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余熱で生きていく

10/24 晴れ

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近藤正規「インド―グローバル・サウスの超大国」(中公新書)を読んだ。

その注目度や将来性に比して、インドの現代情勢をまとめた本は少ない。
この本は、インドのビジネス・政治、そして今孕んでいる問題についてよくまとめられている中公新書らしい良書だった。

生成AIに携わっている人間として、インドの動向は気になるところだ。
まず単純に、国全体の成長が凄まじい。
インドは2027年には日本・ドイツのGDPを抜き去り、2050年にはアメリカを超える。
そして恐ろしいことに、インドでは現在高等教育を受けている学生は4000万人より多いという。日本の293万人とは比較にならない。
この人数がIT業界を中心として社会にドクドク雪崩れ込むのだから、モノが違う。

AIに対する見方も、仕事を奪うものではなく、むしろ自分たちの仕事を増やすものと認識しており、楽観ムードのようだ。
実際、生成AIの普及による世界各国でのシステム改編の波は、人件費の安いインドにオフショアの増加という恩恵をもたらすだろう。

そういう国の企業で働き、生成AI関連の情報を収集している身からすると、生成AIへの国際的な厳しい規制が成功するとはとても思えない。
アメリカ・中国・インドの企業は少なくとも、一般的な日本企業が取れないリスクを乗り越えて、生成AIの普及を進めてくるだろう。
アクセンチュアを筆頭とする巨大IT企業がそういう動きを見せているのを見ると、なおさら思う。

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「インドは個人的に好きで、しかもこれから伸びてくる国だと思うので、日本とインドの関係のためにもお仕事頑張ってください」
そういう言葉を脚本家の大河内一楼氏から投げかけられたのを、ぼんやりと思い出した。
アートコンペに出展した際の打ち上げで、雑談をしたときのことだった。
気持ちいい返事ができれば良かったのだが、私はそのとき少しアンニュイな雰囲気で頷いてしまった。
日本とインドのビジネス上の関係には、なかなか複雑なものがあるからだ。

一番大きな要因は、シンプルに仕事文化が両国で合わない、ということだろう。
現に、日本企業のインドへの進出は、これほどの将来性が認識されているのにも関わらず、近年伸び悩んでいる。
どうもインドにおける納期の延期、現地人との関係といった困難に苦しんでいるようだ。
インドにおけるビジネス展開のノウハウが蓄積するまで、日本ではまだまだ時間がかかるだろう。

インドは日本をアメリカ、ロシアに並ぶ最重要パートナーの一国に挙げているが、国の関係と人間関係はもちろん異なる。
また国家間の関係においても、ウクライナにおけるロシアの侵攻に対する日印の態度の違いは、一つの試練となるだろう。
国家、人民の両面で、これからの日印関係は岐路に立たされている。

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これから私がインドと関係が深い場所に居続けるかは分からないが、私のネタにもなるし、色々面白い経験ができそうだと思うので、しばらくは継続していこうと思う。
私は何かを続けるとき、思い出を起点に、その余熱で頑張っていることが多い。
この日記だって、大学時代に可愛い女の子に「銀こんにゃく君の日記って面白いよね、赤裸々に生活が書いてあって」と言われた思い出を核として続けている。

その他にも高校時代に同級生に「面白い」と評されたり、大学院時代の気休めになったり、日記については色々なことがあった。
かれこれ10年続いている趣味だが、それだけ継続できているのはまさしく、これらの思い出のおかげだ。

仕事も日記も人生も、明確な目標が立っていない現状、しばらくは余熱で続けることになる。
また燃え上がるようなものを見つける日を願って、今日も余熱で生きていく。

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