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レース模様の図書室、再訪

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霧とリボン企画展《レース模様の図書室、再訪》|2021.4.22〜30|少女たちは或る日、レース舞う図書室への扉をふたたび開ける——オンライン・ギャラリー「MAUVE CABIN… もっと読む
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レース模様の図書室、再訪|開催方法と作品販売

少女たちは或る日、 レース舞う図書室への扉を ふたたび開ける—— * オンライン開催 at MAUVE CABINET ★実店舗は休業中のため、ご入場頂くことはできません★ 霧とリボン 実店舗「Private Cabinet」に作品を展示、会場の様子や各作品の紹介を主に写真・スライドショーと文章で、会期中、毎日ここnoteにてオンライン配信致します(4/25〜27休)。当サイト更新も含めた最新情報は霧とリボン ツイッターをご覧下さい。 ★一日の配信予定★ [お昼

レース模様の図書室、再訪|影山多栄子《1》|図書室の精霊

Text|KIRI to RIBBON  クレマチス・アーマンディの白い香気が過ぎ、花水木の開花と共に草花が煌めきを増す頃——鬱蒼の緑の奥にひとときひらかれる図書室があります。そこは一風変わった図書室。書物と一緒に、書物と暮らしてきた少女たちの営みが、レース模様に編まれて並んでいます。精霊たちも住んでいるようです。  1年の時を経て、ふたたび扉の前に立ちました。あの日と同じように、小鳥の囀りが聞こえてきます。  季節は巡り、様々な物事が移ろい、変化を余儀なくされる中、少女

レース模様の図書室、再訪|黒木こずゑ|私の中の物語

Text|KIRI to RIBBON  精霊たちの気配を感じながら図書室を歩いていると、一心に読書するひとりの少女に出会いました。レースの縁飾りのあるドレスを纏い、大きなリボンを髪に飾って、書物の世界を旅しているようです。  不思議なことに、散ったはずのクレマチス・アーマンディの白い香りが、どこからともなく漂ってきました—— * * *  少女が手にしているのは、確かに一冊の本でした。  しかしそこからしだいにぐんぐん茎が伸び、花がひらき、様々な動物や少女たちで

レース模様の図書室、再訪|深瀬優子|夜について

TextKIRI to RIBBON  菫色の図書室に夜の帳が降りる頃——漆黒の装いに身を包んだ不思議な姉妹が、「夜」について思索を重ねていました。  時が満ち、特別な夜の瞬間が訪れようとしています。夜に寄せられた物語を、一緒に紐解いていきましょう。 * * *  お揃いのシルクハットに飾るための特別な花の開花を、姉妹は待っていました。夜に咲くその花を讃えるために、姉妹は「夜」について、夜のもたらす不思議について、夜が来るたび考え続けてきました。  そうして迎え

レース模様の図書室、再訪|DAY 1

TextKIRI to RIBBON  霧とリボン 実店舗を休業し、ここオンライン・ギャラリー「MAUVE CABINET」をスタートしてから今月で1年——オンライン開催のはじまりとなったへ、1年ぶりの再訪が叶いました。これまで皆様から頂いた温かなご支援に、心より深くお礼申し上げます。  初日の今日、春の図書室の風景はいかがでしたでしょうか。  誰もいない菫色の小部屋にアーティストの皆様から作品が届き、お箱を開封して作品をひとつずつ飾ってゆくと、それまで眠っていた小

レース模様の図書室、再訪|横井まい子|午後の図書室

TextKIRI to RIBBON  晩春の美しい光と新緑に誘われて、今日も静やかにレースが舞う図書室に来ました。やわらかな日差しが届く午後の図書室はぽかぽかと暖かく、図書室を包む菫色も微睡んでいます。  1年前に出会った三編みの少女たちが、図書室で待っていました。少女たちの時間を邪魔しないように、そっと覗いてみたいと思います。 * * *  菫色のヴェールの奥に、少女たちはいました。  ヴェール越しに見る少女たちの表情は少し大人びたように感じましたが、図書室の

レース模様の図書室、再訪|金田アツ子《1》|夕ぐれの色、薔薇の色

 新しい緑の眩しさが落ち着きを見せる晩春の夕暮れ——図書室の菫色もうっすらと翳りを帯びてきました。暖かだった室内にも冷気が少しずつ流れ込み、昼から夜へと移ろうはざまの刻が訪れます。  何度も読み返してきた書物が、ふと哀音を奏でる時間帯。時のはざまで揺れる少女のこころに寄り添うことができますように・・・ * * *  レースブラウスを折り目正しく纏い、髪をきっちりと結い上げたひとりの少女。熱心に紐解いていた書物からふと目を上げ、夕暮れの諧調が差し込む窓辺に近づいていき

