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Vol.7 新国立劇場「観劇サポート」の体験記

【響け ~La mia voce~】
ご覧いただき、ありがとうございます。多くの皆さまに、興味・関心を持っていただけること、心より嬉しく思います。
今後も引き続き、よろしくお願いいたします。



今回は、Vol.7「観劇サポート」についてお送りします。

「舞台観劇」と言うと「何だか堅苦しいなー」と思われるかもしれませんが…
歌手のコンサートやライブなどの音楽演奏、演劇(オペラ、オペレッタ、ミュージカル、人形劇、能、狂言、歌舞伎、文楽、落語、大衆演劇、バレエ、日舞など)があげられます。



「見ること」「聞くこと」に何の支障もない方は、個々の「視覚」「聴覚」を存分に用いて、日常とは異なる世界を楽しむことができるでしょう。


特別なその時間を、誰もが同じように楽しむことはできるのでしょうか?



そう思っても、視覚障害、聴覚障害のみならず、何かしら障害のある方にとっては、様々な壁があり、
「足を運んでみたいけど、あきらめる」…なんてことがあるかもしれません。


しかし、
目や耳に障害があっても、楽しめる劇場があったんです!


そのひとつ!
「新国立劇場」(東京都・渋谷区 初台)では、目や耳に障害のあるお客様にも舞台を楽しんでいただきたいと、障害者の観劇サポートに取り組まれています。


サポート情報を入手し、「ぜひ、足を運んでみたい!」と思い立ったので、今回は、Vol.7 新国立劇場の「観劇サポート(聴覚障害者向け)」についてお送りします。


『モグラが三千あつまって』
という児童文学をもとに創った作品を観に行きました。
今の社会を映し出しているような、メッセージ性の高い、ステキな作品だったので、感想・内容を紹介したいのですが…
膨大な情報量のため、作品の詳細については、こちらをご参照ください。

🔸『モグラが三千あつまって』
https://www.nntt.jac.go.jp/play/mogura/
🔸強烈なメッセージ舞台『モグラが三千あつまって』
 https://note.com/innyounokouyou/n/n4dffd0af6dc3



「早速、申し込みをしよう!」と思い、リンクにアクセスしたところ、ひとつ気になる文面を見つけました。

私は、「聴覚」障害があります。
しかし、私は、今の日本の制度における「聴覚“障害者”」には、該当しないのです。(このあたりの詳しい説明は、また今度…)


障害者認定
を受けていないので、当然、「障害者手帳」は持っておりません。
そのため、市町村が提供している障害者支援手話通訳依頼・要約筆記などのサポートを受けることができません。支援を受けるためには、「障害者手帳」必須になります。


「手帳を持っていないから、割引は受けられないけど、サポートは受けられないだろうか?」と思い、
いちかばちか、半ばあきらめの気持ちで問い合わせてみることにしました。

数日後、快く了承お返事が届き、私の心配はどこかへ飛んでいきました。
時と場合によっては、「障害者手帳」を手にしていない方も、観劇サポートが受けられるかもしれませんので、ダメもとでも、一度 問い合わせてみることをお勧めします。


今後、サポートシステムを使ってみたい方にむけて、少しご紹介を…

新国立劇場の観劇サポートの紹介

視覚障害者と聴覚障害者の方に向けたサポートの詳細です。https://www.nntt.jac.go.jp/guide/accessibility/


《 サポート内容と感想 》

聴覚の観劇サポート公演対象日
「劇場内の案内・スタッフの対応(手話通訳・要約筆記)」「ポーダブル字幕機の貸与」のサポートがあります。
私は、舞台観劇の当日、「 “手話通訳” と “字幕機” のサポートが受けられたらいいなぁ」くらいに思っていたら、事前からとても丁寧な対応をしていただけました。


