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子供の頃の憧れ【ココアとバニラのクッキー】

無印良品で目に止まったクッキーは、白と黒の市松模様、チェック柄。見た瞬間によみがえった、思い出は。ああ、そういえば、わたし、このクッキーにとても憧れていた。

子供の頃、お正月にお年玉で買った、大好きなシルバニアファミリーのお菓子屋さんセット。ゴロゴロと動くワゴンに、キャンディーやクッキーをディスプレイする。両脇をねじって包んだ定番の飴に、魔法ステッキみたいなペロペロキャンディ、丸や四角のクッキー缶、星型のクッキー、周りが波型で丸い形のビスケット。ひとつひとつを触って、並べて、ながめることが最高に楽しかった。小さくて、でも本物みたいで、カラフルでポップで、外国のお店屋さんみたいで、すべてが可愛いかった。なかでも、お気に入りは、四角いチェック柄のクッキーだった。丸いクッキーしか食べたことなくて、四角で白と黒のチェック模様のクッキーは、お洒落で、心がときめいた。

毎日友達とシルバニアファミリーで遊んでいた夏休み。お腹が空いたら、暑い中自転車をこいで、薄暗い駄菓子屋で、安い棒付きアイスを買って、溶けて落ちないよう急いでかじりながら家に戻って、再びお洒落なお菓子屋さんの世界に浸る。

あの頃、こんなクッキーは、きっとお洒落で特別なときに食べるんだ!と思っていたけれども、全くお洒落でない大人になった私が、部屋で地味にボリボリ食べているなんて、あの頃の自分は想像もしていないだろう。なんだか申し訳ない。

でも、クッキーは思っていた通り美味しくて、可愛い形で、見るだけでも思わず気持ちが高なった。ミニチュアでながめるだけだったモノが、本物になって私の手のなかにある。なんとも不思議な感覚。子供のころ出来なかった夢を叶えると、なんだか魔法使いになれたみたいで、大人になって良かったと少し誇らしく思う。シルバニアファミリーみたいに、可愛いくて、ポップな世界とはほど遠い現実で生きているけれど、このクッキーがあの頃の憧れとワクワク感を思い出させてくれた。夏ももう少し、暑さに負けずがんばろうと思う。



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