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子ども向け読書会で工夫した9つのこと-「国語のひろば」の振り返り③-

こんにちは!
今日は「国語のひろば」の振り返り第三弾。これが最後の記事です。
子ども向けの読書会を作るためにした9つの工夫を、種類ごとに3つに分けて書きます。

(第二弾の記事はこちら↓)

第1章:本を読むこと/読んで話し合うことの楽しさを感じられるようにする

①ゆったりしたBGMをかけた/お茶・お菓子を食べながら読み、話した

お茶とお菓子を囲んで話し合う
子どもたちが淹れたほうじ茶

導入の背景:
誰かと話す時、何もない会議室で話すよりも、お洒落なカフェでおいしいコーヒーを飲みながら話した方が気分が上がりますよね。

読書会も同じです。
本を読んで誰かと話す時間を楽しく感じることが、読書会の効果を出すためには最も重要です。
そのためにBGMをかけ、お茶とお菓子を囲んで、リラックスした雰囲気で本を読みました。

子どもたちに「勉強はノートと鉛筆を持たなくても、友達と楽しみながらでもできるんだよ」と伝える目的もあります。

まとめ:
ゆったりしたBGMをかけ、お茶やお菓子を囲んで読書会をした。

その結果、参加者が気軽に発言しやすくなった。
本を読んで誰かと話す経験を、より楽しいと感じられるようになった。

②「ぬいぐるみシステム」の導入

司会の子が、発言してほしい子にぬいぐるみを手渡す

導入の背景:
1.司会の子が「〇〇についてどう思いますか?」と参加者に呼びかけた時、誰からも反応がないことがあります。
するとみんなが沈黙してしまうんですが…この時間ってつらいんですよね。
気まずい沈黙を作らないために、対策を講じる必要がありました。

2.発言を自由に任せると、発言しない子はいつまでも発言しないままです。一歩踏み出せないでいる子が、自然と発言できるきっかけを作る必要がありました。

そこで導入したのが「ぬいぐるみシステム」です。

① 司会にはぬいぐるみが与えられる

② 司会が「〇〇についてどう思いますか?」と話を振った時、誰からも挙手がない場合は、ぬいぐるみを誰かに渡すことができる

③ 渡された人は、ひと言でもいいので何か発言しなければならない

ぬいぐるみシステム

この仕組みによって司会のプレッシャーが和らぐと同時に、自分から手を挙げづらい子が自然に発言しやすくなりました。
子ども同士で気を遣い合うので、ちょうどいいバランスでぬいぐるみが回っていくんです。

この仕組みは、渡邉光輝先生(お茶の水女子大学附属中学校)の「謎解きブックトーク」の実践を真似させていただきました。

まとめ:
「ぬいぐるみを渡された人は、ひと言でもいいから何か発言する」という仕組みを作った。
その結果、司会の子のプレッシャーが軽減されてより主体的になり、引っ込み思案な子も発言しやすくなった。

第2章:年齢や読解力にバラつきがあっても、全員が課題文を理解できるようにする

小学生から大人まで、国語のひろばには様々な年齢の人が参加しました。
そのため、読解力や読書への意欲にバラつきがありました。
すると、こんな問題が起こります。

・課題文をしっかり読んでこない人がいる
・読んでくるが、理解が間違っている人がいる

課題文の理解が不十分だと、読書会で話し合いが噛み合いません。
すると、読書会がつまらなくなります。

この「参加者によって意欲や読解力に差があるために、課題文の理解度がバラバラになってしまう」という問題を解消するために、3つの工夫をしました。

③「画像集プリント」を配った/みんなで課題文の予習をした

第1水曜日(=課題文を配る日)に、以下のことをしました。

・課題文に出てくる時代背景や人物などを、画像を使って説明した
・各自に任せていた課題文の予習を、みんなで読み合わせする形に変えた

東京大空襲がテーマのエッセイ
『ガラスのうさぎ』の時に配ったプリント

導入の背景:
もともと、課題文の説明はプリントで行っていました。学校の国語の授業みたいな感じです。
でも、文字ばかりのプリントだと読む気にならないですよね。
子どもたちも、なかなか読んでくれませんでした。

そこで、説明プリントから文字を極力減らして、画像だけにしました。
そして予習を子ども任せにせず、みんなで読み合わせをする形に変えました。

まとめ:
解説プリントを画像のみで作った。課題文を予習する時は、全員で音読をした。
その結果、忙しい子や読むのが苦手な子も興味を持って予習ができるようになり、疑問点を予習の段階で解消できるようになった。
その結果、読書会でのすれ違いが減り、話し合いが深まるようになった。

