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『ギフトのあけ方』 24時間で一冊の本をつくりました #前田裕二と本作り

ひとつの限界を超え、大きな感動を覚えました。

11月4日(月)午前5時から、5日(火)午前5時までの「24時間」で一冊の本をつくる、という挑戦をしました。

最初は、入稿前データまでかな?と思っていましたが、なんと印刷、製本まで。書くテーマは当日まで未定。

この企画は、前田裕二さんが代表を務めるSHOWROOMニッポン放送がコラボして行なわれた、ラジオ番組『オールナイトニッポン』での前田裕二さんの24時間密着企画がベースにあったもの。

前田裕二さんが、幻冬舎の編集者である箕輪厚介さんおよび箕輪編集室に、「せっかくの24時間企画なので何かおもしろい企画をしよう」と話をしたことから始まりました。

▼完成した『ギフトのあけ方』はこちら


「とんでもないことに。」

一体どんな過程があったのか、現場にいた僕自身の目線ですが、簡単に振り返りながら書いていきます。

2019年10月29日(火)
箕輪編集室に、オーナーの箕輪さんより「とんでもないことに。」との一文から始まる投稿が。今回のプロジェクトの話が打ち出される。プロジェクトにおけるライターチームのリーダーを募集し、柴田佐世子さんが名乗りを上げる。

10月30日(水)
SHOWROOMさん、ニッポン放送さんで番組企画の打ち合わせ。箕輪編集室からは、リーダーの柴田さんのみ交えていただき概要を確認。

10月31日(木)
箕輪編集室でプロジェクトチーム発足。

11月1日(金)
夜、オンラインMTG。2日前の打ち合わせに参加した柴田さんから、初めて企画の概要を聞く。この時点でわかったのは、「24時間で一冊の本をつくる」ことのみ

具体的な内容は不明。テーマやトーク内容、当日のスケジュールも不明。無理もない。急遽決定した企画。皆が、“そういう状況である” と理解した。

集まったメンバーの中には、駆け出しのライターや執筆・編集を仕事とする人はいたものの、未経験者が多く不安が拭えなかった。ただ、そうした中でも、未聞の挑戦を前に皆が胸を高鳴らせていたことも確かだった。

11月2日(土)
夜、オンラインMTG。少しずつ詳細が固まってくる。

11月3日(日)
夜、最終の事前MTG。この時点で、当日は「前田裕二さんとゲストとのトークを本にする」ことがわかっていたが、ゲストはまだ変動していた様子だった。本のテーマもゲストとのトーク内容も当日、ラジオ収録のなかで決まることとなっていた。

箕輪編集室はプロフェッショナルの集まりではない。当然、メンバーのなかには文字起こしの経験が少ない人や、まったくの未経験者もいた。それでも当日は前田さんとゲストとのトークを、猛スピードで文字に起こさなければならないため、最低限のポイントをおさえた講座も行なった。

こんな流れで、11月4日(月)の当日を迎えた。

事前にMTGを行ったのはたったの3回。勝負はラジオ収録の行われる4日(月)朝5時から5日(火)朝5時までの24時間

僕は、放送開始5時間前となる当日0時ごろに最終MTGを終えたあと、「ぜったいに寝坊しないように...」と体に緊張が走ってしまい、結局40分ほどしか眠れなかった。その日は前田さんも短時間睡眠だった様子。(もしかしたら寝ずに来たのかも......。)

今回のスチール撮影を担当した箕輪編集室のカメラマン・大竹 大也(おおたけ だいや)さんは、たまたま夜更かしをしていた11月4日の午前2時ごろ、「そろそろ寝ようかな」と思っていたところに撮影の依頼が来たそう。本番3時間前。それを二つ返事で引き受けたというから、腹の決まり具合がすごい。そのまま眠らずに現場入り。

