【見学レポート】軽井沢風越学園の校舎見学会に行ってきました!
(この記事は約14分で読めます)
こんにちは!
6月1日、長野県にある軽井沢風越学園(以下「風越学園」と表記します)に行ってきたので、今日はそのことについて書いてみようと思います。
※これから書くことは、私が風越学園の校舎を歩いてみて感じたことです。
公式の見解とは異なる部分もあると思いますので、予めご了承ください。
こんな人に読んでもらいたいです
この記事は主に
・風越学園への入学を検討されている方
・見学会に参加したけれど、専門家の視点からの意見も聞いてみたい方
・風越学園の教育について、より深く知ってみたい方
に読んでもらうことを想定して書きました。
※風越学園のことをほとんど知らない、まずは基本的なことを分かりやすく知りたいという方には、こちらの動画をお薦めします
5 Years Radio #003(ゲスト 軽井沢風越学園 理事長 本城慎之介②)
学園理事長の本城氏が、風越学園の理念を分かりやすく説明しています。
この記事に書かれていること(=キーワード)
長い記事なので、まず要点をまとめました。
読んでいる途中で話が分かりにくくなった時は、この見出しに戻って現在位置を確認してください(^^)
(出発点)「校舎のつくり」は、子どもの効果的な学びにとって重要だ
→風越学園は校舎の中心に「ライブラリー」を配置している
→ライブラリーの楽しさの秘密は「遊環構造デザイン」にある
→ライブラリーを歩くのが楽しいから、子どもたちが回遊する
→回遊すると、偶然が起こる
→偶然が起こると、自然に子どもたちの学びが始まる
→子どもたちが自然に学び始めると、大人は子どもに学びのコントローラーを渡すことができる
概要は把握できたでしょうか?
では、詳細を書いていきます!
1章:校舎のつくりは、子どもの効果的な学びにとって重要
校舎のつくりと学習の効果との間には、密接な関係があります。
たとえば教師が一斉授業で50分間も生徒たちの集中を保てるのは、「教室を分厚い壁で四角く仕切っている」おかげなんですね。
もしひらけた場所や変化に富んだ空間で一斉授業をするとしたら、ほとんどの教師は実力の半分も力を出せないはずです。
校舎のつくりは教師の力を何倍にもするし、何分の一にもするんです。
では、風越学園の真ん中に配置されている「ライブラリー」は、子どもたちの学びにどんな影響を与えているのでしょうか?
2章:ライブラリーの楽しさの秘密は「遊環構造デザイン」にある
風越学園のライブラリーは、環境デザインの専門家である仙田満(せんだみつる)氏によって設計されました。
そしてそのコンセプトとなったのが「遊環構造デザイン」です。
遊環構造デザインとは?
遊環構造デザインについては、風越学園のスタッフである澤田英輔(あすこま)さんが詳しく書かれています。
〇風越の3年間とこれからを考えつつ読む、仙田満『遊環構造デザイン』
遊環構造デザインについて、私は大まかに、こんなふうに理解しました。
♦遊環構造デザインとは?
・楽しくて、つい歩き回りたくなってしまうように設計された建築物のこと。(=風越学園の場合はライブラリー)
♦遊環構造デザインに関わる7つの要素
私は校舎を実際に歩いてみて、この「遊環構造デザイン」が風越学園の理念の実現に大きく寄与していることを実感しました。
次の章ではライブラリーの写真や動画を引用しながら、遊環構造デザインが実際にどのように機能しているのかを紹介していきたいと思います。
3章:ライブラリーを歩くのが楽しいから、子どもたちが回遊する
上に引用した「かぜのーと」では、風越学園のライブラリーが
・歩いて楽しい町
・遊びやすい、回遊する町
と表現されています。
なぜ風越学園のライブラリーは歩いて楽しいのか?つい回遊したくなるのか?
