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「コロナ対策で浮上した「過料」、罰金との違いは?」

2021/05/11



TONOZUKAです。

コロナ対策で浮上した「過料」、罰金との違いは?


以下引用

 今回、精神科医療の続編をまとめる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関連で法改正の動きがあるため、予定を変更してそちらについて述べたいと思います。

 COVID-19の流⾏が深刻な状況になり、政府は1⽉18⽇に招集された通常国会に、コロナウイルス関連法の改正案を提出しました。緊急事態宣⾔下で、事業者が都道府県知事からの休業や営業時間短縮の命令に従わなかった場合、50万円以下の「過料」を科すことや、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)の改正により、⼊院を拒否した感染者に対する罰則を新設し、刑事罰として「1年以下の懲役または100万円以下の罰⾦」を科すことなどが盛り込まれています。

 「過料」というのは、聞き慣れない言葉だと思いますので、今回はその意味合いなどをご説明します。

「過料」が科されても前科にはならず

 過料は、何か違反したときにお金を支払わなければならないという意味で、「罰金」と類似しています(法律的には罰金は「1万円」以上を意味します。1000円以上1万円未満は「科料」と呼んでおり、「過料」と同じく「かりょう」と読むので紛らわしいです)。

 過料が罰金と異なるのは、「刑罰」ではなく、「行政上の秩序の維持のために科される金銭的制裁」を意味する点です。このように、過料は行政罰ですから、科されても前科にはなりません。

 過料が科される代表的なパターンとしては、住民が転居したのに正当な理由がなく14日以内にその届け出をしなかった場合(住民基本台帳法23条、52条2項)や、会社の取締役が交代したのに2週間以内に変更の登記をしなかった場合(会社法915条1項、976条1号)などが挙げられます。

 また、都道府県や市町村においても、条例で、5万円以下の過料を科す旨の規定を設けることができ(地方自治法14条3項)、例えば、路上喫煙禁止区域内で喫煙した者に過料を科している地方自治体もあります。
 
 ちなみに、道路交通法では、「反則金」という制度があります。反則金は、交通違反のうち、軽微で現場での確認が容易な定型的行為を反則行為とした上で、一定額の反則金の納付を通告し、期限内に支払った場合には刑事事件にしないというもの(道路交通法128条)です。通告を受けた者が当該期間内に納付しなかったときは、刑事手続に移行することになり(道路交通法130条)、行政罰である過料と刑事罰との中間にあるといえます。

刑罰にしなかった理由は?

 「過料」と同じ行政罰として、「公表」があります。令和2年3月に改正された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」では、都道府県知事が、施設の使用の制限等を講ずるように要請や指示をしたのに、それに従わない場合、その旨を公表できるようになりました(同法45条2~4項)。ただ、昨年春にパチンコ店名を公表した地方自治体がありましたが、「営業している」ことが住民に知れ渡り、かえって宣伝になったという声もありました。

 なお、営業を止めさせ、違反した場合には懲役や罰金の刑罰を科すというような強い規定を設けることについては、営業できなかったことにつき損失の補償が必要になる可能性があり、その対象が広範に及ぶため現実には難しいものと考えられます。今回、「過料」という方向に進みそうなのは、損失補償を避けながら、一定の実効性のあるものにしたいという意図を反映したものかと思われます。

 医療現場では、COVID-19患者の増加により、対応する医師、看護師等の負担が大きくなっていることと思います。何とか早期に患者数が減り、元の状態に戻れることを祈るばかりです。



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