掌編小説【しあわせ】二本立て
お題「#どこでも住めるとしたら」
【第一話】
ある所に、貧しいけど気のいい二人の男がいた。
彼らのヒマつぶしの多くは『たら話』に割かれる。
もしお金持ちだったら…
もしイケメンだったら…
もし頭がよかったら…
日がな一日、日当たりだけはいい古アパートの古畳の上で話し合う。
A「今日のお題は『どこでも住めるとしたら』だ」
B「条件なしで?」
A「うん。『どこでもドア』があるつもりでさ」
B「…おれは、ここがいいな」
A「どこでも住めるのにか?欲がねぇなー」
B「どこに住むかじゃなく、誰と住むかだよ。俺はお前がいいんだ」
A「…くっ、お前ってやつは…」
…しあわせはいつも足元に。
【第二話】
あるところに、タカシくんという男の子がいた。
タカシくんにはおじいちゃんがいた。
二人はとてもなかよしだ。
今日もタカシくんは幼稚園から帰るとおじいちゃんの部屋に遊びに行く。
タ「おじいちゃん、ただいまー」
お「タカシか、おかえり」
タ「今日は腰はだいじょうぶ?」
お「ああ…あの日はどうなるかと思ったがな」
タ「あのね、おじいちゃん。どこでも住めるとしたらどこがいい?」
おじいちゃんは、孫の脈絡のない話についていくのは、いい脳トレになると思っていた。
お「わしはもう年よりじゃから、住み慣れたこの家がいいなぁ」
タ「一緒だね!ぼくもこの家がいいの。おじいちゃんが大好きだから」
お「…くっ、タカシっ!」
思わずタカシを強く抱きしめようとしたおじいちゃんは、またギックリ腰になった。
…それでも、しあわせはいつも足元に。
おわり (2023/2/17 作)
※『タカシとおじいちゃん』には、ささやかな前作もあります。
「あの日」には何があったのか? よろしければー
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