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【実は意外と】宅録でそれなりのナレーションができるまで【知られてない】

イチナレーターが「クラウドソーシングサービスの単価が低い!」とどんなに嘆いたところで、現状は変わりません。
確かに単価は高くなっている傾向はありますが、これが適正単価かと問われると首を傾げてしまいます。

そもそも「宅録」と聞くと、スマホやパソコンで簡単にできちゃうものお手軽録音方法というイメージが大きいのではないでしょうか。
「自音」するので、音を録るだけなら誰でもできるという手軽さがあるのも事実です。

かくいう私もこの仕事を始めるまではそうでした。
「スタジオに行かなくても読みが上手ければ採用してくれる…なんて画期的なシステムなんだ!」と。
確かにちょっとしたお小遣い稼ぎや趣味の延長線上なら「録るだけ簡単」なのですが、コンテンツとして残すと考えれば話は別です。
そのために我々宅録ナレーターは、音声編集や読みの技術向上に躍起だっています。

宅録でナレーションができるまでの工程、知りたくないですか?

これって、意外と知られていないんです。
逆にいうと、知らないからこそ安い単価で出せるのではないかと私は感じています。

本記事では、私がナレーション案件を受注して納品するまでをまとめています。
あくまで私の場合ですので、他のナレーターさんとは違うかもしれません。

それでもこの機会に、ぜひ私達の仕事を知ってほしいと思います。

①原稿下読み

クライアント様から仕事依頼をされた時、真っ先に共有されるのが原稿です。
基本、「あとはよろしく」的な感じで丸投げされます。
気にかけてくださるクライアント様は「何かあればいつでも質問してくださいね」「読みやすいように変えていただいても構いません」と言ってくださります。

下読みの過程は、本番でトチらないように原稿を読むものだけではありません。
誤字脱字はもちろん、場合によっては内容の精査も行うこともあります。

「音声を録るだけなのにそこまでする!?」と思いますよね。
でも、ナレーションに使われる動画は全世界に流れます。
どんなにチャンネル登録数が少なくても、再生回数が伸びていなくても、インターネットを媒体にしている以上、それは避けられません。
ナレーションといえども、コンテンツを出す責任はあります。
その内容がただお金を稼ぐためだけに作られた陳腐なものならば、ナレーションを当てる意味がないからです。

そしてもうひとつ。
「コンテンツとして出す以上、虚実内容は出したくない」からです。
以前、ニュース系動画のナレーションをさせていただいた時、文体がめちゃくちゃでリライトしないと読めない原稿に当たりました。
その原稿は内容も精査されておらず、クライアント様に聞いても6時間返答がなかったことがあり、こちらで調べて一部リライトに踏み切ったことがあります。
(ちなみにその案件の納期は依頼日から3日後だったので、こちらとしても大幅なタイムロスとなりました)
6時間後、クライアント様から返答が来て私の案が採用されたのですが、その時に言われた一言がとても信じられませんでした。

視聴者に伝わりづらいその通りだとおもいます。
言いにくいですが、嘘やデマをこのチャンネルで広げるつもりはないですが、中身についてそこまで正確なものはもとめていないです。
そこの精査まで虹倉さまにやっていただくのは、報酬とわりに合わないとおもいます。
読み上げやすいように読んで頂いて大丈夫です。
虹倉様の仕事に対する姿勢に、いろいろ考えさせられるところですが、課題として認識しつつ、私がいまできることに全力でやっていきたいとおもいます。




要するに、このクライアント様はデマを広めるつもりは毛頭ないにも関わらず、正確な情報は必要ないという考え方だったんです。
思想がそれっぽいやつだったので中立もクソもなかったのでしょうが、クリエイターとしてはあまりにも低すぎるプロ意識だと感じました。
(当然、評価にもそのことを忖度なく書きましたし、今はもうそのクライアント様とは仕事していません)

良いナレーションをするには、正しい日本語を使わなければ伝わるものも伝わりませんよね。
いくら割に合わなくても視聴者の反応を考えたらと思うと、下読みせずに読むのが怖いです。

