「ふたご」 を読んだ
「ふたご」 感想
著:藤崎彩織
さおりちゃんが書いた小説があると知り、急いで通販で取り寄せた。
少し前に「ねじねじ録」を読んだ。
好きなバンドのメンバーのエッセイ。
そこにはたくさんの「共感」と「学び」があった。
真面目で頑張り屋なさおりちゃんの感情が、わたしのものであるかのように感ぜられた。
いつか自分が子どもを持つことになったら、また読み返してみたいと思った。
さて、小説「ふたご」。
序章の一文目。
──彼は、私のことを「ふたごのようだと思っている」と言った。
これだけで、ああ、とため息に声が乗る。
きっと、いや多分、でもそうなんだろう、さおりちゃんが体験した深瀬くんとの出会いからの記憶を追体験するようなストーリーが待っている。
そしてすぐに登場する少年が、月島。
つきしま。
心臓が一瞬止まった。
わたしは中学生くらいの頃にとあるラジオを通じて世界の終わりを知った。
好きにったきっかけは「幻の命」。
とても聴き取りやすい甘い声が紡ぐ歌詞は、当時のわたしにはあまりにもセンシティブで、でも聴くのをやめられなくて。
何度も何度も聴いて自分の中に落とし込んだ。
その歌詞の最後の方に出てくる名前。
Tsukushi
漢字で記すと「月詞」だそう。
Tsukushi → 月詞 → つき し → 月島
どうしよう。
絶対に深瀬くんのことだ。
先入観なく読みたいけれど、こうも彼を彷彿とさせるものがあるとどうにも難しい。
わたしは彼らの学生時代を知らない。
勝手にメンバーに置き換えて読むことをなるべく避けて、書いてある文字を素直に受け取る努力をした。
月島はずるい。
全てわかっているようでいて、でも自分の頭にあるもの、見えているものが何故わからないのかと夏子をなじる。
夏子の心を何度もズタズタにしていく。
夏子はそれでもやっぱり、月島の隣にいる。
月島という人間を諦めきれない。
エッセイから感じる、さおりちゃんらしい小説だった。
何度も胸が痛くなり、何度も読むのを辞めたくなったけれど、読了できてよかった。
まだ考えがまとまりきらないけど、今はこれだけの言葉にするのが精一杯。
「ふたご」。よかったです。
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