1.事前のサポート

事前に、下記の内容を丁寧に記した、ご案内メールが届きました。

このような連絡をいただけたことで、当日までに見通しを持つことができ、安心して会場に向かうことができました。


2.公演当日、開演前のサポート

新国立劇場は、京王新線「初台駅」が劇場まで直結しているため、目的地までスムーズに向かうことができました。
受付カウンターには、案内係が常駐しており、予約の確認後に「手話通訳」「要約筆記」どちらのサポートを希望するかを尋ねられました。
私は、今回「手話通訳」の希望をしました。
その後、説明事項を記載した用紙にそって、字幕機の使用方法やトラブル時の対応、災害時や観劇中の注意事項についての説明を受けました。

丁寧に対応していただけて良かったのですが、コロナ禍ということもあり、アクリル板を挟んで説明を受けました。音声で説明するスタッフの横には、フェイスシールドをつけた手話通訳者がおられ、音声での説明内容を手話通訳してくれました。アクリル板フェイスシールドを経ると、手話通訳者の表情・手話が見えにくいことが少々難点でしたが、音声で説明していたスタッフが、文面を指でたどりながら説明してくれたので、内容は全て把握することができました。

座席に着くと、機器の確認を担当するスタッフが近くに在中しており、トラブルなく、安心して開演を迎えることができました。


3.上演中のサポート

会場が暗くなると、字幕機の文字が読めるのかと心配でしたが、暗い中でも、十分に読むことができました。
画面には、役者のセリフだけではなく、「物音」「効果音」「音楽」などの情報も得ることができました。
表示例)「海とカモメの鳴き声」、「木琴」、「オルゴール」。

さらに、出演者の動き、舞台の展開に合わせてタイミングよく文字が表示されるので、よくテレビで見る生中継のように「タイミングが遅れて表示される」ようなことはありませんでした。

さらに、演出者の話し方語調のメリハリがわかるように、大声で強調するところ太字斜体にしたり、文字レタリング大きさを変えたりする工夫がありました。

字幕機を膝の上に置いていたので、字幕機をみて、舞台の方をみて、また字幕機という、視線動作が少々忙しい時もありましたが、
今回のように、4人の俳優さんが、一人で何役も担う場合は、セリフが聞き取れないと、誰の役をやっているか、聞くだけでは分からないと思ったので、サポートを受けられて良かったです。


上演中「聞こえる」人たちは、役柄の切り替えが分かるのかと疑問に感じていましたが、字幕を見ていると、役柄が切り替わる時に「名前を呼びかける」という手法が使われており、それによってお客さんは、把握できるのだと思いました。
また、上演中に子どもが、舞台の方に指をさし、「あー次は猫になる」と言う声が聞こえました。声や衣装を変えるだけでなく、振付けにも、こだわりに、こだわりぬいた…そんな作品でした。

私は、終演に向かうにつれ、もう涙が止まらず、涙を拭きながら観ていました。通路横の座席だったため、役者の富山えり子さんが出演までの間、通路に座り、私の隣でしばらくの間、待機してくれていた?ので、少々緊張するところもありました。


4.まとめ

結果として、字幕機のお陰で、作品の内容がよく分かり、満足して帰ってきました。
吉田美月喜さんの「マチェック」、富山えり子さんの「パンゲラ親分」、小日向星一さんの「ガンぺッタ王」、そして、栗原類さんの「やきいも隊長」が最高に良かったです。

原作として、児童文学をもとにした作品でしたが、完全に「大人向け」の内容で、低学年の子どもには理解が難しい、と思える場面もありました。
しかし、帰り際に、何人もの小学生が「もぐらが三千あつまって…」と口ずさんで帰っていく姿を見て、短時間で覚えるぐらい印象に残る作品、歌・音楽のすばらしさを感じました。

以上、観劇記でした。
もっといろんなところで、こういった「観劇サポート」が受けられたら、もっと楽しめるし、広がってほしいなと思います。


*観劇サポートのある舞台紹介*


こちらのサイトでは、観劇サポートがある舞台が紹介されています。
興味のある方は、ご覧になって、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?

🔹 株式会社イヤホンガイド

🔹「G-marc」(LED・プロジェクターを使った文字・映像表示システム)


今回は、このあたりで…
最後まで、読んでいただきありがとうございました。