④「ウォーミングアップの時間」を作った

120分のうち前半30分は、講師の決めたテーマで話し合う時間にしました。

19:10から30分間は「ウォーミングアップの時間」

導入の背景:
もともとは、読書会の120分間すべてを自由な話し合いの時間にしていました。
でも、うまくいきませんでした。子どもたちはたくさん発言するんですが、いまいち話が噛み合わなかったんです。

その原因は、子どもたちの読解力の違いにありました。
たとえば10人の人物が登場する場面なのに、

・A君は9人だと思っていた(1人見落としていた)
・B君は7人だと思っていた
・Cさんは10人全員を把握していた

みたいなことが起こります。
そうすると、話が噛み合わなくてイライラしてしまうんですね。

そこで、前半は講師が決めたテーマについて話し合う時間にして、それを「ウォーミングアップの時間」と名づけました。
物語の設定や人物同士の関係について全員の共通認識を固めることで、後半の読書会を実りあるものにします。

物語の設定を確認するための「8つの問い」

活動としては、子どもが自由に話す方がいい感じがしますが…それだと第二弾の記事で書いた「活動のための活動」になってしまうんですよね。
読書会を楽しく効果的なものにするためには、あえて強制する時間も必要だと考えています。

ちなみにこの「ウォーミングアップの時間」も、渡邉先生のブックカフェの「前菜」という仕組みを参考にさせていただきました。

まとめ:
物語の設定について全員の共通認識を固めるために、会の前半を「ウォーミングアップの時間」にした。
その結果、参加者が物語の背景や人物関係について共通認識を持てるようになり、話し合いが深まり、物語の楽しさをより感じられるようになった。

⑤「面白く読むワザカード」を作った

話し合うテーマの例を、カードにして配りました。

面白く読むワザカード

導入の背景:
「自由に話し合ってみよう」と声を掛けても、話し合いに慣れていない子は自分で問いを作ることが難しかったためです。

たとえば、ハレー彗星が地球に接近した時に広まったデマをテーマにした『空気がなくなる日』の回に、子どもたちからこんな問いが出ました。

この物語の舞台は富山県かな?それとも福井県かな?

この問いのどこが良くないかというと、富山県と福井県に限定する意味がないんですね。本文にも手がかりはないので、考えれば考えるほど迷走してしまう。

本文の理解に繋がらない問いを作ってしまうと、ただ疲れるだけになってしまいます読むことの楽しさに繋がっていかないんですね。

そこで、「こんなふうに問いを作ると面白く読めるよ」という、お手本を示す必要がありました。
このカードも、渡邉先生のブックカフェで使われていた物をアレンジして使わせていただきました。

まとめ:
話し合うテーマの例を、「面白く読むワザカード」にして配った。
その結果、話し合って楽しくなったり読みが深まったりするような、適切な問いを作れるようになった。

第3章:主体性を引き出す

⑥発言を挙手制にした

挙手する子どもたち

導入の背景:
読書会を始めたばかりの頃は、特に発言のルールを決めていませんでした。
本を読んで疑問に感じたことや面白いなと思ったことがあればいつでも発言OK、みたいにしていました。

しかし、極めて大きな問題が発生しました。
発言をする子に注目が集まらないんです。

注目が集まらないと、発言者が不安になります。
「私、何か変なこと言っちゃったかな…?」と不安になって、発言が尻すぼみになっていました。

・発言する
→注目が集まらない(反応するのは司会だけ)
→不安になる
→発言しづらくなる
→講師がフォローする必要が出てくる
講師がホストで参加者はゲスト、のような受け身の雰囲気になってしまう

発言が自由だと起こる問題

発言を挙手制にすることで、発言する子にみんなの注目が集まるようになりました。

・挙手をする
→他のメンバーに、聞く準備ができる
→発言する
→話し合いが広がり、話すことが面白くなる
→全員の発言したい気持ちが高まる
→参加者の主体性が増す

発言を挙手制にするメリット

足りなかったのは、発言者以外のメンバーの「聞く準備」でした。
発言を挙手制にすることで、他のメンバーが聞くことに集中でき、発言に対してしっかり反応できるようになりました。