僕は3時前に就寝し3時半に起床。4時45分に現場入りしました。

当日、箕輪編集室からは25名のメンバーが現地にて参加。そのうちライターチームは約21名、デザイナーが2名、カメラマン1名、PR(SNSによる情報発信)が1名。さらに関西や中部などから15名が遠隔で作業をし、総勢40名体制で臨んだ。

「現場と遠隔地」渾然一体が、オンラインコミュニティの真骨頂

当日の作業は以下のような流れで行った。

まず、なにより文字起こしのスピードが命。トーク内容を可能な限り早くテキスト化するため、予めシフトを組み、10分ごとに録音してはボイスレコーダーを入れ替え、次々にテープ起こしを進めていく。

使用したICレコーダーは合計8つ。万が一、1つのICレコーダーが止まっても問題ないように、一度に2台で録音し、それを3セット使って10分ずつで回し続ける。残りの2台は各ゲストとの対談を、通しで録音する。

作業は全てスプレッドシートで管理。録音した音源は、すぐにスプレッドシートの管理表に入れ、テープ起こし担当者は音源が上がり次第すぐにテキスト化を進める。

テープ起こしが上がったら、ライターが原稿にしていく。校正担当、もしくは手の空いている人が、随時、文字校正を行う。

ぼくはライターとして原稿のライティングを担当。たびたび前田さんやスタッフの方々がかけてくださった激励が本当に心に沁みた。

そして毎回のゲストに企画内容を紹介するときに聞こえてくる、「あそこで箕輪編集室のみなさんが書いてくれているんですけど、ものすごくいい本ができるので期待しててください!」という前田さんの言葉はかなりのプレッシャーになりつつ(笑)、大きなスクリューがついたように僕たちの推進力になった。

前田さんはオールナイトニッポンの対談だけでなく、他のラジオ番組の収録にも行きつつ、また戻ってはゲストとの対談を進めていく。問答無用で企画が進んでいく。次々に上がるテープを起こしては、原稿にまとめていくライターチーム。

一方、デザインチームは現場の安村シンさん、松儀愛侑さん、遠隔地でデザインを進めてくださったカズシさんを筆頭に、表紙デザイン、組版作業などを同時並行で進める。

ひたすらに原稿を、デザインを、写真を、仕上げていく。

前代未聞。しかし、「できないかもしれない」とは思わなかった。......いや、少しだけ思ったかもしれない。それでも「絶対に完成させる」と決めて作業を進めた。

時刻はとっくに5日の0時を回り、2時、3時と過ぎていく......。終盤は特にライティングがギリギリになっていた。

印刷準備をするため、メンバーのたろちゃん伊藤沙名さん、岩山さんが先にkinko’sへと向かった。

原稿が完成するかどうかの瀬戸際。大人がおよそ20名以上いるはずのスタジオはしんと静まり返り、誰も何も喋らない。PCのキーボードを叩く音だけが激しく響き続けた。

正直、僕は編集にかなり時間がかかってしまった。

コンセプトから一貫した内容、読みやすさ、纏まり、目を引く見出し、それらを網羅した“本”として耐え得るクオリティ、正確性......。張り詰めた空気のなか、「(これじゃダメだ......)」と思いながら、ひたすらに編集を進める。

同じテーブルで僕と柴田さんによる原稿の編集に加えて、シンさんがデザインを、そして前田裕二さんもご自身で「あとがき」の執筆を進めていた。

“この手にかかっている”

おそらくあのとき作業していた箕輪編集室メンバー全員がそう思っていたんじゃないか。尋常じゃない緊張感に押しつぶされそうだった。今思えば、意識がおかしくなりそうなほど集中していた僕は、おそらく自分でも経験したことがないほどのスピードで作業をしていた。

