レース模様の図書室、再訪|フランスガム《1》|Rêve d'amour
どこからともなく、素敵な調べが流れてきました。書物の隙間を縫って書棚を伝い、ちいさなシャンデリアの硝子の飾りを揺らし、少女たちの頁をめくる指先を過ぎ、どこかへ消えてゆきます。
今度は少しくぐもったベルの音色が聞こえてきました。過去からの呼鈴のように、郷愁を誘います。
響いては消える可憐な音色を、菫色の図書室に探しに行こうと思います。
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異国の古い書物の間に飾られた、スミレ花と菫色で装丁された一冊の書物。表紙には『愛の夢』を意味する仏蘭西語と猫と少女。いつだれがそこに飾ったのかはわからないけれど、図書室で長い間とても大切にされてきた一冊だという。
この書物には、秘密があるらしい。ある特別な時刻に銀色のつまみを回すと、その時だけ、素敵な調べが流れるのだそう。菫色の図書室に住まう代々の少女たちの言い伝えに寄れば、その特別な時刻を知るには「愛」について知らなければいけないらしい。
菫色の図書室の一角には、「愛」にまつわる書物だけが並んだ書棚がある。「愛」について知り、時刻の謎を解き、夢見た音色を聞くために——
ウッドバーニングの手法で繊細な線を描き、アクリルガッシュでシックな色彩を配したフランスガム様の夢のように美しい書物型オルゴール。書物の夢をオブジェにした一作は、図書室の静寂の中で、静寂そのものを奏でるように存在しています。
瀟洒な佇まいは少女たちの憧れ。背伸びをしたい少女たちにとって、フランスガム様の作品は異国から届くエアメールの薄紙の手触りやスミレ味のキャンディのように、「ここではないどこか」につながる特別な魅惑を兼ね備えているのです。
表紙を開けば天使が現れます。ちいさな秘密の小部屋に、何を仕舞いましょう?
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清らかな復活節には決まって図書室に飾られるたまご型のオブジェ。毎年、外つ国から届きます。その国には素晴らしい絵師がいて、その時々、少女たちが関心を寄せる物事を的確に当て、オブジェに描いて送ってくれるのです。
どこか懐かしい暖かなベルの音を聞くたび、少女たちはその絵師に想いを馳せます。やさしい指先から紡ぎ出される美しい絵のあるオブジェを囲んで、少女たちは夜が耽るまで、絵師への憧れを語り合うのでした。
ここにいながら「ここではないどこか」に行くことは、多感な少女たちの日常になくてはならない営み。菫色の図書室には、そのための入り口がいくつも存在しています。
フランスガム様の作品はいつでも、そんな少女たちを見知らぬ世界へと連れ出し、どこにいても自由に飛べることを教えてくれるのです。
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フランスガム|イラストレーター →HP
小林晃(aki kobayashi)という名前で雑誌や書籍、広告、パッケージなどの媒体で活動しています。フランスガムという名の元に、展示や様々な創作活動を行っています。
あなたのすごく近くにあるかもしれないし遠くにあるかもしれない、どこにもないかもしれないしどこかにあるかもしれない世界、を創作しています。
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作家名|フランスガム
作品名|Rêve d'amour(オルゴール)
ウッドバーニング・アクリルガッシュ
作品サイズ |16.5cm×12cm×3cm
制作年|2021年(新作)
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作家名|フランスガム
作品名|Rêve d'amour (たまご型ベル)2種
ウッドバーニング・アクリルガッシュ
作品サイズ |高さ:9cm/直径:6.5cm
制作年|2021年(新作)
★菫色の夢★
★アブサン色の夢★
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