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自分殺しだよ。こんなの
 
限界。
何かにすがって生きる日々も、淡い期待を抱かないと息が続かない体も、めまぐるしく変化していく中、変化しない自分も。

何より、そう、目の前で事が起こるたびに、文句と悪口をハイレベルで言い出してくるこの人に。この人とは産まれてからの付き合いで、いつも私に助言をしてくる。

「女性なんだからもっと飾りなさい」
「人なんだからもっと知恵を身につけなさい」
「優しいんだからその優しさを全員に平等に振りまきなさい」
「怒っているんだからお愛想を浮かべるのはやめて、注意をしたらどう?」
「人を信用しては駄目。皆打算で生きてるの」
「もっと頼りなさい。貴方しか貴方を見ていないわけではないの」
「気づきなさい。いろんなことに。昔は出来たでしょう」
「過去のことを悔やんだって駄目。何も変わらないんだから」

 ずっとわずらわしい声が、頭をずっとまとわり憑いて。
「ずっと、二回目。多用しないの」

私から消えてくれない。私のことを重圧と期待とプレッシャーで、内からも外からも、いいえ、一番大きいのは内から。壊そうとしてくる。

「その曲、好きよね。貴方が病むといつもその曲が流れてくる」
 いつか昔、今ぐらい壊れそうだったとき聞いていた曲が流れれば、そうやって言う。
「その曲聞いてるから、貴方病むんじゃないかって言ったことがあったけど、逆だったみたいね。」
 そうみたい。近頃ずっと聞いてなかったし。

「あ・・・こら、曲に逃げて思考をやめない!」
 いいじゃん。忘れられるなら何でも。
「駄目。それは『現実逃避』という名の思考放棄。思考が戻ってきたらどうするの」
 戻さなきゃいい。ずっと、このまま。永遠に
「駄目。絶対駄目。貴方はまだ死んじゃいけない。やり残したことが山ほどあるでしょ」
 ない。どうでもいい。もううんざり。貴方にも、外にも。

 頭痛いし、体重い。私は普通じゃないのに、普通じゃない資格も取れない。何?××××って。
 普通に見える。人からは。でも私は普通の人みたいに楽しめない。

 音が嫌い。だから音で蓋をして何も入らないようにしている。何が悪いの?
「駄目だよって・・・貴方、何だかんだ思考が好きなのに。思考して、想像して、創造して、それが一番幸せで私の中で一番上手に出来ること。私の誇り。そういってたじゃない」

 もう曲も二週目だよ。寝かせて。貴方と話してると締め付けられて苦しいの。

「それは、貴方に聞いてほしいことは皆、変わることは難しい、私はどうせ、って言い続けている貴方にとっては苦しいことだって分かってる。でも言うこと聞いて欲しいの。
夜更かしは体が余計だるくなるからやめて欲しい。辛い時は休んでいいの。
どれがこう、って言い訳してがんばらなくていいの。
それもおせっかいだって知ってる。
でも人のぬくもりが恋しくて恋しくてしょうがない貴方だから、気飾って綺麗になって、ぬくもりを得られるように――」

 何。それは着飾らない私に価値がないってことだよね。

「違うよ。着飾らない私を見てもらうために、気飾った貴方で注目を集めたいの。
貴方って、喋りだせばほがらかで、おだやかで、でもよく回る口と頭で、おしゃべりさんなのに、その行動を取る前は、無口で壁を作って、考えることをやめてつまらなそうにしてるでしょ?
それを少しでもクールビューティに魅せたいのよ。わかってよ」

――いらないおせっかい。
「いるおせっかい!
大体ねえ!貴方って惜しいのよ!常に!
しんどいなら環境を変えればいいものを、多方面に気を使いすぎなの!
止めなさい!!しんどいならば!
こうしたい、ああしたい、って思ってるのなら、メモを取ったりして、目立つ位置に張って、願望を覚えておいてよ。いつも、妥協して諦めてやめてそれで苦しんで、泣いて・・・見てられない。
ねえ、貴方が壊れたら誰が私と話すの・・・?
貴方が将来、出会うであろうぬくもりの人は、誰とぬくもりを感じればいいの?
貴方が生まれて、声をかけて、喋ってきた――それは私だけじゃないでしょ。
貴方の知らないところで、貴方を待ちわびてる人もいる。貴方に感謝している人もいる。貴方が死にたい、って知ったら喜ぶ人よりも、悲しむ人が大勢いる。目に見えにくいだけ。

