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なぜ日本の大手電機メーカーは失敗・凋落したのか

偶然手に取って読んだ本がなかなか面白かったので紹介します。
2017年3月発行された、『日本の電機産業 失敗の教訓 強い日本経済を復活させる方法』です。

内容としては日本の大手電機メーカーが凋落し続けている原因と対策を著者の観点から説明しています。

そもそも大手電機メーカーてどこのこと!?

大手の電機メーカーと言われてどこが思い浮かびますか?

Panasonic? 
はい、正解です。

SONY?
はい、それも正解です。

ここでいう大手の電機メーカーとは主に以下の企業を指しています。
・Panasonic
・富士通
・日立製作所
・東芝
・SONY
・三菱電機
・NEC
・SHARP

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ちなみに、何してる会社か聞かれたら答えられますか?

身近な例で言うと、先ほど挙げた通り、どれも家電製品が代表的ですよね。

でも実は、ITのハードウェア発電事業などのインフラ車載向け電池、センサーなど各社とも本っっっ当に様々な事業を展開しています。

こちらの本では多様な事業展開をしている「総合電機メーカー」という枠組みで捉えています。

もはや世界で通じなくなりつつあるジャパンブランド

そんな身の回りで溢れている製品を生み出してる企業が危機的な状況だということはニュースでちらっと聞いたことがあるかもしれません。

今やジャパンブランドは30年ほど前の勢いをなくし、米国やアジア諸国の企業にどんどん飲み込まれています。

ではなぜそのような事態に陥ったのか。

Made in Japanの誕生と終焉

1970年~1980年代にかけて、日本の電機製品は急速な勢いで売れていき、Japan as No.1 の地位を確立しました。

世はバブル経済の真っ只中。

大量生産・大量消費の世の中で各家庭に家電製品が一気に浸透して行ったんですよね。

新興国企業の台頭

しかし、90年代になると状況は変わってしまいます。

バブルは弾け、氷河期を迎えました。

所得は激減し、消費も停滞してしまいます。

さらにはアジア諸国(主に韓国や中国)の経済成長が始まり、日本の電機業界は成熟期に達してしまったのです。

そして現在、日本の電機業界は衰退の一途を辿る一方、韓国や中国といった隣国の企業が米国企業とシェアを争うまでに拡大しています。

この本を読むことで、なぜこれほどまでに日本の電機産業は世界規模の競争に勝てなくなったのか、そして今後生き残るためには何が必要なのか、を考えるきっかけになったと感じました。

日本の電機メーカーは何がダメだったのか?

結局、何が原因でこれほどまでに凋落してしまったのでしょうか。

こういう世界は様々なことが複雑に絡み合って引き起こるので一概にこれだと断言できるわけではないのですが、著者の佐藤文昭氏はうまくこの要因を捉えているように感じました。

まず今の日本の電機業界が抱える問題点として、佐藤氏は以下を挙げています。

1.リソースの非効率な分散
大手電機メーカーは「総合電機」と言われるように、様々な電機製品を生産しています。

これにより、ヒト・モノ・カネといったリソースを十分な割合で設備や研究開発などに投入できなくなってしまいました。

その結果、競争力をなくし、ガラパゴス化を促進してしまったのです。

2.自ら招いた技術流出によるアジア勢のキャッチアップ
台湾や韓国の企業に技術供与を行った結果、それらの企業の猛追に遇い、競争で勝てなくなりました
また、新興国にはその技術を活かしきれないという日本の傲りが少なからずあったことでしょう。

3.起業家精神を失った大企業病
規模の大きさと安定と引き換えに、人間性や人望が重視され、守りの姿勢が強く根付いてしまいました。

大企業では当たり前の光景ですが、意思決定の遅さ、ハングリー精神の欠如、過度なリスクヘッジなどなど挙げればキリがないほど他国との差に驚いてしまいます。

日本の電機メーカーが衰退してきたのは、こういった要因からだと佐藤氏は述べています。

世界で勝ち続けている日本企業も存在する

しかし、ニッチな分野で世界シェアを占めている日本の大企業も存在することが紹介されています。

例えば以下の企業です。
コマツ(建設機械)
ダイキン(業務用空調機器)
ファナック(産業機械)
村田製作所(電子部品)etc

これらの企業も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

各社とも全て1つの事業に特化した専業メーカーです。

つまり、1つの分野でかつアジア勢がまだまだ追いついていないニッチな分野でシェアを伸ばしています。

これらの企業のように事業の「選択と集中」が今の電機メーカーには求められているのかもしれません。もちろん自社の強みを活かしてこそです。

日本企業の伸び代はもうないのか?

国内企業にもう世界での勝ち目はないのでしょうか。

いえ、そんなことはありません。

日本がこれまで培ってきたノウハウを生かし、世界市場でシェアを獲得できるチャンスはまだ眠っています。

昔から日本企業は長期的な研究開発が得意のようです。

さらに「製造装置」、「部品」、「素材」といった分野で今日最も強みを発揮しています。

こういった事業にシフトし、資金を集中的に投入することで圧倒的なシェアを獲得できる可能性があります。

決して表面的にはわかりにくい分野ではありますが、どんな製品(完成品)であれ、それを構成するために必須なのものばかりですよね。

こういったところで頑張っていってほしいです。

これから電機業界はどうなるのか?

今後、電機業界はどうなっていくのでしょうか。

技術の移り変わりが早い世界で電機メーカーが生き残るには少なくとも今の業界・事業構造を見直しすることが急務でしょう。

それに今はITの発達で同業がこれからも競合相手とは限りません。

現に米国IT大手のGoogleは自動運転自動車の開発に注力し始めていますし、AmazonやApple、もしくは今後誕生するであろう新興企業がITを武器に異分野に乗り込んでくる時代なのです。

ITの活用や開発に弱い日本ですが、すでに米国はもとより、中国や韓国、台湾といった隣国のアジア勢にITを使って、追いつかれ、追い抜かれてしまっています。

IoTが進行している世界で電機業界だけでなく、様々な業界構造がさらなる変化に飲み込まれてしまうかもしれません。

繊細さが求められる分野であれば、来たるビッグウェーブに先陣切って乗り込める可能性があります。

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