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いつのまにかの新月

明後日には新月を迎える。月の巡りがもたらす、心身の変化に人はある意味、翻弄されながら生きている。それは快不快というわかりやすい反応として実感できることもあるけれど、目に見えない心の動きとしても表れたりもして、それこそ掴めるようで掴めない。

 十年以上、星と人と向き合って来ても、まだまだわからないことだらけで、わからないことにももう慣れて、そのわからなさと共存できるくらいの心の筋肉は蓄えられて来た感じもする。これは以前にはなかったもので、わからない時点ですぐ諦めるか、投げるかしていた二十代の頃を思うと少しは大人になれたようにも思う。

 星の巡りと人の心が同期したとき、人は何らかの変化や行動を起こす。それは毎回同じパターンではないけれど、ある一定のリズムで繰り返されていたりもする。そのリズムはその人固有のものだから、本来なら誰とも重なり合うはずがないものなのだけど、それがたまたま誰かのリズムと重なり合い呼応し合うことがある。それは現実に小さな奇跡をもたらし、お互いを深いところから癒やしてくれる。

 そんな時間は一生の中でそんなにしょっちゅうはやって来ない。それでもどこかのタイミングで必ずやって来る。七夕よりももっと低い確率でしか出会えないから、本当に人の一生の中でも数回あるか、ないかくらいだ。

 それはそう長くは続かないし、一瞬で走り去ってしまうことがほとんどだ。だけど、その一瞬のために人は生きているのではないのだろうか?最近、そんな風に思うようになった。特別変わった何かがあったわけではない、いつもの日常の連続の中で、ふと気付いたというか、気付かされたというか。

 特に月の巡りにはそのような何か時空を超えて、人をつなげてしまう力があるようだ。満ちたり欠けたり、その様子を肉眼で目視できる、太陽に次いで最も身近な存在でもある月。その月が織りなすリズムには人間が人工的に考えた計画や願いを飛び越えていく力がある。それは意図して得られるとか引き寄せなどという概念が全く通じない場所へ人を誘い、人の人生をより大胆なものへと変化させていく。

 もちろん、そのプロセスには喜びや楽しみだけではない、悲しみや痛みも織り込まれてはいるのだけれど、それも含めて、人は無条件にその変化を受け入れていくしかできない。そのような自分を超えた自然のリズムの中でしか、人が変容するとか生まれ変わるという体験はありえないのだろう。

 古来から日蝕を不吉とし、太陽である王が不在になる暗闇の空を人々が恐れていたのは、月という無意識・潜在意識と太陽という意識・意志・エゴが重なり合うことで人が生まれ変わることができるというのを暗に信じていたからではないだろうか。

 月の望みや願望を太陽が受け取り実現させていく、その始まりとも言える新月に秘められた力は思っているよりも大きいのだと思う。今夜、月は双子座にいて水星を追い越したところ。明後日の蟹座の新月を前に姿を無くしていく真っ只中にいる。見えない。だけど、そこにあることには変わりがなく、ただそのときがやって来るのを待っている。

 月の巡りは「待つこと」の尊さを教えてくれる。満ちるにしろ、欠けるにしろ、そのときが来るのを人はただ「待つ」しかできないのだ。それは生き急ぎがちな現在の社会の中で無視されがちな自然というものの存在を感じさせてくれる。

 一分一秒を争うようなことなど、人の命に関わること以外では、そうそうないし、たとえ数分電車が遅れたとしても、それで失うものなど本当は大したものではない。だけど、急がなくてもいいのに急がされたり、ゆっくりできるのにわざと速くさせられたり、自分の外に目を向けると慌ただしいことばかりだ。こういう時代だと時代のせいにすることも簡単にできるけど、それをやらずに何とか自分の時間に踏みとどまって日々を愛おしむように過ごしたい。そう思って今も日々星たちと対話を重ね、暮らしを営んでいる。

 地味な毎日だけど、たまにさっきみたいな小さな奇跡があったりして、それはご褒美をもらったような気持ちになって嬉しくなる。そして最近はそれを言葉にしたいと思うようにもなった。

 どこまで言葉にできるのかは未知数だし、とにかく書くことでしか前に進まないのだから、とりあえず毎日何かしらを書く。書き続けている。眼に見えるものも見えないものも言葉の世界の中に入ってしまえば、等しく扱えるのも自分にとっては都合がいい。あると言えば、あると書けば、それはもうそこにその存在を認められ、あるものとして息をし始めるからだ。

 そんな世界に身を浸すことで自分がいつもより生き生きした感じになるのがわかる。生まれ持った月が喜ぶというか、本来の力を取り戻していく感じがする。それはちょっと呼吸が楽になるみたいに身体にも良いはたらきかけをしてくれている気がする。

※ 以前書いた文章がひょっこり出てきたので校正し直してアップしてみました。今日も暑かった〜陽が沈んでからも風が熱を帯びていて、肌に纏わりついてくる。何だか、もう一枚皮膚ができたみたいな感覚になる。こういう時は冷たいビールをグビッといきたくなるな〜〜

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