登場した初音ミクがそのボーカロイドのうちの一人の名前だと知りました。ニコニコ動画のことも知りました。みんなが検索や連絡を取り合う以外に何をしているのか、やっと辿り着きました。創作、発信、そしてコメントをするなどの参加だったのですね、と。

それらを取っ掛かりにインターネットを覗いていくと、数知れぬコンテンツやらプラットホームやらがあり、それぞれが独立した世界のように文化や言語が出来ていって、圧倒されるくらいたくさんの人が参加していると分かります。

その中で、新しいことが起こったり出来たりすると、正直ひるみます。その渦中に飛び込んでいく人たちは勇壮無双で、荒々しいもののように見えていたのですが、最近は自分の考えも新しくなりました。

新しいことが起こったり出来たりすると、皆さんは、まず「楽しそう」と目が輝く人たちで、私は「自分が楽しめるのか?」という不安で足がすくむ人です。新しいことを、とりあえず眺めてみる癖がついたら、自分が楽しめる確率も上がるのでしょう。そう気づけたことが、インターネットとの、より鮮明な出会いでした。

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