「命運」1本の針

ついにすべての原稿とデザインの編集からデータの流し込みが完了し、先にkinko'sに向かって待機していたメンバーが印刷をして戻ってくる。

前田裕二さんは4時40分には今回出演する最後のラジオ番組『あさぼらけ』に向かってしまう。

印刷した原稿を持って、伊藤沙名さんがタクシーに乗って大急ぎで戻ってきてくれた。

ビルの裏口前にタクシーが到着した時点で4時29分。支払いを済ませる間に原稿を受け取り、収録現場に持っていく。

製本方法は「和綴じ」といい、裁断した紙に千枚通しで4ヶ所の穴を空け、紐で縫って綴じるという手法。

皆で紙を裁断する。和綴じの方法を当日調べてマスターした飯室達也さんが針で穴を空け、紐を通していく。その時点で4時40分。一緒に手伝ってくださっていた前田さんは先にラジオの収録へ。

最後のラジオの収録は4時49分まで。時間がなかった。エレベータに乗り、最後の収録現場へと歩いて向かいながら縫い綴じを進めた。

極度の緊張感で手が震える。針が汗で滑る。「間に合ってくれ......」、「どうか針が折れないでくれ......」、皆が祈りながら見守る。

そこは命運を握る飯室さんの勝負強さが出た。歩きながらにも関わらず、最後の針を通し、とうとう縫い切った。


完成した本を持って収録現場に走る。まだ収録は行われていた。

終了2分前。ついに完成した本を前田さんに届けた。

前田さんは24時間で起きた本づくりのドラマをラジオ番組で熱弁し、完成した一冊目の和綴じの本を、パーソナリティの上柳昌彦さんにプレゼントした。

*     *     *

タイトルは『ギフトのあけ方』。4日の23時23分にSHOWROOMリスナーのりえパンマン♡宮古島さんの案で決定したものだった。

この24時間の格闘で、自分の限界を1つ超えることができた。箕輪さんは箕輪編集室内で制作チームに労いの言葉をかけるとともに、「一度超えた限界は、そのあと何度でも超えられるようになる」と言っていた。その通りだと思う。これからはこれが基準になる。

本気って青春だと思った。逆に、「本気」とか「限界」とか、普段言っている言葉の甘さを恥じた瞬間でもあった。

最後、実際にテキストデータの流し込みが間に合わなかった箇所があった。それも含めて前田さんは、最高の本ができた、と言ってくださった。正直、僕は振り返って猛省することが本当にたくさんあった。ただ、何十万というリスナーの方々、前田さんと箕輪さん、ゲストの方々、ニッポン放送のスタッフのみなさんと、箕輪編集室でつくった最高の一冊であることは間違いなかった。

*     *     *

そうして完成した本が、今回の『ギフトのあけ方』です。

販売されるのはPDF版、和綴じ版、単行本の3つの形式。

そして、昨日11月7日(木)23:59、ついにPDF版が購入者の皆様のもとに配信されました。


つづいて、残りの「和綴じ版」、そして「単行本」の制作を進めています! 

和綴じ版は当日のライブ放送中にすべて売り切れとなりましたが、単行本はこれから発売されます。これから購入される予定の方、どうかしばしお待ちください。

〈追記〉
2020年1月10日、ついに単行本が完成しました! 記事最下部の
購入サイトのリンクから購入できます。さらに、制作ストーリーをまとめたLPサイトも設置しています。SHOWROOMバージョン箕輪編集室バージョンとあるので、それぞれの目線からストーリーを振り返りたい方はぜひご覧ください。


当日、視聴してくださっていた方々や、現場の方々、遠隔地の方々の応援が本当に制作の励みになりました。心から感謝を伝えたいです。本当にありがとうございました。


▼この熱狂の現場を成功に導いた、箕輪編集室プロジェクトリーダー・柴田佐世子さんのインタビュー記事もぜひご一読ください。

▼24時間企画で生まれた『ギフトのあけ方』単行本の購入はこちらから

▼制作ストーリーを振り返る〈SHOWROOMバージョン〉

▼制作ストーリーを振り返る〈箕輪編集室バージョン〉



ライター 金藤 良秀(かねふじ よしひで)



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