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灯りのあかりちゃん
やっほー。あたし、あかりっていうの。
見ての通り、あたしは街灯。ここらへんではたったひとつしかない街灯なの。
この道は静かすぎるし暗すぎるよね。あたし、嫌になっちゃう。
あたしがいるところは「キタ」にあるんだって。
「キタ」はとても寒くて何もないらしい。もっと「キタ」にある「ほっかいどー」というところには「さっぽろ」という大きな街があるらしいけど、あたしはここから動けないから行けないんだ。
でもね、ここを通る人が「さっぽろは都会だ」「楽しい」って話しているのを見たことがあるから、さっぽろは都会で楽しいところなんだと思う。都会がなんなのか、わからないけど…
なんやかんや言ってたら、いつもの人がやってきた!
「さっぽろ」のことを話していた女の子ふたり。ひとりは髪が長くて、もうひとりは眼鏡をかけてるの。毎日にこにこしてて、とっても楽しそう。
でも今日は、ちょっと元気がなかったの…
どうしたんだろう?
「目指していた大学、落ちちゃった…」
「ごめんね、私だけ受かって」
一緒に行けなくなっちゃったの?
それはとても残念。でも、髪が長いあの子はどうして謝っているんだろう?
「そんなことないよ!合格したのすごいよ!」
「でも、一緒に進学できないのは嫌だよ」
「そうだけど…うちは大丈夫だからさ」
なんだか、とっても可愛そう。
でも、あたしが「可愛そう」って思うのは、良くないことなのかな…
「本当に大丈夫…?」
「大丈夫だって!他にも札幌の大学なんてあるんだからさっ」
どうしてそこまで空元気になれるの?
眼鏡の子、とても困っているよ?
ふたりを見守っていたら、空がどんどん黒くなってきた。
風のにおいを嗅ぐと、吹雪のにおいがした。あともうちょっとで強い風が雪と一緒に吹いて来る。
あたしは吹雪が一番キライ。白すぎて周りを見えなくするから。だから本当は光りたくない。白い色が一番明るいことを知っているから。
でも、どうしてだろう。
今はなんだか光りたい気分。
「…あのさ」
…あっ!
……………………
![](https://assets.st-note.com/img/1640692310261-gHMaz8P6gf.jpg?width=800)
「………やっぱり、一緒の大学に行きたい。同じ大学に入って一緒に過ごしたい!」
「私も…一人で札幌に行きたくないよ!!」
髪の長い子も眼鏡の子も、ちょっとだけ涙目になってた。やっぱり離れるのが嫌だったんだね。
そうだよね、昔からずっと一緒だったもんね。
離れるのは嫌だよね。
あたしね、今、ぴっかぴかに光ってるよ!
「さっぽろ」に行く仲良しさんに贈る、ぴっかぴかのプレゼントなんだ!
少しずつだけど、風が強くなってきた。
それでもがんばって光ってるよ。
おしゃべりすることはできないけど、「がんばれ!」って言いたいの!
その想いが通じて、ふたりはあたしの顔を見てくれた!!
ふたりの顔はとてもやさしく笑ってた。
そうしたら、またいつものように楽しそうに話して向こうへ行っちゃった。
「さっぽろ」に行っても、仲良しこよしでいてほしいなぁ。
あたしは灯りのあかり。
今日もがんばって光ります!
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この小説は、ピリカさん主宰企画「冬ピリカグランプリ」応募作品です。
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