【読書記録】『放浪世界 水上悟志短編集』水上悟志
『惑星のさみだれ』『戦国妖狐』『スピリットサークル』等で知られる水上悟志先生の4冊目の短編集。
収録作は『竹屋敷姉妹、みやぶられる』『まつりコネクション』『今更ファンタジー』『エニグマバイキング』『虚無をゆく』の5作品。
見分けのつかない双子、しかも当人たちが積極的にお互いを似せようと努力している。そっくりの姉妹というモチーフというかネタは別記事のコメントでも書きましたが拙作『椛と楓』に反映されています。喋り方も似ているかも。自作のキャラクター造形がどうにも画一的になりがちなので、色んなキャラクターを取り入れていきたいですね。
作中に出て来る特定の人間にしか見えない空に浮かぶ巨大な何か、というモチーフは『惑星のさみだれ』のビスケットハンマーにも共通のイメージですね。異常な何かとそれに気がついていない様子の人々、というビジュアルはインパクトがあります。ドワーフは奥様がデザインされているという事ですが水上作品のこまいキャラ、好きなんですよね。
登場キャラの有無を言わせない勢いとそれに戸惑いがちな主人公、という水上作品あるある。呪文一つで世界が元通り、という軽さに怯える主人公がリアルでした。
『戦国妖狐』で設定はあったものの登場の機会のなかった「闇喰い」という設定を引っ張り出してきたという作品。これはこれで色々話が作れそうな魅力的な設定です。元アシスタントの石坂ケンタ先生と飲んだ時の雑談がきっかけとのこと。ちなみに石坂ケンタ先生の『ざつ旅』もおススメです。
確かいきなりネットに発表されてびっくりした覚えがある。そして中編ながらも描かれる物語世界のスケールに感銘を受けた記憶がある。水上SFは大概人類規模、宇宙規模の危機まで辿り着くから楽しいです。
広大であるはずなのに閉ざされた世界。平和であるはずなのに不穏な世界。線のタッチも重めで、一本の映画を見たような感覚になれる作品です。
ちなみに「盤古」は中国神話で天地開闢の創世神。「パンゲア大陸」を中国では音も合わせて「盤古大陸」と呼ぶらしいんですが、むちゃくちゃセンスありますよね。
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