SS【呼称】♯毎週ショートショートnote
お題「腋の薔薇時計」
【呼称】(410文字)
私のからだには赤い薔薇がある。
薔薇としか言いようがないほどクッキリとした痣が。でもそれは常に皮膚に現れているわけではない。普段は見えないが、ある使命を帯びた時だけ腋の下に現れるのだ。
そして現れたかと思うと薔薇の花びらはゆっくりと消えていく…。
あたかも時を刻むかのように。
かつて「腋の薔薇時計の一族」と呼ばれた一族がいた。私はその末裔だ。おそらく最後の。先祖たちは薔薇が現れると、その使命を果たさなければならなかった。花びらがすべて消えてしまうまでに。
たとえその意味がわからなくても、為すべきことを為さざるを得ないのである。
その使命を果たさない限り、その者の命は薔薇が消える瞬間に消えてしまうから…。
私も何度も使命を果たしてきた。
でももういやだ。
今、最後の薔薇が散り始めている。
…
それにしても、もう少しましな一族の呼称はなかったのだろうか。
腋の薔薇時計て、なんやねん。
薄れゆく意識の中で、どうでもいいことを考えている私…。
おわり
(2023/10/5 作)
『たらはかに』様の10/1~10/7のイベントに参加させていただきました☆
今回は裏お題です☆
息を引き取る時…
つい、くだらないことを考えてしまったりしないのでしょうか…。
ぷぷって笑って死ねたらいいなぁという気もしますけど(;・∀・)
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