掌編小説【ふたりの願い】
お題「お城」
【ふたりの願い】
「ねぇ、おにいちゃん、いつまでここにいるの」
「おにいちゃんじゃない、殿と呼べ」
「との」
「…敵が、われらの願いをきくまでだ」
「おなかすいたよ」
「武士は腹がへったなんて言わないんだぞ」
「そうなの?」
「そうさ。武士は食わねど高楊枝、って知ってるか」
「なにそれ」
「武士は、腹がへっても腹いっぱいみたいなフリしてるんだ」
「…へんなの」
「そんなことより、トウキチロウ、城壁が傾いてるぞ」
ダンボール箱に立てかけたマットレスがゆらゆらし