話し合いが楽しく感じられると、子どもたちの「もっと発言したい。発言するために、もっと真剣に課題文を読みたい」という気持ちも高まっていきました。

まとめ:
感想や意見を言う時に、できる限り挙手してもらうようにした。
その結果、意見を言う意欲と、課題文を読む意欲が大きく高まった。

⑦司会を子どもに任せた

課題文を見ながら司会進行をする子

導入の背景:
主体性とは何なのか?というと、それは読書会を「誰が引っ張っているのか?」ということですよね。
誰が司会をするかは、子どもの主体性を考える上で重要な要素です。

ここまでに書いた①~⑥の工夫で、子どもたちは自分の力で読書会を楽しめるようになってきました。
このタイミングで、子どもたちに司会を任せることにしました。

読書会の楽しみ方を理解した後の段階だったので、子どもたちはむしろ競って司会をやりたがりました。
(希望者が多かったので、ジャンケンで勝った人が司会を担当しました)

子どもに司会を任せたことで、2つのメリットがありました。

1つめのメリットは、会の進行に責任感が出たことです。
司会には話題を決める権限があります。私が司会をしていた時は、私が「どのテーマについて、どのくらい話すか」を決めていました。

子どもが司会を務めるようになってからは、「どのテーマについて、どのくらい話すか」を子ども自身が考えるようになりました。

・このテーマはもう十分話し合ったな
・まだ発言してない人がいるから、あの人の意見も聞いてみたいな

みたいに、どうすれば話し合いがもっと深まるのか、子ども自身が考えて、判断するようになったんですね。

読書会を「誰が引っ張っているのか?」という視点で見た時、これはとても大きな変化です。

2つめのメリットは、発言に責任感が出たことです。
私が司会をしている時は、子どもたちはどんな発言でも(時にはふざけた発言でも)安心して投げることができました。
大人が必ずキャッチして、うまい具合にいなしてくれるからです。

でも、自分と近い年齢や年下の子が司会をするとなれば、そうはいきません。
相手がきちんと理解できる言葉で、丁寧に伝える必要があります。
相手に合わせたコミュニケーションをするために、言葉の使い方や発言の内容を考えるようになりました。
これはつまり、自分の発言に責任を持つようになったということです。

まとめ:
読書会の司会を子どもに任せた。
その結果、子どもが会の進行や発言に責任を持つようになり、主体性が増した。

⑧「司会の切り札カード」を作った

導入の背景:子どもたちはイベントを仕切った経験がないので、会をどういうふうに進めれば良いのか分かりませんでした。
私が一つずつ教えたのですが、それだとなかなか応用が利きません。

そこで、司会進行に役立つフレーズをまとめた「司会の切り札カード」を印刷して、司会の手元に置くようにしました。

司会進行に役立つフレーズをまとめた「司会の切り札カード」

まとめ:
司会の手元に「司会の切り札カード」を置いた。
その結果、進行のバリエーションを子どもたち自身で工夫できるようになり、会を臨機応変に進めることができるようになった。

⑨投票で「テーマ大賞」を決めた

導入の背景:読書会を始めた当初の課題として、「やりっ放し感」がありました。
本を読んで、話し合って、楽しかったね、で終わってしまう感じです。

読書会を学びの場として捉えるなら、この後に「振り返りの時間」が必要なはずです。
勉強だって、一番身につく(=学んだことを一つ高い視点からメタ認知する)のは復習の時間だからです。

そこで、「テーマ大賞」という仕組みを作りました。
最後の15分で、その日の読書会で一番面白かったと思うテーマを投票で決めたんです。

「テーマ大賞」投票の様子

この時間が、その日に話し合ったことを改めて振り返る時間になりました。
そしてテーマ大賞は、子どもたちに「あなたの発言のおかげで、みんなが読書会を楽しめたよ」と伝える役割も果たしました。

まとめ:
読書会の振り返りをするために、最後の15分で「テーマ大賞」を決めた。
その結果、子どもたちが話し合った内容や、良い問いの立て方を振り返ることができた。
また、テーマ大賞に選ばれた子は嬉しく、次の読書会での発言につながった。

これからの予定

私のSNSのプロフィールに、

・一部の私立・国立中学校でしか受けられない「読書を通して国語の力を育てる」授業をアレンジして、イベントとして再現
・国語を楽しみながら学ぶ選択肢を、全国の子どもたちに。

と書いているんですが、私立・国立中学校の授業をどんなふうに読書会に取り入れているのかをこの記事で説明しました。

去年は読書会を頑張り過ぎて収入が下がってしまったため、今年は作文・小論文指導など、収入の確保に専念する予定です。

ですがライフワークとして、読書会は小さくても続けていきたいと思っています。
数年以内には事業化して、読書会を本業の一つにしていきたいです。

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