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レース模様の図書室、再訪|くるはらきみ|レース専門の図書室

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Text|KIRI to RIBBON

 光と新緑が織りなすレース模様を楽しみながら、麗らかな気持ちで到着した菫色の図書室——扉を開けた途端、歓声をあげてしまいました。一夜にして、菫色の図書室が「レース専門の図書室」に様変わりしていたのです。
 
 午後のひととき、ちいさな司書さんと一緒に、レースと戯れてみたいと思います。



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 此処は、昨日までと同じ菫色の図書室なのでしょうか。
 日本語、英語、仏蘭西語——昨日まで背表紙にあった文字という文字がすっかり消えて、文字があった場所にレースの編み目が並んでいます。書物が入れ替わったわけではなく、もともとあった書物がレースの編み目で埋め尽くされていました。

 レース語で翻訳された書物が並ぶ図書室には、ちいさな司書さんがいました。「誰でも編み目を読むことができます」——そう言って、レース語で綴られた一冊を開いて、手渡してくれました。

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 馴染みのある図書室の風景を一変させた、画家兼人形作家・くるはらきみ様の魔法。少女の襟元から栞、テーブル、書棚へと広がる繊細なレースが、書物の中まで流れ込んでいました。

 文字や言葉のようにレースを扱った本作には、「編む」という書物の本質が活写されています。
 長きに渡り、多くの人の手により、時に気が遠くなるような過程を経て編纂され、受け継がれてきた書物という存在。様々な物事が合理性を求められ流れていきがちな時世にあって、複雑に編まれた書物への敬愛を心に留めおきたい——レース専門の図書室で、司書さんが手渡してくれた書物の編み目を読むことで、立ち止まって深呼吸することができました。

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 図書室に掛けられている大きな丸時計——放課後、閉館時間に間に合うように本を選ぼうと、少女たちは書棚から顔をのぞかせ時計を見ています。書物をひらけばその先は別世界、ついつい、時が経つのを忘れて読み耽ってしまいます。

 少女たちが迷わずこの世界に戻ってこられるように、今日も少女たちの腹心の友は、変わらぬ時を刻み続けています。

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 2019年の初夏、ベルリオーズの歌曲集《夏の夜》をテーマに発表された常設作品も展示中です。

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 自然の中で暮らし、自然と対話し、その軌跡を絵画に留め、発表を続けてきたきみ様。
 少年や少女たちが時に自然の似姿として描かれていること——それらはきみ様の想像力を写しているというより、私たちの眼差しではまだ見えていない世界、あるいは情報過多で見えにくくなっている本質を、きみ様の眼差しで翻訳して届けてくれている、と表現したほうがしっくりくるのではないか——

 本展の作品に出会い、そんな風に感じるようになりました。

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くるはらきみ|画家・人形作家 →Twitter
2002年ギャラリーノンク・プラッツで初個展「Moon Face」その後、ビリケンギャラリー、桐生とおりゃんせなどで個展をしたりグループ展に参加をしています。目にする景色や植物や部屋の壁などをモチーフに、心に浮かんだり沈殿したりしている物語を吹き込んで作品として表そうと試みています。

00_通販対象作品

作家名|くるはらきみ

作品名|レース専門の図書室

油彩・キャンバス

作品サイズ|19cm×16.5cm

額込みサイズ|29cm×26.5cm

制作年|2021年(新作)

きみ様_レース専門の図書室

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00_通販対象作品

作家名|くるはらきみ

作品名|図書室の壁時計

油彩・キャンバス

作品サイズ|21cm×16cm

額込みサイズ|31cm×26cm

制作年|2021年(新作)

レース模様の図書室の時計

レース模様の図書室の時計_額

00_通販対象作品

作家名|くるはらきみ
作品名|水夫の死 

油彩・キャンバス
2019年(常設作品)
作品サイズ|27cm×21cm
額込みサイズ|41.5cm×36.5cm×5cm

きみ様_水夫の死

きみ様_水夫の死_額

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