レース模様の図書室、再訪|フランスガム《1》|Rêve d'amour

 どこからともなく、素敵な調べが流れてきました。書物の隙間を縫って書棚を伝い、ちいさなシャンデリアの硝子の飾りを揺らし、少女たちの頁をめくる指先を過ぎ、どこかへ消えてゆきます。  今度は少しくぐもったベルの音色が聞こえてきました。過去からの呼鈴のように、郷愁を誘います。  響いては消える可憐な音色を、菫色の図書室に探しに行こうと思います。 * * *  異国の古い書物の間に飾られた、スミレ花と菫色で装丁された一冊の書物。表紙には『愛の夢』を意味する仏蘭西語と猫と少女

レース模様の図書室、再訪|DAY 2

TextKIRI to RIBBON  新緑の眩しさに気持ちも軽やかになった一日。  図書室の少女たちに会いにいらして下さった皆様に心より深くお礼申し上げます。  1年前にはじめて開催したオンライン展覧会は、急拵えで、日々模索しながら記事を作成していました。どんな風に表現すれば、作家さまや作品の魅力、会場の空気感が伝わるのか——  1年継続してきましたが、執筆のプロフェッショナルではない者にとって、常に表現の拙さや不足と向き合うことになり、もどかしい気持ちを抱えながら

レース模様の図書室、再訪|くるはらきみ|レース専門の図書室

TextKIRI to RIBBON  光と新緑が織りなすレース模様を楽しみながら、麗らかな気持ちで到着した菫色の図書室——扉を開けた途端、歓声をあげてしまいました。一夜にして、菫色の図書室が「レース専門の図書室」に様変わりしていたのです。    午後のひととき、ちいさな司書さんと一緒に、レースと戯れてみたいと思います。 * * *  此処は、昨日までと同じ菫色の図書室なのでしょうか。  日本語、英語、仏蘭西語——昨日まで背表紙にあった文字という文字がすっかり消えて

レース模様の図書室、再訪|須川まきこ|レース模様の図書室へ再び

TextKIRI to RIBBON  この日のために、とっておきのレースのドレスを選びました。レースのおしゃれを日夜追求している少女たちと待ち合わせをしているからです。  1年ぶりに再会する二人は変わらず元気かしら? いまはどんなことに夢中なのかしら? 一緒に行ったコンサート、とっても楽しかったなぁ——お喋りしたいことがどんどん押し寄せてきます。  フローラルの甘さの中に、苦みと重さのある香りが過ぎりました。懐かしい香水の香りの先に、二人がいました。 * * *

レース模様の図書室、再訪|massaging capsule|十四行詩のアームコルセット

Text|KIRI to RIBBON  菫色の図書室には、書物を愛する少女たちのために特別なドレッサーが用意されています。  引き出しを開けるとそこには、作られた国や時代も様々なレース素材、繊細な布地、シックな色目のリボンや色とりどりのボタンが所狭しと収納されています。読書の合間、少女たちは秘密の小箱を開封するときめきを持って、レースやリボンの美しさをうっとりと眺めるのでした。  或る日、仕立てられることを静かに待つ素材の中から、人知れず、美しい黒レースが取り出され

レース模様の図書室、再訪|DAY 3

TextKIRI to RIBBON  会期前半をしめくくるDAY 3も爽やかなお天気の一日でした。  オンラインの散策をお楽しみ下さり、菫色の図書室に遊びにいらして下さった皆様に深くお礼申し上げます。  明日4/25より4/27までの三日間、オンライン配信はお休みとなります。残りの会期は4/28〜4/30まで。どうぞよろしくお願い申し上げます。  コロナ禍の1年、皆様はどんな風にお過ごしでしたでしょうか。  環境が激変された方も多いかと存じます。霧とリボンも昨年4

レース模様の図書室、再訪|野村直子|ある午後、図書室で

TextKIRI to RIBBON  新緑がさらに煌めきを増し、春から初夏へと移りゆく健やかな頃——ここ菫色の図書室では、煌めきを頁の中に探すように、少女たちが書物の迷宮を散策しています。  1年前と変わらぬ落ち着きで迎えてくれた懐かしい図書室で、午後のひとときを過ごしましょう。 * * *  図書室は書物が傷まないように、書架の方には強い日差しが届かない造りになっているから、書架の辺りはいつもひんやりと薄暗い。ぐるりと囲む壁の菫色も、本当はもっと鮮やかなラベン