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人生ではじめて生け花が楽しいと感じた日

小学4年から5年生頃にかけて、生け花を習っていた時期があります。
祖母の友人である生け花の先生が、毎週木曜日にお稽古場に飾るお花を生けに来られていたのがきっかけです。

生け花の先生は地元の文化祭で作品を出されるなど、精力的に活動されていました。
普通であれば、既に生けてある花を見て終わりなのですが、祖母宅のお稽古場で生けていらっしゃる先生の姿を見て「面白そう」という至極単純な理由で習おうと思いました。
母と祖母経由で申込みを行い、お稽古場でレッスンがスタートしました。

生け花の基本はざっとこんな感じです。

(出典:https://www.news-postseven.com/kaigo/10596

こんな感じで生けるのですが、これがまたすごく難しい!
個性的な形をした花切りバサミや生花用の針金を駆使して生けます。

このハサミの名前が知りたくてググってみたら、その先生の流派が池坊ということをたった今知りました。

生け花用の針金!葉っぱに合わせた色をしていました!

池坊はとにかく基本の形を意識しなければならないらしく、せっかく生けた花を先生が手直しして元の形が無くなる…ということが毎回ありました。
そのうち、生け花そのものに飽きてきてしまい、わずか半年で断念。
子供心に「もっと自由なもの」だと思っていたこともあり、基本形そのものに対して飽きが回ったのだと思います。

そこからしばらく生け花から離れていましたが、心の底から「楽しい!」と思える生け花の流派に出会います。

それは、大学祭での出来事でした。
サークルの出し物会場の近くで、とある生け花の先生が生け花体験の出し物をされていました。
出し物の様子をちょくちょく見に来てくださっていたので、適度にお話することができました。
そして、その日の日程を終わらせて、サークルメンバーと一緒に生け花体験をしたのです。

その方が出されていた生け花は、水を張ったペットボトルの中に入っているスポンジを花瓶に花を生けてみる、というものでした。
それまで「生け花は花瓶と剣山で生けるもの」というイメージがあったので、はじめの時点で目からウロコ。
「自由に生けてくださいね」と柔らかな表情でおっしゃってくれたので、心の底から楽しんで生けてみました。

残念ながらその時に生けた花の写真は残っていないのですが、あれだけ基本を無視した形なのに「とても素敵ですね!」と褒めていただいたのは今でも覚えています。
ちなみに一緒に生けたサークルメンバーはこれが初挑戦。それぞれの個性が出た生け花に仕上がっていました。

「それぞれが思い思いに自由に生けるのが本当の生け花。形に囚われていたら面白くない」
メンバーの総評時に言ったこの言葉が何よりも印象的でした。
そして何よりも、先生自体がこれからできる生け花をすごく楽しそうに見ていらっしゃっていました。
切り方や配置に悩む人には最低限のアドバイスをなさっていたので、生けている本人の個性を尊重する方なんだなぁと思いながら生けていました。
結局、その方の流派は聞けずじまいでしたが…こんなやり方もあるんだと知れたことが大学祭イチの衝撃でした。

今年の大学祭は残念ながら中止となってしまいましたが、もしまた次の大学祭で同じような生け花体験を出されていたら、もう一度自分らしい生け花をやってみたいと思っています。
ライター的に言ってしまうと、その方がやられている教室をぜひ取材させてほしいです!

生け花って形に囚われなくてもいいんですね。
これなら私でも飽きずに続けられるかもしれません。

※このエッセイはyuca.さん主宰コンテスト「お花とエッセイ」出典作品です。

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