その答えは…
「変化がある」から、ライブラリーを歩くのが楽しいのだと思います。
具体的に何が変化するのか? 3つに分けて書いてみます。
📖📖📖
1.視界が「変わる」
ライブラリーの通路には、いたる所にスロープや階段があります。
本棚の背丈は一定なのに通路に高低差があるため、歩いていると視界の広さが様々に変化します。
このページの「2020年6月 校舎紹介」動画の3:22~3:35の左側の視界が、まさにその典型です。
(動画の直リンクはNGのため、ページごと引用しています)
・↓スロープの上り始めの写真はこんな感じです。
狭くて本に囲まれている感じがしますよね。
〇町の学校とつながる「本の虫プロジェクト」(軽井沢風越学園「かぜのーと」)
※上から2枚目の写真
・でも、上りきった後の写真はこんな感じです↓
視界が一気にひらけて、いろんな情報が目に飛び込んできます。
〇第11回 学校の真ん中にライブラリー ――軽井沢風越学園(長野県)で新たな学びが生まれる(光村図書出版)
※上から2枚目の写真
歩きながらほんの数秒でズンズン視界がひらけていくのには、爽快感を感じました。
広くまっすぐな道もあり、細くクネクネしている道もあり、まるで迷路のようです。
視界が次々と変化するので、つい歩きたくなってしまいます。
※記事作成の都合上、次の2.歩く速度が「変わる」より先の校舎の写真は省略します。
📖📖📖
2.歩く速度が「変わる」
・走りたくなる下り坂
・ジャンプしたくなる階段
・くぐりたくなるトンネル
📖📖📖
3.ルートが「変わる」
・遠回りしたくなる道
・ショートカットしたくなる道
📖📖📖
など、子どもだけでなく大人も「つい」歩き続けたくなってしまう仕掛けが、ライブラリーのいたるところに施されています。
ライブラリーを歩くのが楽しいから、子どもたちが回遊する。
ここまでは伝わったでしょうか。
この後は、
回遊する→偶然が起こる→学びが始まる
について書いていきます。
4章:回遊すると、偶然が起こる。
偶然が起こると、自然に子どもたちの学びが始まる
私はライブラリーを歩くうちに、子どもたちに2つの「偶然」が起こっていることを発見しました。
偶然①:子どもが偶然「好き」と出会う
ライブラリーのいたる所で子どもたちが走り回っていました。
そしてそのうちの何人かは、自然と本棚に手を伸ばして、本を読んでいました。
子どもたちが
「何となく」本の背表紙を見る
「何となく」本をパラパラめくってみる
という回数が、風越学園では半端でなく多いんです。
図書室にしか本がない環境と比べると、風越学園は何十倍、何百倍も、自然に好きな本と出会いやすい環境なのだということを感じました。
好きな本、好きなこととの偶然の出会いが、ライブラリーの引き起こす「回遊」によって設計されています。
偶然②:子どもが偶然「人」と出会う
風越学園の教育理念の一つに「まざる」というものがあります。
いろいろな意味が含まれているのですが…その一つには「異年齢の子たちと、そのご家族と、スタッフとかまざって学び合う」という意味があります。
この理念のとおり、風越学園の校舎内にはいたる所にたくさんの大人たちがいました。
・校庭の畑でお母さんとお子さんがおしゃべりをしていたり、
・ライブラリーの階段でお父さんと息子さんが声をかけ合っていたり、
・机のあるスペースでスタッフと共にワークショップが開かれていたり、
保護者とスタッフが、自然体で子どもたちの中にまざっているんですね。
そんな中、私は子どもの目の高さになって、ライブラリーにあるクッションに座ってみました。
そこで分かったこと。それは…
とにかくいろんな人のいろんな行動が見えるし、聞こえてくるということでした。
〇「軽井沢風越学園 混ざり合う小社会」(日本建設業連合会)
※↓写真5枚目や8枚目のような見え方です。
実際にはもっとたくさんの子どもたちが入り乱れています。
もしあなたが小中学生だったら、この視界から何を感じるでしょうか。
遠くに友だちが見えたら、つい声をかけたくなりませんか?
話したことはないけど何度も同じ場所で見かける人がいたら、つい気になりませんか?
どこかからピアノや歌声が聞こえたら、ちょっと見に行ってみたくなりませんか?
あれ、この本なんなんだろう?
あ、あんなところにあいつがいる!
あの人、なんとなく気になるな…
そんな本や人との「偶然の出会いを作り出す」のが、遊環構造デザインの力なんだと感じました。
まとめ
ここまで見てきたように、風越学園の理念を体現しているライブラリーは子どもたちの環境の中に「偶然」を作り出し、自ら学び始めるきっかけを与えます。
(出発点)校舎のつくりは、子どもの効果的な学びにとって重要だ
→風越学園は校舎の中心に「ライブラリー」を配置している
→ライブラリーの楽しさの秘密は「遊環構造デザイン」にある
→ライブラリーを歩くのが楽しいから、子どもたちが回遊する
→回遊すると、偶然が起こる
→偶然が起こると、自然に子どもたちの学びが始まる
→子どもたちが自然に学び始めると、大人は子どもに学びのコントローラーを渡す※ことができる
※「子どもに学びのコントローラーを渡す」は、風越学園の理念のもとになっている、哲学者で教育学者の苫野一徳(とまのいっとく)さんのお考えの一つです。
📖📖📖
最後に、先ほど紹介した「かぜのーと」の一節を引用して、この記事を締めようと思います。
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