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「ガンマ株に対するCoronaVacの有効性は不十分」

2021/08/30


TONOZUKAです。


ガンマ株に対するCoronaVacの有効性は不十分

以下引用

米国Florida大学のMatt D.T. Hitchings氏らは、2021年1月からブラジルのManaus市で中国Sinovac社の不活化ワクチンCoronaVacの接種を受けた医療従事者を対象に、症候性SARS-CoV-2感染症を予防する効果を検討したが、既にSARS-CoV-2のP.1系統(ガンマ株)が主流になっていた同市では、ワクチンの有効性は不十分だったと報告した。結果は2021年7月25日のLancet Reagional Health Americas電子版に掲載された。

 SARS-CoV-2のガンマ株は、2020年11月にブラジルのManaus市から最初に報告され、2021年6月には世界の52カ国に広がっている。ブラジルでガンマ株の感染がピークに達した時には、ManausでシーケンスされたSARS-CoV-2標本の86%がこの変異株だった。ガンマ株は、免疫系から逃れることを助ける可能性がある3つの変異(K714N、E484K、N501Y)を受容体結合ドメインに持つため、ワクチンの効果が低い可能性が懸念されている。ブラジルで行われたCoronaVacの臨床試験では、ワクチンの有効性が報告されているが、実施時期がガンマ株の流行より前だったため、リアルワールドでの感染予防効果に対する報告が待たれていた。

 ManausでSARS-CoV-2ワクチンの接種が始まったのは、2021年1月19日だった。ブラジルでの流行第2波で、遺伝子検査したサンプルの66%からガンマ株が見つかっている時期だ。用いられたワクチンは、中国Sinovac Life Sciences社のCoronaVacと英AstraZeneca社のChAdOx1 nCoV-2019だった。医療従事者に対する接種は、感染リスクの高い部門のスタッフを優先して行われ、Manausの医療従事者の97%超がCoronaVacの接種を受けた。

 著者らは、診断陰性例コントロール試験により、PCR検査を受け陽性または陰性だった、Manaus市の18歳以上の医療従事者に対するCoronaVacの効果を検討することにした。ケースは、追跡期間中に呼吸器サンプルのPCR検査でSARS-CoV-2陽性と判定された人で、ワクチン接種前の90日間は陽性と判定されたことがない人。コントロールは同じく追跡期間中に呼吸器サンプルのPCR検査を受け、陰性だった人とした。陽性だったケースに対して、検査日、年齢、居住地区、接種歴がマッチするペアを選び出した。

 主要評価項目は、症候性のSARS-CoV-2感染に設定した。情報をより早く伝えることが公衆衛生上、有益であるとの判断に基づいて、3月25日までに少なくとも1回接種した場合の効果に対する分析を行い、さらに、4月13日までに2回接種を受けた場合の効果を検討することにした。

 データベースに登録されていた同市の医療従事者は6万7718人いた。2021年1月19日から4月13日までの追跡期間に、5万5584人(82%)が1回目の接種を受け、5万29人(74%)が2回目の接種を受けた。

 1月19日から3月25日までに、2656人がPCR検査を受け、776人が陽性と判定された。このうち1回接種の効果を調べるために、条件がマッチした393組のペアを選び出した。1月19日から4月13日までに、2945人がPCR検査を受け、808人が陽性と判定された。2回接種の効果を調べるために、条件がマッチしたペアを418組選び出した。

 少なくとも1回以上接種していた場合は、初回接種から14日後以降の症候性SARS-CoV-2感染に対する、交絡因子調整後のワクチンの効果は49.6%(95%信頼区間11.3-71.4)になった。初回接種から0~13日間には、症候性SARS-CoV-2感染症のリスクが、非接種者に比べ接種者で有意に高いという、解釈が難しい現象が起きていた(調整オッズ比1.66:1.07-2.57)。

 続いて、2回目の接種から14日後以降のワクチンの効果を検討したところ、36.8%(-54.9から74.2%)になった。2回のワクチン接種を完了した人でも、初回接種から0~13日の期間は、非接種者より感染リスクが高かった(調整オッズ比2.11:1.36-3.27)。この結果は、ワクチンの効果の推定値を下げる、測定されていない交絡因子の存在を示唆した。

 著者らは、Manaus市では、ワクチン接種が始まる前のSARS-CoV-2血清陽性率が高かったことから、接種前に感染歴があった医療従事者が一定の割合で存在していた場合や、感染歴のある人は接種を急がない傾向があるなら、ワウチンの効果は低く推定される可能性はあると考えている。一方で、感染歴がある人の場合には、ワクチンを1回接種しただけで高い反応が得られると予想されるため、今回の結果は、既感染率の高さにより説明することはできないとも述べている。また、接種を受けた医療従事者の方が、接種を受けなかった人より感染リスクが高い環境で働いていた可能性や、未接種者に比べ接種者は、感染リスクが低くなっているという思い込みから、よりCOVID-19である懸念が強くなってからPCR検査を受けていた、といった可能性も指摘している。

 これらの結果から著者らは、何らかのバイアスの影響を受けているようだが、ガンマ株に対するCoronaVacの予防効果について、信頼できる結果は得られなかった。2回接種後にも有意な予防効果が見られなかったため、ワクチンの接種を幅広く進めながらも、非薬物的な感染予防策を継続すべきであると結論している。この研究はManaus市やAmazonas州などの支援を受けている。

 原題は「Effectiveness of CoronaVac among healthcare workers in the setting of high SARS-CoV-2 Gamma variant transmission in Manaus, Brazil: A test-negative case-control study」、概要はLancet Reagional Health Americas誌のウェブサイトで閲覧できる。






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