ね、だから、窓枠に足を垂らすのをやめて。
貴方が眠るのは、窓枠の中の、ベッド。
私と一緒に、死ぬまでお話しするの。老衰するまでずっと。
――ね、貴方ががんばったことを、たくさん私はほめてきたの、気づいてる?
貴方は書くためなら苦手な虫の図鑑を借りてきて、割り箸でページをめくってでも、知識を頭に入れて、声をかけるのが苦手なのに、資料室の本をお願いして、写真をとってもいいか尋ねて・・・その時、理由の欄に「小説を書くため」って書いたのを見たときに、すごく感動してたでしょ――私も貴方も」
 そんなの、何年昔の話だと思ってるの?もうそんな意欲ない。あの頃、あの瞬間、一番楽しかったあの時、しんどきゃよかった。
 
そしたら、幸せだった。
 
だからこれは、死に忘れた分。余計に生きた。もう十分なんだよ。
「勘違い。それは思い込み。貴方の壮大な、ね。
貴方が思っている幸せは、確かに大きくて偉大で、貴方を形成した全て。
でも、それを発散しないまま死んでいいの?
貴方が成し遂げたかった創作をしないまま死んで本当にいいの?」
その審議は何度もした。
結局、私の書いているそれは不謹慎だし、見る人は怒りと呆れと悲しみが浮かんで、皆嫌な気持ちになる。
だから誰もやってない。
放っておいても、いつか、誰かがやってのけるよ。
だから私は死んでいいの。いらないの。もう。
 
この四年。何度もその断片を見てきた。きっといつか、私よりも何倍も上手にやってくれる人が現れるのを確信した。
もう お役御免。
 
じゃ、そういうことで。
 
「駄目だっつうの!!!!!」
「離してよ!!もういいじゃん!!!私の行動を制限しないで!!もう・・・いいじゃん。何やってもうまく行かない。上手に出来ないんだから、だから書くことしかなかったのに。それすら満足に出来ない」
「それは伸び白が」「うるさいっての。馬鹿馬鹿しい。私に何があるっていうの?・・・離して。もう、楽にさせて」
はぁーと大きな溜息をついて、彼女は私を捕らえていた腕を少し緩めた。
「何言っても無駄ね」
そう。やっとわかった?
「じゃ、未来の話もなしだね」
 そんなの知らないでしょ。ホラ言わないで。
「いいや、私には見えるよ。出そう出そうと思いながら一切手をつけてない恩師への手紙を出したら、ありがたーーーーい言葉が返ってきて、大号泣する貴方が。
この話を終えて、その先少しずつ生きていった貴方が細々と小さな幸せを掴み続ける姿が」
 だから、そういうのもういいって。
「その先に、何があるのか私にも貴方にも分からないのに?」
 いい。どうせたいしたことないんだよ。
「これ、投稿したらどうなるんでしょうね」
 知らない。やりたきゃ勝手にすれば?
「意外と心の中に私を飼ってる人は大勢いたりして。×も伏せずに聴覚過敏、って正直に言えばいいのに。
貴方はこだわり過ぎだし、それがいい所でもあるし、その癖臆病で気を使って、小説の内容さえ、満足に私の前でも話さないんだ」
 だって、これ、出すんでしょ。それに、パソコン前なんだから、残るじゃん。
「んん~?窓枠に足垂らしてないの?」
 はあ・・・馬鹿馬鹿しい。パソコン打ちながらそんなことできるか。打ち終わったら同じ行動しようと思ってただけ。
「それは完全に死ぬ勇気がないだけだね!」
はあ?
「だって思ってるでしょ。
『死んだ後の死体の処理って、大変なんだろうなあ』
『どうにか誰のトラウマにもならず死にたい』
『私が生きていた所為で問題が起こるのは嫌だけど、死んだことで起こるのも困る。どうしようもないから』
・・・・優しいって言うんだよ。そういう人のこと。
『平等に優しく』っていったのは、『優しさを平等に配れない』ことで落ち込んでいたから。
『知恵をつけて欲しい』っていったのは『学がなくて困る』って自虐することがずっと増えたから。
私の言葉には、色々フォローが入ってるのよ。こう見えてもね」
 
あああ!!!!もういい!!!寝る!布団入る!!
 
「はーい、おやすみぃ。
・・・今日も私の勝ちね」
 
もう勝ちでいいよ、勝ちで。
 
「ちゃんと生かすからね。貴方が私なしに、生きていけるまで」

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