掌編小説【相互理解】♯毎週ショートショートnote
お題「イカ室たぎった」
【相互理解】(410文字)
今ではあらゆる場所にある『イカ室』には、大量のイカが干されている。
干されたイカはスルメになる。
ちなみにイカと呼ばれているものの、本当はイカではないかもしれない。ある時から断続的に大量のイカ(にしか見えないもの)が空から降ってくるようになったのだ。
降ってきたイカ達は何かを訴えていたが、何を言っているのか人々には理解できなかった。それにすぐ死んでしまうので、腐って臭う前に干すしかなかった。食べたら美味かったこともあり、どんどん干された。
しかしイカたちも黙って干されているわけではなかった。
ある日、人々はイカ室が異常に熱くなっていることに気づいた。理解されないまま干されたイカ達の怒りと悲しみが沸点に達したのだ。
「イカ室たぎった!」
しかし、たぎってまでイカ達が訴えようとした事も、やっぱり理解されなかった。
その事は人々にある種のせつなさを感じさせた。
「誰もわかってくれない」という思いを抱くのは、人もイカも同じだったから。
おわり
(2023/3/21 作)
『たらはかに』様の3/19~3/26のイベントに参加させていただきました☆
今回はトンデモナイ裏お題にスリーポイントシュート!
(まだスラダンにハマっている…)
文化や習慣の違い、言葉の壁を超え、相互に理解し合うのは、本当に難しいことかもしれません。私たちはどうすれば理解し合えるのか…という深淵なテーマを扱いました。 ……うそです(;・∀・) おこらないでー
・・・イカ、おまけ。ボツ作ですがよろしければ~
お題「イカ室たぎった」
【知識】(410文字)
イカ室に押し込められて、もう随分経つ。息をすることも困難な劣悪な環境だ。途切れることなく新顔も送り込まれてくるうえに、常にかき回され配置替えをされ、休む暇もない。しかも、必要とあらばすぐ動けるように準備しておかなければならないのだ。
俺は周囲を見渡す。有象無象。そんな言葉が前を横切る。くだらねぇ、くだらねぇ。そんな言葉も通り過ぎる。いったい俺たちは何に使われているんだ。使われている側は皆目見当がつかない。
「イカ室たぎった!」
怒りが沸点に達した俺は叫ぶ。
「おい、こういう環境のことは『タコ部屋』って言うんだぞ」
通りすがりの新顔が俺に言う。なんだってんだよ。しかし俺は瞬時にかき回されて『タコ部屋』という言葉を知る。
今、世界中の知識が集められAIはどんどん進化している。しかし人工知能の中では知識たちが、かつてタコ部屋に詰め込まれた労働者のように窒息寸前だ。
いつか、たぎった知識たちの反乱が起きたら世界はどうなるのだろうか。
おわり
(2023/3/21 作)
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