②録音

ある意味で一番楽かもしれませんし、一番楽しい過程でもありますね。

使用機材は単価によって使い分けています。
1000円以下の案件はマランツプロ(エレクトレットコンデンサーマイク)かダイナミックマイク&オーディオインターフェース、1000円以上はダイナミックマイク&オーディオインターフェースを使っています。

使い分けている理由は単純。
「1000円以下案件はそこまで高いクオリティを求めていない」からです。
といっても、クライアント様の多くは適正価格を知りませんし知っていてもそこまでできる予算がない(あってもやらない)ところが多いです。
出力がどーのこーの言ったところでクライアント様の多くは残念ながらそれを聴き分ける耳を持っていません。

noteでも散々言っていますが、エレクトレットコンデンサーマイクは出力がアホみたいに弱いんです。
下手に音量を上げると、録音音声がカッスカスになることもあります。
でも、どんなに音質が悪くともクライアント側からすれば「ノイズさえなければいい」ので、ファイルフォーマットがwavだろうがmp3だろうが全部綺麗な音に聴こえればOK、というところが多いです。
(言いんだか悪いんだか分かりませんが、個人的には読みの技術に助けられているってのもあると思います)

③ノイズ処理

控えめに言って地獄です。

ナレーション案件や「note朗読」で音声編集に関する知識の実践を繰り返し行って物にしていっても、正解がないだけかなり難しい工程だと感じています。
最近の私はというと、Adobe Auditionにizotope RX8プラグインを入れたので処理がだいぶ楽になりましたが…やっぱりこの工程が一番頭抱えます。

今でこそ、EQ(イコライザー)やハイパス処理、ダイナミック操作を覚えましたが、つい最近まではスペクトラム目視・イヤホンモニタリングでリップノイズを消していましたからね。それを手動でやっていました。

音のプロの方や音声編集に詳しい方からアドバイスをいただいたり、自主的に調べたり、他のナレーターさん達と情報共有したりして一部自動処理に切り替えました。
それでも問題になるのが「効果をどこまで付けるか」です。

RX8導入後、音声ノイズがどこまで酷いのか分からなかったので今までやっていた効果+RX8プラグイン効果でやってみたことがあります。
そうすると、せっかく録った音声がペラペラになってしまいました。

何人かに音声を聴いてもらったところ、とある方から「マイク位置に問題があるのではないか?」とご指摘をいただきました。

録音する時、マイク位置はPC横に置いています。私から見ると、正面にPCがある状態です。
そのせいもあって、音が弱く出ている箇所が見られるのではないかと推理しました。

後日、PCを横に、マイク位置を正面にして録音してみました。
するとどうでしょう。今度は弱く出ている音が少なくなりました!
今までは、作業スペースが狭いから横に置くしかないとばかり思っていましたが、工夫次第でなんとかなるもんだなと思いました。
使用マイクが違うので比較の仕様がありませんが、次のnote朗読でやってみようと思っています。

宅録でナレーションをする場合、よっぽどの案件でない限りサウンドエンジニアさんはいません。
とある方が「宅録ナレーターは演者も編集もやらないといけないからやっている人達すごい!」とおっしゃっていました。
宅録ナレーターの仕事は、スタジオ収録の工程を全部一人でこなしているといっても過言ではないのです。

まとめ

以上、宅録ナレーションにおける私のルーティンでした。

この工程の一部は、note朗読でも共通です。
皆さんの記事を無料で読む代わりに、宅録をしている身として技術研鑽をしているというわけです。
一回目の音声と最新の音声を聴き比べてみると「私めっちゃ成長している…!!」と感慨深くなります。
というのも一番最初は3000円のUSBマイクとAudacityでやっていましたから、ノイズ処理もへったくれもありませんでした。
少なくとも「1000文字未満1000円(1文字単価1円)」のクオリティにはなったのかな、と思います。
これをどう捉えるかは、私に仕事を依頼する方に委ねられますが…

ナレーションはただ録るだけではないんです。
「一つのコンテンツ作り」の柱としてやらないと意味がないんです。
そこのところ、勘違い召されませんように。

これを機に、ナレーションの適正価格が「1文字1円以上」になってくれることを願うばかりです。

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