トリコロールカラーアイス
大柄なおばさんの舐めていたアイスが、私の目の前でコーンから落ちた。アイスが石畳に叩き付けられる音は、呆気なかったが、直感していたより大きくてビクッと後ずさりした。おばさんは落ちたアイスを一瞥すると、去っていった。
アイスのまだ形が崩れていないところを確認すると、私が盛り付けたアイスではないと、安心した。
私は朝から、この祭りのボランティアで、スタンプラリーの景品のアイスを盛り付ける仕事をしていた。赤、白、青の三色を器具ですくい取り、コーンに乗せる。砂糖水に色と香りをつけただけの柔らかいアイスだった。運営が用意していた器具は二種類ある。一つはアイスを丸くくりぬくタイプ。乳脂肪が多い固いアイスに向いている。二つ目はヘラ。ジェラートのような柔らかくてねっとりしたやつに向いている。私はヘラを使って盛り付けていた。おばさんが落としたアイスは丸くくりぬかれていたので、私がやったのではない。
だが、私はアイスをお客さんに渡した後、ビクビクしていた。
もしもアイスが落ちたら。
小さな子供は親きょうだいがついてますように。友人同士、恋人同士、夫婦は笑って思い出にしてくれますように。一人の人は、どうにか、他に良いことがあって相殺されますように。
アイスの落下が、不満の起爆剤になりませんように。
アイスを盛り付けているテントの向かいのお店に、さっきアイスを盛り付けて渡した母娘が座ってアイスを食べている。一斗缶の中のアイス自体が大分溶けてきていたのを盛り付けたので、二人ともコーンの下を啜っている。
よりによって目の前のお店の人の身内か………。と思いつつ、申し訳ない、と私は下を向いた。白いシャツの胸の辺りに、青と赤の染みが付いていて、ため息が出た。
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